はじめに

日本で有機栽培野菜の宅配や食品宅配などを手掛けるオイシックス・ラ・大地株式会社が、アメリカでミールキット宅配を展開するThree Limes, Inc(サービス名:Purple Carrot)の株式を100%取得し、子会社化することになりました。この子会社化をきっかけに、日本企業が初めてアメリカのミールキット市場に参入することが予想されています。
本記事では、アメリカで急成長を見せるミールキット市場について紹介するととともに、日本企業とアメリカ企業のタッグによって、どのようなビジネスが展開されていくのか考察していきます。
アメリカのミールキットビジネス

アメリカでは、2012年のミールキットビジネス導入以来、ミールキットビジネス参入企業が相次いで増え、市場規模が拡大しています。ある調査※1では、2015年の10億ドルから、2020年には100億ドルを超える市場規模に成長すると予想されています。競合企業も次々に誕生しており、各企業がそれぞれの特徴をPRし、生き残り戦略を図っています。
アメリカのミールキットビジネスは、共働きのミレニアル世代をメインターゲットとしていると考えられています。ミレニアル世代とは、成人になったばかりから30代半ばぐらいまでの世代を指し、アメリカでは最も人口が多い世代となります。このミレニアル世代の特徴として、共働きが一般的であり、インターネットでの購入(ECサイトの利用)に抵抗がないことが挙げられます。つまり、共働き世帯が仕事と家庭を両立させる手段の一つとしてミールキットが導入され、ECサイトを中心としたミールキットビジネスのヒットにつながったといえるのです。
また、ミレニアル世代は、健康意識が高いことも特徴で、オーガニック食材やヘルシー志向の高いメニューを好みます。また、ビーガンの割合も高く、ターゲット層に合わせて各社工夫をしているミールキットのメニュー展開が歓迎されたと考えられます。

アメリカの主なミールキット企業

ミールキットサービス提供する企業では、各自アピールポイントを持っており、他社との差別化を図っています。ここでは、大まかに3つのタイプを紹介します。
・ハイクオリティのメニューを自宅で料理できることをアピールしているもの:
ブルーエプロン、ハローフレッシュ、サムバスケット、ホームシェフ
・時短料理をアピールしているもの:
ゴブル、ディナリー、アマゾン
・特化メニューをアピールしているもの:
ラーメンヒーロー(ラーメン)、 バーガーボックス(ハンバーガー)、パープルキャロット(ビーガン)
また最近では、インターネットで注文するものだけではなく、スーパーマーケットの店舗でもミールキット販売を拡大しています。
将来の展望

今回、オイシックス・ラ・大地株式会社の子会社となるPurple Carrotは2014年の創業以来、ビーガン食100%のミールキット宅配を展開しています。アメリカでは健康意識の高まりや食肉消費に伴う環境負荷に対する懸念から、ビーガン食の市場が拡大しており、2020年には2015年の倍に当たる250億ドルまで成長すると見られています。
一方で、ユネスコ無形文化遺産に登録された日本食は世界的に認知されており、アメリカ国内の人気も高いです。以前は、日本食と言えば、寿司・ラーメンというようなイメージでしたが、近年は健康志向の点からも日本食が注目されており、ミールキットビジネスのメインターゲットであるミレニアム世代にとって、日本食は非常に身近な存在になりつつあるといえるでしょう。
オイシックス・ラ・大地株式会社は、今後Purple Carrotの子会社化を通して、アメリカでの事業展開を開始していくことになるでしょう。ビーガン食と日本食を組み合わせた、独自のメニュー展開によって、競争が激化するミールキットビジネス界で当社はPC社を通じアメリカでの事業展開を開始します。また、日本国内においてもビーガン食のミールキット販売が展開されるかもしれません。
このような、世界的な人気の高い日本食ビジネスと、ミールキットビジネスのタッグの成り行きには注目です。今回の子会社化による事業拡大が成功すれば、将来的に、他の日本企業がアメリカへ事業進出することも増えていくでしょう。逆にアメリカの企業が日本企業を買収することや、日本企業と業務提携することも予測されます。今回の食ビジネス/ECビジネスにおける新しい取り組みは、今後の世界の食ビジネスのトレンドにとっても、非常に重要といえるのではないでしょうか?
