目次
1.はじめに
あらゆる事業分野において、ビジネス展開には大小様々なタスクが発生します。特に新規事業展開や事業拡大においては、管理すべきタスクが膨大となる傾向があります。海外市場開拓をする際には一層、負担が大きくなります。様々な業務を適切に管理することは、非常に時間のかかるものであり、企業側はいかに効率的に進めるかについて対策を練る必要があります。
ワークフローを高速化し、生産性と効率性を高めるには、自動化ソフトウェアプラットフォームの導入が効果的です。自動化プラットフォームを使用することで、繰り返されるタスクを自動的に実行することができます。
そこで本稿では、米国スモールビジネスの自動化ツール活用の現状とともに、自動化ツールのメリットや注目の自動化ツールについて紹介します。
海外進出・海外展開で、効率的に業務を進めるためのヒントとしてお役立ていただけましたら幸いです。
2.自動化ツール導入の概況
まずは、米国を中心に自動化ツール導入の概況について紹介します。
McKinsey and Co.による2020年の全世界的な調査(https://www.mckinsey.com/business-functions/operations/our-insights/the-imperatives-for-automation-success)では、66%の企業が、少なくとも1つの業務においてビジネスプロセスの自動化を試験的に行っていると述べています。これは、2018年の前回調査の57%に比較すると、9%の大幅な上昇です。
また、Gartnerによると、世界のハイパーオートメーション化ソフトウェア市場は、2023年に約6000億米ドルに達する見込みです( https://www.gartner.com/en/newsroom/press-releases/2021-04-28-gartner-forecasts-worldwide-hyperautomation-enabling-software-market-to-reach-nearly-600-billion-by-2022 )。
米国およびヨーロッパ企業の自動化ツール導入に関する動向については、ワークフローおよび意思決定を自動化するプラットフォームを提供するCamundaが2020年に大規模な調査を実施しています。調査の結果、従業員から以下のようなビジネスプロセスの自動化に対する需要が高まっていることが示されました(https://camunda.com/wp-content/uploads/2020/10/Camunda-State-Of-Process-Automation.pdf)。
● 90%の従業員が、簡単に自動化できる反復的で退屈な作業に負担を感じている
● 68%の従業員が、日々処理しなければならないことが多すぎるという過重労働に悩まされている
● 81%の従業員が、大量の仕事を処理するために自動化を利用しなければ、限界に達する可能性があると感じている
同調査では、企業の自動化ツール導入状況についても調査しており、2020年時点で欧米の多くの企業が自動化ツールをすでに導入、あるいは導入を検討していることが明らかになりました。
● 67%の企業が、異なるシステム間でエンド・ツー・エンドの可視性を向上させるビジネス・プロセス自動化ソリューションを使用している
● 24%の企業がローコード・プロセス・オートメーションシステムの導入を開始している
● 29%の企業が、ローコード・プロセス・オートメーション・ソフトウェアをまもなく導入する予定である
3.自動化ソフトウェアを導入するメリット
自動化ソフトウェアに対して、導入費用の高さや運用の難しさを危惧する声は少なくありません。しかし、自動化ツールには以下のようなメリットがあります。特に、リソースに制限のある中小企業やスタートアップにとっては、そのメリットの効果は多大です。
● 時間の節約:タスクを自動化することで、時間を節約し、より重要なことに集中することができる
● 生産性の向上:自動化されたタスクは独自のスケジュールで実行されるため、タスクを忘れたり、怠る心配がない
● 一貫性の向上:自動化されたタスクは、滞りなく、スムーズに実行される
● ヒューマンエラーの削減:ヒューマンエラーは、多くの機会損失やリソースの損失を招くが、自動化によって、ヒューマンエラーを抑制することができる
4.ビジネスに最適な自動化ソフトウェアの選び方
現在では、幅広い業務に適用できる様々な自動化ツールが誕生しています。しかし、選択肢の多さは適切な自動化ソフトウェアをどのように選べばいいのかという混乱にも繋がります。
現在では、一般的な業務の殆どに対して、何らかの自動化ソリューションが提供されているはずです。そのため、まずは、自社の業務の中で自動化したいものをリストアップします。具体的には、以下のようなタスクは自動化による恩恵が大きい傾向にあります。
● メールマーケティング
● 統合
● リードキャプチャ
● 支出管理
● アナリティクス
● 顧客セグメンテーション
● ソーシャルメディア
● ワークフロータスク化
5.注目の自動化ツールとそれを開発した米国企業の紹介
5−1.Hubspot
2006年にBrian HalliganとDharmesh Shahによって設立されたHubspotは米国マサチューセッツ州ケンブリッジに本社を置き、アイルランドのダブリンにもオフィスを構えています。
Hubspotは、クラウドベースのインバウンドマーケティングソフトウェアを開発し、企業のオンラインマーケティングの方法を変革することを可能にしています。同社のサービスには、ソーシャルメディアの公開と監視、ブログ、SEO、Webサイトコンテンツ管理、Eメールマーケティング、マーケティングオートメーション、レポートと分析などが含まれます。
Hubspotのセールスアプリケーションでは、セールスおよびサービスチームがリードや見込み客と効果的に会話できるようにしています。
Hubspotではこのように便利な自動化機能が魅力ですが、他のツールよりも高価な側面もあります。小規模な組織や起業家よりも大規模なチームの方が適しているといえるでしょう。具体的なコストとして、月額800ドルから利用可能で、エンタープライズレベルのクライアントでは月額3200ドルからとなります。
5−2.Keap
https://keap.com/features/automation
スモールビジネスの成長をシンプルにすることを使命とするKeapは、2001年に米国アリゾナ州で創設されました。
Keapは、販売、CRM、マーケティングオートメーションのオールインワンプラットフォームとして、高い評価を得ています。以前はInfusionsoftという名前で知られていたKeapは、従業員25人以下の中小企業にとって、営業や見込み顧客獲得のための完璧な自動化ツールとしての地位を確立しています。
Keapは、リードキャプチャやコンタクト管理、メールマーケティングの自動化まで、営業プロセスの自動化に必要なすべての機能を備えています。また、KeapはSalesforce、Google Apps、Zapierなどの他のアプリケーションと統合されているため、自動化ワークフローを最大限に活用することができます。同社は、中小企業向けのCRMとマーケティングオートメーションのカテゴリーを開拓し、現在では全世界で20万人以上のユーザーにサービスを提供しています。
コスト面でも利用しやすく、月額79ドルのプランから提供しており、エンタープライズレベルのクライアントでは月額299ドルからとなります。
5−3.Zapier
Zapierは2011年米国サンフランシスコ州で立ち上げられた企業で、創業以来大きな成長を続けています。
Zapierは、オンラインツール間で情報を自動的に移動させ、より効率的に仕事を進めることができる統合プラットフォームです。毎日使うアプリの繰り返し作業をZapierに任せることで、時間と労力を節約し、より本質的な業務に集中することができます。
Zapierは、Zapと呼ばれる自動接続を使用して、ワークフローを高速化し、様々なアプリを接続します。Zapierでは、1つのアプリ内でのあるアクションを「トリガー」として選択し、事前設定したトリガーイベントが発生すると、別のアプリで1つまたは複数のアクションを引き起こすことができます。
Zapierは3,000以上のアプリとの統合を提供しているため、すでに使っているツールをそのままZapierのエコシステムに統合できることが魅力です。
Zapierの価格は、毎月使用する自動化の数によって異なります。無料プランの場合、ユーザーは毎月100件の自動化を利用することができます。月額19.99ドルの「スターター」パッケージでは、毎月750件の自動化を利用できます。このほかにもさまざまなプランが用意されており、自分に合ったプランを選ぶことができます。
6.海外進出・海外展開への影響
自動化は、ビジネスの規模を拡大しようとする場合、非常に有効なツールです。特に、デジタルフォーメーションを実施したい企業にとって自動化ツールの導入は不可欠とも言えます。
デジタルトランスフォーメーションが進む中、多くの企業がデジタルフォーメーションの実施と既存のビジネスプロセスの継続の両立に頭を悩ませています。既存のビジネスプロセスを自動化することで、企業のデジタルトランスフォーメーションの基盤になります。自動化ツールをもとに社内のビジネスプロセスを適切に再構築すれば、効率性と生産性を向上させ、企業のデジタルトランスフォーメーションを前進させることができるでしょう。
ただし、新しいツールを導入する際は、その背景にあるリスクについても十分に検討する必要があります。例えば、自動化ツールには以下のようなセキュリティリスクがあります。
● 過剰な権限付与によるデータへの勝手なアクセス
● サイバー攻撃による社内ツールへの乗っ取り
● 内部の不正行為による誤った使用
● 設定ミスによるセキュリティ事故
特に欧米では、個人情報の漏えい等のインシデントに対して、企業に大きな罰則を与えていることもよくあります。信頼できるツールの選択と適切な導入で、企業価値を損なわないよう十分注意するようにしてください。