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飲食・フード
2021.01.29

越境ECにおける「Try Before You Buy型」サービスの革新と可能性

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1.はじめに

EC市場の急速な発展に伴い、「Try Before You Buy型」サービスが海外で注目を集めています。このサービスは、消費者が商品を購入する前に試用することができる新しい形のオンラインショッピング体験を提供します。特にアメリカをはじめとする海外市場では、従来の実店舗での試着や体験をオンラインでも再現しようという動きが加速しています。

オンラインショッピングの最大の課題の一つが、商品を試用できないことでした。消費者は製品の実際の手触りやフィット感を事前に確認できず、購入後のイメージと異なるリスクを抱えていました。「Try Before You Buy型」サービスを導入することで、このような消費者の不安を大幅に軽減し、オンラインショッピングの障壁を低減することが可能になります。

このサービスは、消費者が商品を自宅で試用し、納得した上で購入を決定できるという点で、越境ECにおける購買体験を根本から変える可能性を秘めています。特に、ファッションアイテムや高価な電子機器など、購入前に実際に体験することが重要視される商品カテゴリーにおいて、顧客満足度の向上とリターン率の低下に寄与することが期待されます。

日本からの越境EC事業者にとって、「Try Before You Buy型」サービスの導入は、海外市場での差別化戦略として有効です。このサービスを提供することで、国際的な競争が激しいEC市場において、顧客の信頼を獲得し、ブランドの魅力を高めることができます。また、越境ECプラットフォームやオンラインモールへの出店を通じて、この革新的なサービスを幅広い国際顧客に提供することで、新たな顧客層の獲得と売上の拡大を目指すことが可能となります。

Try Before You Buy型サービスの展開には、物流の最適化や返品処理システムの確立など、実装に際して考慮すべき要素は多岐にわたります。しかし、顧客中心のサービス設計とテクノロジーの活用により、これらの課題を克服し、越境ECにおける持続可能な成長を実現することができるでしょう。

2.基本的な仕組み

「Try Before You Buy型」サービスの基本構造は、消費者が商品を購入前に体験できることに重点を置いています。このサービスは、国際顧客に対しても、実店舗での試着体験と同等のメリットをオンライン上で提供することを目的としています。商品が顧客の期待に合わない場合は、無料で返送するオプションがあり、購入する意志がない場合には費用を負担する必要がありません。
越境ECにおいて「Try Before You Buy型」サービスを利用する際のプロセスは、従来のオンラインショッピングプロセスと大きく異なりません。消費者は、ECサイトや越境ECモールを通じて商品を選び、チェックアウトする際に支払い方法を登録します。ただし、この時点で実際の決済は行われず、商品の試用後に購入の意思が確定した場合のみ、登録した支払い方法で料金が請求されます。

商品が消費者の手元に届いた後、試用期間内に商品を返送することで、いかなる費用も発生せずに取引をキャンセルできます。反対に、商品を購入することを選択した場合は、初めに指定した支払い方法によって決済が行われます。
「Try Before You Buy型」サービスは、越境ECプラットフォームや店舗の出店戦略において、消費者に安心感を与え、国際市場での競争力を高めるための重要な要素です。このモデルを越境ECで成功させるには、返品処理や物流システムの効率化、国際配送の手続きの簡素化など、システム的なサポートが求められます。

3.Try Before You Buy型のサービス事例

3−1.試着型

Warby Parker(https://www.warbyparker.com/
Warby Parkerは、2010年にニューヨークで創業したアイウェアブランドです。Warby Parkerでは、5組のメガネフレームを顧客に送付し、顧客自身がその中から好きなフレームを一つ選び、残りは返送するサービス「Home try-on」を展開しています。自宅での試着サービス先駆けとなったブランドです。

顧客は自分でメガネのフレームを選ぶことも出来ますし、アンケートに答えて、それを元にカスタマイズされたメガネフレームのセットを送ってもらうことも可能です。メガネを選ぶ際には、フレームタイプ、色、フィット感、そして素材など様々な選択肢があり、実際に装着してみないとわからないものです。Warby Parkerでは、顧客が自宅で複数のフレームを試すことができるので、手間を掛けずに納得のフレームを購入できることが好評となっています。

Casper(https://casper.com/
マットレスのオンライン直販で成功しているCasperは、2014年にニューヨークで設立された企業です。Casperでは、消費者が購入する前に新しいマットレスを100泊試してみることができる長期間のお試し期間を提供しています。さらに、同社はすべてのマットレスに送料無料、返品可能、10年間の限定保証も付帯させているのです。

Amazon Prime Wardrobe(https://www.amazon.com/prime-wardrobe/
世界最大のECプラットフォーム、アマゾンも試着サービスを展開しています。Amazon Prime Wardrobeは 衣料、靴、バッグなどを取り寄せ、試着後に、購入を決定した商品のみ代金を支払うサービスです。最大8点までの商品を受け取ってから最長で7日間無料で試せるので、気になる商品のサイズ違い、色違いなど、まとめて取り寄せることもできます。プライム会員であれば無料で利用でき、保持することを決定したものに対してのみ課金されます。

3−2.後払い型

BlackCart(https://blackcart.com/
BlackCartは、ECサイト向けのサービスで、BlackCartを使用したECサイトでは消費者に後払いオプションを提供することができます。

アメリカのECサイトでは送料無料で返品できることが多いのですが、通常の手続では、一旦支払いをして、その後に返金されることになります。通常、返金には一定の時間がかかるため、所持金が少ない顧客にとっては返品ができるとしても、試着代わりの気軽なオンラインショッピングは難しかったのです。

BlackCartを通した決済にすると、顧客は商品購入時にすぐに支払う必要はなく、一定の猶予期間を与えられます。その期間内に返品すれば全く所持金を減らすことなく、商品を試すことができるのです。

Klarna(https://www.klarna.com/us/)
スウェーデンで2005年に設立されたKlarnaも、前述のBlackCart同様、後払いサービスを提供する決済プラットフォームです。Klarnaを通じたオンライン注文であれば、顧客は実際に支払うまでに14日または30日の猶予期間を与えられます。

つまり、たくさんの服を配達してもらい、試着して、気に入らないものを返品して、保管した分だけ支払うことができるのです。資金不足の顧客にとって、返品がクレジット(返金)されるのを待つことなしに、次々とオンラインショッピングを試せるというメリットがあります。

3−3.サブスクリプション型

Stitch Fix(https://www.stitchfix.com/
Stitch Fixは2011年にカリフォルニア州で設立された企業で、オンラインパーソナルスタイリングサービスを提供しています。推奨アルゴリズムとデータサイエンスを使用して、サイズ、予算、スタイルに基づいて衣料品をパーソナライズすることが特徴です。

月額定期モデルとなっており、商品の受け取りには20ドルのスタイリング料金が必要となっています。顧客は一回に付きトータルスタイリングされた5つのアイテムを受け取り、それらを保持するか返品するかを決定することができます。すべての製品を保持すると、購入が25%オフになる特典があります。スタイリングの頻度は顧客自身で設定可能で、毎月、四半期ごと、または好みのタイミングにすることが可能です。

Birchbox(https://www.birchbox.com/
Birchboxは、ニューヨークに拠点を置くサブスクリプション型サービスで、化粧品やその他の美容関連製品の4〜5個のサンプルが入った箱を購読者に送るものです。パッケージの中身は、購読者の肌や髪のタイプなど、事前アンケートの回答に合わせてカスタマイズされています。Mac、Kiehl’s、Quaiなど、さまざまなブランドと提携しており、気に入ったサンプルはオンラインショップで通常サイズを購入することができます。

Adore me(https://www.adoreme.com/
Adore meは、毎月20ドルのスタイリングフィー(サービス料金)で、キュレーションされた下着類が入った「The Elite Box」と呼ばれる箱を届けけるサービスです。「The Elite Box」には30以上の幅広いブランドの中から5〜6個の下着や寝間着類が含まれており、顧客はその中から好きなものだけを保持し、不要なものは送り返すことができます。

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4.Try Before You Buy型サービスのメリット

越境ECにおける「Try Before You Buy型」サービスの導入は、顧客満足度の向上、カスタマーインサイトの獲得、およびコンバージョン率の向上という三つの大きなメリットをもたらします。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

4−1.顧客満足度の向上

顧客満足度については、越境ECでは特に、商品情報の不透明さや配送遅延などのリスクが顧客の不安を引き起こしやすいため、Try Before You Buy型サービスによってこれらの不安を解消し、実店舗での試着と同様の体験を提供できる点が顧客にとって大きな魅力となります。これにより、顧客は自宅で商品を試すことができ、サイズや色などを納得いくまで比較検討できるため、最終的な購入決定に対する満足度が高まります。

 

4−2.カスタマーインサイトの取得

カスタマーインサイトの取得に関しては、越境ECサイトやモールでは、Try Before You Buy型サービスを利用して顧客の選択や返品の理由を分析することで、顧客の好みやニーズを深く理解し、それを商品開発やマーケティング戦略に反映させることが可能となります。これにより、よりターゲットに合った商品の提案や、マーケティング効果の向上が期待できます。

Stitch Fixのように、顧客の好みをあらかじめヒアリングした上で、各顧客にカスタマイズされた商品を提供するタイプのTry Before You Buy型サービスでは特にこのメリットが大きくなります。また、購入前の事前アンケート以外にも、返品商品からも、カスタマーインサイト読み取ることは可能でしょう。

4−3.コンバージョン率の向上

コンバージョン率の向上については、Try Before You Buy型サービスが顧客の購入前の不安を軽減し、購入へのハードルを下げることで、購入意欲を刺激します。特に、越境ECでは、返品や交換が困難であることが購入の障壁となりがちですが、このサービスを提供することで、そうした心理的障壁を取り除き、購入率の向上につながります。また、商品を実際に手に取って試すことができるため、購入意欲がなかった顧客が購入に至るケースも増加します。

このように、「Try Before You Buy型」サービスは、越境ECにおける顧客体験の向上、市場理解の深化、そして売上の増加という点で、非常に有効な戦略となり得ます。越境EC事業者は、このサービスを通じて、国際的な顧客基盤の拡大とブランドロイヤリティの構築に成功することが期待されます。

5.海外進出・海外展開への影響

越境ECの拡大に伴い、「Try Before You Buy型」サービスの導入は、国際市場での日本企業の競争力を高める重要な戦略となり得ます。このサービスは、海外の消費者がオンラインでの購入に対して持つ不安を軽減し、実店舗での買い物に近い体験をオンラインで提供することが可能になります。特に、越境ECを利用する消費者は、商品の返品や交換に関連する手数料や物流コストの負担が大きいため、このようなサービスがあれば、安心して購入を決定できるようになります。

また、Try Before You Buy型サービスは、日本企業が海外市場で独自のブランド価値を提供し、顧客満足度を高める機会を提供します。顧客が自宅で商品を試すことができるサービスは、海外での販売戦略において差別化要因となり、ブランドの信頼性とロイヤリティを構築する助けとなるでしょう。

さらに、越境ECを展開する上で、Try Before You Buy型サービスは、顧客の好みやニーズに応じた商品開発やマーケティング戦略の策定に有用なカスタマーインサイトを提供します。返品された商品のデータ分析を通じて、消費者の好みや市場のトレンドをより深く理解し、商品の選定や広告の最適化を図ることが可能になります。

このサービスを効果的に利用するためには、海外での物流システムや返品プロセスの効率化が重要です。また、国際的な配送や返品におけるコストを最小限に抑えるための戦略も必要になります。国際的なECサイトやモールでの出店を検討する際には、これらのサービスをサポートするプラットフォームの選定や、現地でのパートナーシップの構築が成功の鍵を握るでしょう。

越境ECにおけるTry Before You Buy型サービスの導入は、海外市場でのプレゼンスを高め、顧客満足度を向上させる有効な手段です。これにより、日本企業は国際市場でのブランドイメージを強化し、持続可能な成長を遂げることができるでしょう。

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