2020.10.19
海外営業支援

新型コロナウィルスの逆境に立ち向かうアメリカ飲食ビジネスの工夫に学ぶ

1.はじめに
全世界的に新型コロナウィルスCOVID-19の感染が拡大する中で、大きな経済的打撃を受けているのが外食産業です。特にアメリカでは、多くの州でバーやレストランにおける店内飲食が長期間規制された他、営業を再開できた地域でも、店内でソーシャルディスタンスを保てるように人数制限が実施されたり、マスクの着用が義務付けられたりしています。また、COVID-19の感染を危惧する顧客が外食そのものを回避する傾向も強く、多くの飲食店が売上減少に苦しんでいるのです。

アメリカの飲食店がCOVID-19感染拡大前の状況に戻るには長い期間が必要だと見られており、多くのビジネスが廃業したり、従業員を解雇したりしています。飲食ビジネスが停滞した際に影響を受けるのはそこで働く従業員だけではありません。サプライヤーなどの影響を考えると、外食産業の苦難は、より広範囲な大きな経済的打撃へとつながるのです。

このような状況の中、飲食業界は消費者の新しい需要に合わせて、ビジネスモデルの転換を実施しています。

飲食業界での海外進出を考えている日本企業にとって、現在の社会状況は大きな壁として立ちはだかっていることでしょう。しかし、消費者の新しい動向を察知し、トレンドに乗ることができれば逆に大きなビジネスチャンスとなり得ます。多くの事業者が時代に合った新しいビジネス形態を模索している状況であり、上手くニッチを捉えることができれば、その市場の第一人者として確立した地位を得られる可能性もあるのです。

本稿ではアメリカの飲食業界がどのように現在の新しい需要に応え、事業を維持しようと工夫しているのか実例とともに紹介します。高級レストランから、ファーストフード店まで広く紹介するとともに、新しいタイプの食事ビジネスについても触れていきます。外食産業や関連事業で海外進出を考えているビジネス関係者の方に関心に持っていただき、海外進出のヒントにしていただけますと幸いです。

2.既存店の工夫
2−1 高級レストランの挑戦
アメリカ西海岸・シアトル(ワシントン州)にあるCanlis(https://canlis.com/)は70年の歴史を誇り、高級レストランのシンボルのような存在でした。COVID-19によりそれまでと同様のビジネス形態を継続できなくなったCanlisはメニューを絞り込み、持ち帰りに特化することで生き残りをかけています。具体的には、朝から昼にかけてはベーグルとサンドイッチを、夕方になるとハンバーガー、サラダ、アイスクリームを売っており、これらはすべてドライブスルー形式で利用できるようになっています。さらに、外出を控える消費者の需要に応えるため、Canlisはディナーのデリバリーサービスも開始しました。1パターンというシンプルなシステムですが、メインメニューの内容は日替わりとなっており、消費者の日常の食事に取り入ることを狙っているのです。Canlisのこのような戦略は、これまで気軽には利用できなかった高級店の味を手軽に、そして手頃な価格で利用できることから消費者に受け入れられており、功を奏しています。以前のビジネスとは大きく異る様相ですが、新しいモデルにより、Canlisは地元の農場サプライヤーから購入を続け、115人のチームメンバーを雇用することができているのです。

アメリカ中西部、ミネソタ州セントポールにある高級レストランSaintDinette(https://www.saintdinette.com/)も同様の戦略を実施しています。SaintDinetteはテイクアウト、カーブサイドピックアップ、配達専用の新しいメニューをリリースしました。このメニューではサンドイッチとサイドの簡素化をしているとともに、これまでレストラン内では提供していなかったようなホットドッグやチーズバーガーなどのカジュアルなメニューが含まれていることが特徴です。しかし、これまでの高級志向を全く排除したというわけではなく、PB&Jサンドイッチに、フォアグラやミックスナッツを加えるなど、高級レストランの洗練された料理を手軽な形で提供するというコンセプトとなっています。

アメリカのフードトレンド調査会社DATASSENTIALの最近の調査においても上記のような持ち帰り重視の戦略への転換が支持されています。同調査では、多くの消費者がドライブスルーを通じて食事を購入することを以前に増して検討しており、車内という空間を他の人からのバリアと見なす傾向があることが分かっています。(https://mcusercontent.com/45027c46b385d9b28f2d3a6d7/files/6b9a99f8-49a9-4767-b650-48f6cdf9c0e2/Datassential_Coronavirus_031920_final.pdf)。

2−2.ミールキットの人気上昇
アメリカ中西部・ミネソタ州を拠点とするファストカジュアルチェーンレストラン、Crisp&Green(https://crispandgreen.com/)は、食事キットの配達と集荷サービスとしてCrisp @Homeプログラムを開始しました。これは、サラダの材料、主食、冷製および温製の主菜・副菜、飲料、お菓子、果物、調理済みの肉魚類、ドレッシングなどの中から、20食分のアラカルト食材を選んで、自宅に配送してもらえるサービスです。消費者は、届けられた食材を組み合わせて約一週間分の食事を楽しむことができるのです。食料品店に行く手間が不要であるだけでなく、半調理されているのですぐに食事を楽しむことができる利便性により、人気を博しています。
2−3.ロボットの導入
アメリカ東海岸・サンフランシスコ(カリフォルニア州)にあるハンバーガーショップ Creator(http://creator.rest/)では、主な調理工程のすべてを自動化した世界初のレストランとして、ロボットが作ったハンバーガを従来より提供していました。そして、現在では、自動化技術をさらに発達させて、完全非接触型で食事を提供するシステムを開発しています。まず、店頭の入り口は閉鎖されており、食事は専用通路を通って、顧客に届けられる仕組みです。さらに、この通路では、外気がレストランの内部に入らないよう加圧されているだけでなく、コンベヤーの表面は自己消毒されています。食事を注文した顧客は、店外のインターホンを介して注文することで、店内で安全に調理・管理された食事を人に全く接触することなく受け取れるようになっています。
2−4.自宅時間を楽しめるキットの販売

COVID-19による外出規制で、自宅で過ごす時間が増える中、多くの飲食店が食事だけでなく、家族団らんをサポートする取り組みを開始しています。例えば、ニューヨーク州のBeascakes Bakery & Breads(https://www.instagram.com/p/B94PWaWpDYh/)やテキサス州のCookies by Lori(https://www.instagram.com/p/B94O2njA2JQ/)は家でクッキーの飾り付けができるキットの販売をはじめました。このキットには、クッキー、フロスティングクリーム、スプリンクルが入っており、大人も子どもも一緒に楽しめるようになっています。

また、バーモント州にあるビザレストランPiecasso Pizzeria & Lounge (https://www.piecasso.com)では、上記と同様のコンセプトでピザキットを提供しています。このピザキットでは、ピザの箱に成形前のピザ生地、チーズ、ソースが入っているのです。その他にも、ベトナム料理のフォーやメキシコ料理のタコスなども、自宅で楽しめるキットの形で提供するレストランが生まれています。

このようなミールキットのコンセプトは、COVID-19の影響で客足が落ちている地元の小規模飲食店が生き残りをかけた策としての意味合いもあります。消費者の自宅時間増加に注目して、需要に合わせた新しい商品を展開することで、なんとか売上を維持しようと試行錯誤しているのです。

3.地元飲食店を支援するビジネスの出現
前項で紹介したように、レストランが各自で様々な取り組みを行う中で、地元の飲食店をサポートしようという動きも活発になっています。例えば、アメリカ中西部の大都市、イリノイ州シカゴでは、Virtual Dining Chicago (https://www.virtualdiningchicago.com)という新しいウェブサイトが立ち上げられており、ここでは地元のバーやレストランに関する最新ニュースが共有されています。

また、ニューヨーク州ではgoodhang(https://goodhang.co/)というサイトが立ち上がりました。このサイトでは、利用者が地元のレストラン、バー、カフェを「仮想会場」として選択し、友達にギフトカードの購入や寄付を勧めることができます。このような各土地の外食ビジネスをサポートする動きは、今後全米の都市へと広がることが予測されます。

4.海外進出・海外展開への影響
日本食ブームのアメリカでは、日本企業による飲食店関連の海外進出が活発行われていました。しかし、COVID-19により外食産業は大きな打撃を受け、多くの飲食関連ビジネスが今までの営業形態を再考する必要に迫られているのです。そのような中、高級レストランから、ファーストフード店、地元に根ざした小規模店舗に至るまで、様々な新しい取り組みに挑戦しています。消費者の購買行動の変革や、社会的背景に敏感に反応することで、逆風に立ち向かう策を模索しているのです。

また、飲食業界をサポートするような取り組みも活発になっています。飲食関連分野で海外進出を考えている場合には、新しい需要に合わせた新しい事業形態の戦略を練るとともに、前述のような飲食業界をサポートする取り組みを積極的に活用することが重要かもしれません。

タンデムスプリントグループでは、日本企業による飲食関連事業の海外市場への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

2020.9.22
海外営業支援

アメリカで加速する無人化の波 〜botコミュニケーションや無人配送、接客ロボットなどの実用事例をご紹介〜

1.はじめに
新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)のパンデミックにより、アメリカやヨーロッパ各国では外出禁止令が発令されるなど、人々の生活は様変わりしました。そして、今までのように気軽に外出できないことで、botシステムや無人ロボットなどの人と人との接触を避けるサービスの導入が加速しています。医薬品や食料品の提供、飲食店の運営は人々の生活を維持するために必要不可欠ですが、人と人との接触を最小限に抑えた上で、これらのサービスを継続する際に、botシステムやロボットが大きな役割を果たしてくれるのです。

利便性と社会とのつながりをともにもたらしてくれるbotシステムやロボットの活用は、高齢者や身体障害者、孤立環境で生活している人々にとっては特に有意義です。以前より、病院や大学、空港、企業など様々な場面で利用されてきましたが、ここに来てより身近な存在として運用されるようになってきました。

海外進出を考えている日本企業にとって、勢いのあるビジネスの潮流を察知し、その波に乗ることは重要です。関連技術を持った日本企業にとってはその技術を売り込み海外進出をするチャンスとなり得ます。そうでなくとも、新しい技術を取り入れたサービスを導入することで、メディアや消費者から注目されやすくなるという効果も得られる可能性があります。

本稿ではアメリカのテック企業が提供するbotシステムやロボットの活用事例を紹介します。Amazonのような巨大企業の事例から、小規模ビジネスにおける事例まで含んでいますので、様々な形態のビジネス関係者の方に関心に持っていただき、海外進出のヒントにしていただけますと幸いです。

2.botシステムによる健康相談サービス

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) によるパンデミックが広がると、COVID-19 の症状がある人、病気に関して質問したい人など、不安を感じている人たちから病院や保健所等へ連絡が殺到するようになりました。その結果、対応機関のリソースはパンク、急増した問い合わせにいかに対応するかが急務の課題となったのです。しかし、COVID-19の感染防止の観点からは、安易にコールセンターを増設し、そこに増員したスタッフを配置させるわけにはいきませんでした。そこで注目されたのが、botシステムを用いた仮想アシスタントの導入です。

現在、世界的に利用されているのが、米国企業マイクロソフト社が提供するMicrosoft Healthcare Bot サービスです。実はこれは、COVID-19が猛威を振るう前から医療機関で使われており、本来は一般的なバーチャルヘルスアシスタントとして対応できるよう設計されたものでした。それが、COVID-19 の大流行によって世界中の医療システムが問い合わせの急増に苦慮する中で、米国、ヨーロッパ、中東の組織において、COVID-19 に感染した疑いのある患者をスクリーニングするツールとして使われるようになったのです。

COVID-19関連の問い合わせでは多く場合、パターン化された質問が行われています。そのため、botシステムによる自動応答システムとの親和性が高く、コールセンターよりも処理速度の早いbotシステムが、人によるコールセンターでの対応に取って代わることとなりました。botシステムを通じて、症状を振り分けることで、医療スタッフと同等の精度でリスクの高い患者を特定することも可能です。そして、治療が必要だと判断された患者は人間の担当者にスムーズに引き継ぐことができます。

Microsoft Healthcare Bot サービスをベースに医療機関が作成した COVID-19 症状に関するbotシステムでは2020年3月以降の約1ヶ月のうちに、 1,230件、1,800万人、 1億6000 万件以上のメッセージの対応実績という成果を出すことになりました(https://news.microsoft.com/transform/how-international-health-care-organizations-are-using-bots-to-help-fight-covid-19/)。

botシステムを使えば、人々からの問い合わせに対応し、症状別に振り分け、次にどのようなアクションを取るべきかパーソナライズされた情報を提供することができます。そのため、医療機関への問い合わせボリュームを大幅に軽減することができるのです。

3.自動操縦ロボットを利用した無人配送サービスの実用化
COVID-19のパンデミックの影響で、アメリカ各地でロックダウンが発生し、食料品や生活必需品の買い出しを配送サービスに頼む人が急増することとなりました。それに伴い、eコマース大手の米アマゾンにおいても需要が急増、一時期欠品の続出や配送の遅れる結果となったのです。さらに、米アマゾンでは複数の倉庫でCOVID-19の集団感染が発生し、感染防止対策が不十分であり、過酷な状況を従業員に強いていると批判が発生しました。

このような背景もあり、米アマゾンを始めとしたeコマース企業では、配送プロセスの無人化に取り組んでいます。それが自動運転技術を用いた配送車やロボット、ドローンです。実は、これらの無人化モデルが実現できれば、米アマゾン自身にもコスト面で大きなメリットとなります。アマゾンのeコマース事業の配送コストの過半数は最後の集荷拠点から配送先に商品を届けるまでの最終ステップに費やされており、この部分を無人化することができれば、全体のコストを大幅に削減できるのです。

アマゾンは無人配送に関する特許取得や、関連技術への資金投入、事業提携を積極的に進めています。例えば、ドーロンの安全性対策をみると、飛行中のドローンが合体する技術、正常な飛行が困難になるとドローンが自己破壊する技術、ドローンのハイジャック防止技術などの関連特許を次々に取得しています。さらに、2019年2月には自動運転技術を開発するシリコンバレーのスタートアップ企業、オーロラ・イノヴェイション(Aurora Innovation:https://aurora.tech/)に対し、シリーズBラウンドの資金調達5億3000万ドルの一部を出資しました。

こうした流れの中で、2020年、無人ドローン実証実験に向けた動きが加速しています。マゾンは、2019年5月に配送用ドローン「Prime Air」を発表し、30分以内の配送時間で、配送範囲は15マイル(約24km)、5ポンド(約2.26kg)までの荷物を配送する計画を進めています。そして、2020年8月末、同社は米連邦航空局(Federal Aviation Administration:FAA)からドローンを利用した航空運送業者としての認可を受けたことが明らかになりました。これにより、米アマゾンは、アメリカ国内で試験運用を開始することができ、ドローンによる無人配送システムの実用化が大きく前進することとなります。

米アマゾンは現在42機あるPrime Airを7〜8年後には200機にまで増設する計画です。これによりユナイテッド・パーセル・サービス(United Parcel Service Inc:UPS)やフェデックス・コーポレーション(FedEx Corporation:FEDEX)など、配送業界に大きな影響を与える可能性があります。

4.様々な分野で対人サービスを担うロボット
従来、医療の現場にはロボットの導入が進んでおり、例えば遠隔操作で手術を行ったり、人間の手では難しい細かい手術を行うことのできる医療ロボットが開発されていました。しかし、今回のCOVID-19のパンデミックにより、医療スタッフの人手不足や院内感染防止の観点から、ロボットの活用を望む声が高まってきています。

医療の現場では、器具の運搬や患者の受付など、医療や看護の専門的な知識が不要な雑務も多くあります。そのような雑務をロボットに任せることで、専門職員の作業負荷軽減につながり、患者の救命に集中することを可能にするとともに、医療従事者の安全確保にもなるのです。

米国企業Deligent Robotics(https://diligentrobots.com/)が開発した「Moxi」は看護師支援ロボットとして、看護師を専門知識不要な雑務から解放してくれます。また、患者との必要以上の接触を回避できることで、院内感染のリスク軽減にもつながると期待されています。

他にも、ロボットの導入を全面的な売りにしている面白いビジネスも出てきています。例えば、アメリカ・イリノイ州にある大都市シカゴにあるホテルEMC2(https://hotelemc2.com/)では、LeoとCleoという名前のロボットがホテルの廊下とエレベーターをシームレスに移動して、部屋までのアテンドやルームサービスの提供してくれます。

カリフォルニア州ロサンゼルス郡パサデナのダウンタウンにあるファーストフード・レストランでは、ロボットのFlippyがキッチンスタッフとして働いています。このFlippyはロボット工学と機械学習の長年の研究の成果として誕生したもので、モーター、センサー、チップ、処理能力において最新の技術を利用しています。

Flippyを開発した企業、Miso Robotics社(https://misorobotics.com/flippy/)によると、Flippyは、従業員を最低賃金で雇用するよりもコストが安く、即戦力のキッチンスタッフとして稼働できるということです。また、ロボットなので急病で休みシフトに穴が開くというようなこともありません。従来、ロボットアームの価格は非常に高額で、レストランの店舗に導入するのは非現実的な状況でしたが、現在では10,000ドル未満に価格が急落しています。

このように、技術の向上と低価格化、そしてCOVID-19の影響が重なったことで、今後は人の代替となるロボットが急速に広まることになるでしょう。ロボットによる接客サービスが日常の光景となるのも、遠い未来ではないかもしれません。

5.海外進出・海外展開への影響
COVID-19の世界的な大流行により、人と人との接触を回避する手法に人気が出ています。そのため、すでに成長傾向にあった無人化技術が、今後急激な勢いで発達していくことが予測されます。特に人が密集する労働環境や感染のリスクが高い職場では、感染症の影響を受けない無人化技術が非常に重要となってくるでしょう。今後、産業分野を問わず、大きく成長する技術だとも言えます。

これまでロボットなどは非常に高額で、大手テック企業など資金力のあるところでしか使用できない存在でした。しかし、現在では価格が手頃になり、ホテルやレストランなどで気軽に導入できる存在となりました。海外進出をする企業にとって、現地のビジネスの流行を把握し、その波に乗ることは重要です。今後無人化の波が進むにつれ、無人化システムを導入していないビジネスに対して消費者は遅れていると感じることも出てくるかもしれません。

無人化技術と人間とがどのように共存していくかは難しい問題ではありますが、効率化や安全につながる無人化技術を積極的に導入し、時代にあった労働環境、接客環境を提供することはビジネス継続の鍵だと言えます。

日本にはロボット関連分野に強い基盤があります。今回の新しい波はビジネスチャンスとして、海外進出のきっかけになる可能性もあります。また、関連分野以外の企業でも、自社事業の海外進出の際には自動化や無人化サービスの導入を検討することで、新しい事業形態が実現できるかもしれません。

タンデムスプリントグループでは、日本企業によるbotシステムやロボット技術を活用した海外事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

2020.9.16
海外営業支援

アメリカでキャッシュバックサイトを活用して小売業者がECなどの収益を上げる方法

1.はじめに
現在、アメリカではキャッシュバックサイトを通じたオンラインショッピングが一般的になりつつあります。「キャッシュバックサイト」とは、オンライン購入額のうち一定の割合を現金やギフトカードなどで払い戻すウェブサイトを指し、ECビジネスのファシリテーターとして機能しています。企業側は自身のビジネスブランドとキャッシュバックサイトとの間でパートナーシップを形成することにより、新規顧客を安定的にブランドに流入させることが期待できます。

海外進出を考えている日本企業にとって、このようなキャッシュバックサイトの活用は非常に有効です。現地に基盤のない日本企業にとって、海外進出の際に自身のブランドをいかに認知してもらうかは大きな課題となりますが、キャッシュバックサイトはそれを解決するソリューションになり得るのです。

本稿ではキャッシュバックサイトのビジネスモデルとアメリカの主要なキャッシュバックサイトを紹介します。

2.キャッシュバックサイトの役目
キャッシュバックサイトはブランドの認知や拡大を支援する信頼できる仲介業者として機能し、企業が販売チャネルを多様化する助けになります。まだ世間によく知られていないブランドが顧客を獲得するには、顧客といかに信頼を築くかが難しいところですが、よく知られたキャッシュバックサイトを介することで、自動的に信頼を得ることができ、顧客との強力な関係を構築できる可能性があります。さらにブランドそのものを宣伝するだけでなく、キャッシュバックサイトを通じて期間限定のキャンペーンなどを周知することにも役立ちます。

キャッシュバックサイトから企業のショッピングサイトに移動する際には、バックリンクが生成されますが、このバックリンク作成の過程は企業にSEOを最適化する機会を提供してくれます。キャッシュバックサイトにブランドを掲載し、消費者がそのページリンクを踏むたびに、SEO戦略にプラスの影響を与える可能性があるのです。

キャシュバックサイト内には、お得な情報や新製品を探しているアクティブなバイヤーが常に存在しています。このような新しいターゲットオーディエンスにリーチできるのも、キャッシュバックサイトを利用することの魅力です。オンライン上にはキャッシュバックサイトのお得情報を共有する消費者コミュニティが形成されており、キャッシュバックサイトとの提携はデジタルプラットフォームを利用したマーケティングとして、安価でありながらも効果的にブランド力を高めるための一つの方法だと言えます。

3.キャッシュバックがコンバージョン率を高める理由
コンバージョン率とは、広告やオーガニック検索などからのサイト流入数に対してどのくらいの割合でコンバージョン(ECビジネスでは訪問者が購入等のアクションを起こしてくれた状態のこと)を獲得できたかを示す指標です。マーケティング担当者はこのコンバージョン率を向上させることに力を入れており、コンバージョン率を上げるような施策に多くの広告費を投入しています。

キャッシュバックサイトはコンバーション率の観点からも効果的なマーケティングといえます。なぜなら、キャッシュバックサイトからの訪問者はECビジネスに慣れ親しんでいる前提があり、オンラインショッピングへの抵抗感がありません。そのため、不特定多数に発信するよりも効率的にコンバージョン率を改善することが期待できるのです。また、キャッシュバックサイトではオーガニック検索ではリーチが難しい新しい顧客を獲得できる可能性もあります。

4.キャッシュバックサイトの独占性
キャッシュバックサイトの別のメリットとして、限定オファーとして展開できる点があります。特定のキャッシュバックサイトを通じてのみ利用できるオファーを設定することで、少ない労力で多くの顧客に訴求することができるのです。

例えば、近日中の新製品販売を見越して在庫処分をしたいときに、その売り捌きたい製品に適用できる割引キャンペーンをキャッシュバックサイト限定で展開するのも一つの手でしょう。また、キャッシュバックが適用される製品を限定することで、キャンペーン適用となる他の製品も併せて購入することを消費者に促し、クロスセルを促進、顧客当たりの売上単価を向上させることも期待できます。さらに、キャッシュバックサイト自身が行うポイントアップキャンペーンに便乗することで、店舗で単独キャンペーン展開するよりもより多くの潜在顧客に訴求することができます。

5.アメリカのキャッシュバックサイト
5−1.Rakuten Ebates(楽天Ebates)
https://www.rakuten.com/

クーポンコードを打ち込むことなく、企業毎に設定されたキャッシュバックを自動で受け取ることができます。提携企業の多さが売りで、Amazon、Madewell、Travelocity、Walmartなどの大手小売業者をはじめ、2,500以上と提携しています。Rakuten Ebatesと似た形態のキャッシュバックサイトとしてはTopCashback.com(トップキャッシュバック)(https://www.topcashback.com/)やMr.Rebates(ミスターリベーツ)(http://www.mrrebates.com/)があります。

5−2.Ibotta(イボッタ)
https://ibotta.com/

食料品や日用品の購入に特化したサイトです。消費者は利用したいオファーを保存し、適用商品の購入レシートをアップロードすることで、キャッシュバックを獲得することが可能です。CVS、Kroger、Publix、Sam’s Club、Target、Walmartなどの主要な食料品店やチェーン店と提携されています。多くは実際に店頭で買い物をするものが対象ですが、一部のオンラインストアもキャッシュバックに対応しています。

5−3.Drop(ドロップ)
https://www.earnwithdrop.com/

Dropは個別のオファーを登録する必要も、レシートをアップロードする必要もない手軽さが人気のキャッシュバックサイトです。Dropではまず、キャッシュバックを利用したい小売ブランドを5つまで選択でき、そこで連携済みのクレジットカードを使用すると、購入金額全体に対して自動的にキャッシュバックがされる仕組みです。Trader Joe’s、Whole Foods、Uber、Starbucksなどの人気の店舗とも提携しています。

5−4.Shopkick(ショップキック)
https://www.shopkick.com/

Shopkickは、キャッシュバックを得るために購入する必要がないというのが独特です。実店舗に足を運び、商品のバーコードを自身のスマートフォンでスキャンします。もちろん購入をすれば、より多くのポイントが貯まります。ポイント獲得に購入が必須ではないので、ゲーム感覚で楽しむユーザーもいます。

5−5.Fetch Rewards(フェッチリワード)
https://www.fetchrewards.com/

Fetch Rewardsでは、レシート(食料品店のレシート)の写真を撮るだけで報酬を獲得できます。商品のバーコードをスキャンしたり、特定のブランドを探したりする手間がかからないので、労力をかけたくない消費者から人気です。

5−6.Saving Star(セービングスター)
https://savingstar.com/

Saving Starは各チェーン店のポイントカードと連携させる仕組みを採用しています。買い物の際にポイントカードをスキャンすれば自動的にキャッシュバックを獲得できます。CVS、Dollar General、Safeway、またはWinn-Dixieなどの日用品を扱うチェーン店が利用可能です。

6.最後に
キャッシュバックサイトは消費者でも小売業者でもない第三者によって運営されているプラットフォームであるため、顧客が信頼感を持ちやすいという特徴があります。また、キャッシュバックサイトを通じた情報は、消費者にここで買うとお得だという感覚をもたらし、購買意欲を刺激します。

また、キャッシュバックサイトのビジネスモデルでは、企業にとって効果のないマーケティングに費用をかけてしまう心配がありません。なぜならキャッシュバックサイト利用における、小売業者の負担はパフォーマンスベースとなっているのです。消費者の購入につながればキャッシュバック分を負担する必要がありますが、購入につながらなければ小売業者は何も負担をする必要はないのが通常です。リスクフリーでマーケティングを展開でき、少しの負担で販路拡大につながるキャッシュバックサイトは広告費に大きな予算を割けない企業にとっては特にメリットが大きいプラットフォームだといえます。

アメリカではキャッシュバックサイトが年々普及しており、提携数が多い大手サイトから様々なジャンルに特化した独自路線のサイトまで様々あります。自社のサービスに適したキャッシュバックサイトと提携し、マーケティングに利用すれば、少ない費用で大きなメリットを享受できる可能性があります。日本から海外に進出する場合、販路拡大はビジネスの成功を決める大きなポイントであり、キャッシュバックサイトの潜在的な可能性は無視できないものです。海外進出を目指している企業はキャッシュバックサイトを活用して、認知度の向上、在庫の販売、コンバージョン率の向上、新規顧客へのアプローチ、クロスセルの促進につなげていくと良いでしょう。

本稿が日本企業が海外進出する際の効果的なマーケティングやビジネス成長のための販路拡大の糸口になれば幸いです。タンデムスプリントグループでは、日本企業によるデジタルマーケティングを使用した海外事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

2020.9.8
海外営業支援

海外進出のために現地デジタルマーケティングの最新手法を学ぶ

1.はじめに
今日では、様々なテクノロジーが開発・発展し、状況は急速に変化しています。そして、そのようなテクノロジーに関連があるデジタルマーケティングの変化には特に目を見張るものがあります。新しい手法が日々増えており、デジタルマーケティング担当者は最新情報を入手するために力を注いでいます。なぜなら新たなトレンドを把握しておくことは、ビジネスを継続的に成長させていく上で重要なことだからです。

海外進出を考えている日本企業においては、デジタルマーケティングは特に押さえておきたい部分です。なぜなら、海外市場に展開する際に、現地の消費者に直接自社の商品やサービスを紹介する上で、海外で主流・人気となっているマーケティング手法は非常に効果的であり、それらなしでは海外市場に乗り遅れる可能性があるからです。

海外でトレンドとなってから、少し遅れて日本に入ってくることも多いので、海外進出を考えている場合には、現地で流行しているマーケティングトレンドを把握しておくことが重要でしょう。そこで、本稿では2020年の主なマーケティングトレンドをいくつか紹介します。海外進出の際にマーケティングで遅れを取ることのないように、是非積極的に取り入れてみてください。

2.買い物に直結するSNS投稿
現在では、多くの人がソーシャルメディアを利用しています。ソーシャルメディアには、いつでもどこでも簡単に情報を得ることができるユビキタスな性質があり、これはオンラインマーケティングにおいて不可欠な要素です。実際、SNS上で購買活動を行う人も増えてきています。

例えば、Instagramユーザー2,000人を対象に行なった調査では、Instagramの投稿を見た後にファッション、美容、またはスタイル関連の購入を行った割合は72%にも上りました。また、Pinterestユーザー4000人以上を対象にした調査では、70%がPinterestを使用して新しい製品や興味深い製品を見つけていることがわかりました。これらの数値はビジネスにとってSNSの利用が大きなチャンスになることを示していると言えるでしょう。

定番のSNSプラットフォームの多くでは、企業がソーシャルメディアを通して、顧客に直接そして簡単にアクセスできるようになっています。具体的に紹介すると、Facebook、Pinterest、Instagramでは、SNS投稿自体にeコマースストアで購入可能オプションを作成することができ、このような設定を行えば投稿を見たユーザーがその投稿から直接商品を購入することができるのです。このようなSNSマーケティングでは、新しい顧客にすばやく簡単にリーチできるため、新しいビジネスを立ち上げる際に非常に有効だと言えます。ソーシャルメディアを利用すると、ユーザーに到達するまでの販売プロセスを短縮することができるのです。このように、直接購入可能なSNS投稿を行うことが今後のスタンダードになると予想されます。

3.仮想現実と拡張現実
近年、拡張現実と仮想現実の両者に大きな注目が集まっています。拡張現実(AR)とは、実在する風景にバーチャルの視覚情報を重ねて表示することで、目の前にある世界を仮想的に拡張することです。仮想現実(VR)とは 、人間の五感を同時に刺激することで人工的に作られた仮想空間をあたかも現実かのように体感させることです。

トレンドとしては、VRの方が先行して注目されていましたが、近年ではARの人気が高まっており、さらにVRとARを融合させた複合現実(MR)というものも出てきています。

実際にARをマーケティングに利用している事例をご紹介します。家具販売の大手企業であるIKEAでは、ARを使ったアプリを使って、同社の製品を自宅で試せるようになっています。消費者は自身のスマホを使って自宅内の好きな場所に、IKEAの商品を置いてみることができ、雰囲気やサイズ感から購入を検討できるのです。さらに、ARで試した家具でウィッシュリストを作成することもできます。この手法によって、購入までのエンゲージメント向上へとつなげているのです。従来IKEAでは、実店舗で顧客自身が商品を確認して購入するスタイルでしたが、近年ではアプリなどを通じて商品購入につなげるマーケティングにも力を入れているようです。

日本企業が海外進出する際には、実店舗ではなく、オンラインショップのみで展開することも多くあるでしょう。その際、消費者から実際の商品を手にとって体感してもらうことができないのが課題となります。しかし、ここにARなどを利用すれば、消費者は自宅にいながら商品を試すことができ、消費者に商品の良さを伝えやすくなることでしょう。

4.インタラクティブでパーソナライズされたコンテンツ
コンテンツマーケティングの重要性が認識されてから暫く立ちますが、現在でもコンテンツを充実させることはマーケティングの基本です。消費者にとって有益で高品質なコンテンツを提供することは、検索上位を狙い、顧客へのエンゲージメントを上げるために必須となります。ビデオコンテンツはその他の形態のコンテンツよりも、消費者の目に止まりやすいと言われていますが、特に近年ではライブビデオに注目が集まっています。

実際に、Facebook LiveとInstagram Liveにおいて、録画ビデオとライブビデオを比較すると、後者の方が約3倍も長い時間の視聴時間となることがわかっています。このようにライブ動画が好まれる背景には、現在多くの消費者がインタラクティブなコンテンツを求めていることがあると考えられます。インタラクティブなコンテンツはそうでないものに比べて、消費者自身の意思で他の人に共有したいという気持ちを高め、そのブランドの認知度を高めるのに役立つのです。

また、今後はよりパーソナライズされたコンテンツの重要性も高まってくるでしょう。世間一般に向けられたマーケティングに対して、消費者は自分に関係ないものと感じる傾向があり、従来のマスマーケティング的な手段では効果が大幅に低下するのです。そこで、パーソナライズ化がプラスに働きます。

実際に1,000人規模の調査では、90%がパーソナライゼーションに魅力を感じていると述べており、80%はパーソナライズされたコンテンツを提供する会社を利用する可能性が高いと言うデータがあるのです。

このパーソナライズされたマーケティングは日本のおもてなし文化に通じるものがあり、その点、日本の企業にとっては有利な面もあります。消費者は多数に向けたメッセージではなく、自分個人に向けたメッセージを望んでいるということを念頭に、マーケティングを展開するとより効果的だと意識すると良いでしょう。

5.マーケティングトレンドのキーポイント
誰もが新しい情報を簡単に得ることができる現在、消費者は時代の変化に非常に敏感で、日常的な消費行動の中にもスピード感や、革新が求められる時代となっています。そのため、時代遅れなサービスやで面倒な手順は一気に顧客離れを引き起こすのです。これは企業が販路拡大のために行うマーケティング施策においても当てはまります。

つまり、企業は消費者が目新しく感じるサービスを次々に生み出し、それをトレンドに合った手法で消費者に訴求していく必要があるのです。近年のマーケティングトレンドでは前述の通り、SNSが大きな役割を果たし、デジタルマーケティングが中心となっています。ソーシャルメディアのプラットフォームを離れることなく企業の販売サイト、購入・決済まで行えることが増えています。このような消費者の「気になる」という気持ちが下がらないうちに、わずか数ステップ購入まで到達させることができるのかがマーケティングの鍵となるでしょう。

このようなトレンドの中では、実店舗におけるオフラインの小売とeコマースの垣根はより一層取り払われていくことになります。これまで実店舗とオンラインではそれぞれ別のアプローチとして施策が練られていましたが、今後はタッチポイントが異なるだけという扱いになり、複数のタッチポイントを持つひとつのカスタマージャーニーとなっていくでしょう。そのため、企業側としては、消費者の購買活動を数値化・分析・対策する際に、実店舗とECサイトに対して統合されたマーケティングを行う必要があるのです。

6.最後に
ビジネスを成功させるには、新しいトレンドを把握しそれを取り入れるのはもちろんですが、顧客中心のマーケティング施策を行うことが重要です。つまり、これまで別の分野と考えれられていた、マーケティングとカスタマーサービスを横断する手法が効果的でしょう。

なぜなら、顧客の満足度を上げることでコンバージョンが増加し、口コミが増加し、自然発生的なマーケティングへとつながっていくのです。

デジタルマーケティングの普及とカスタマーファーストへの変化は、日本企業が海外進出する上でプラスに働く可能性があります。なぜなら、新しく市場に参入する企業にとってデジタル媒体のほうが気軽に取り組めるものであり、また日本では平均して高品質なカスタマーサービスが行われており、これらをアメリカの市場で展開できれば消費者の満足度を上げることができる可能性があるのです。

一方で、日本の企業文化としてこれまでのやり方を変えるのに時間がかかるということが言われており、デジタルマーケティングのトレンドについていけないと感じることもあるでしょう。しかしながら、テクノロジーは進歩し続け、誰もが新しいもの、より効率的なものを追求しています。現地で認知されていない日本企業が海外進出をする際には、トレンドに乗ったマーケティングはビジネス成功の鍵を握る重要なものです。

日本のきめ細やかなカスタマーサービスの良さと、最新のトレンドやテクノロジーを取り入れたデジタルマーケティング施策を融合することで、現地企業に負けない強いマーケティングを展開することができるでしょう。

本稿がアメリカなどの外国において、又は日本から海外に向けて、デジタルマーケティングを行う企業様のお役に立てますと幸いです。タンデムスプリントグループでは、日本企業によるデジタルマーケティングを使用した海外事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

2020.8.22
海外営業支援

新型コロナウィルスによって需要が急増、アメリカの主要な食品宅配サービスのビジネスモデルの特徴

1.はじめに
新型コロナウィルス(COVID-19)のパンデミックにより、家にいながらオンラインで食料品を注文したいと考える消費者が世界的に急速に増えています。例えば、アメリカ国内のデータを見てみると、2020年6月のオンライン食料品の売り上げは72億ドルに達しました(Brick Meets Click/Mercatus Grocery Survey:https://www.mercatus.com/press-releases/june-online-grocery-sales-for-delivery-pickup-climb-to-7-2-billion/)。これは2019年の8月に比較すると、6倍の増加です。また、顧客数に対しても、同時期の比較で約3倍に増加しています。

実は、このようにオンラインで食料品を注文し、自宅まで届けてもらうサービスはCOVID-19のパンデミック前から既に成長過程にありました。そして、パンデミックをきっかけとした需要の高まりにより、成長が加速したのです。なお、オンラインでの食品宅配サービスの市場規模は食料品全体の売り上げが年間7,000億ドル以上であることを考慮すると、まだ僅かなものであり、将来的に大きな成長性を秘めています。

本記事では、アメリカの主要な食品宅配サービスのビジネスモデルを紹介しています。サービスの特徴を比較し、成功の鍵を考察することで、今後日本企業が海外で食品宅配サービスに参入、展開する際の参考になれば幸いです。

2.主な食品宅配サービス
2−1.Amazon Fresh(アマゾンフレッシュ)

・アマゾンプライムメンバー向け
・利用料:プライムメンバーは無料
(ただし、プライムメンバーの一般会費は$ 12.99 /月または$ 119 /年)
・送料:35ドル以上の購入で無料(地域によっては$50以上の購入で無料)

アマゾンフレッシュのサービスは、2,000以上の都市で利用でき、食料品チェーンWhole Foods(ホールフーズ)が注文を処理する地域では2時間で配達されます。消費者は、肉や乳製品から果実、野菜、調理された食品、紙製品まで、あらゆる種類の日用品・食料品を、食料品チェーンと同等の価格で購入できます。食品は温度調節された状態で配送されるため、注文品が届いたときに必ずしも在宅しておく必要はありません。注文品は指定の場所に消費者自身が受け取りに行くことも可能で、その場合最低購入金額の制限はありません。

2−2.Amazon Pantry(アマゾンパントリー)

・アマゾンの全顧客向け(アマゾンプライムメンバーでなくとも利用可能)
・利用料:無料
無料
・送料:5.99ドル。 アマゾンプライムメンバーは35ドル以上の購入で無料

非生鮮品、特に洗濯洗剤など重いものを必要とする消費者から人気のサービスです。アマゾンパントリーでは、5.99ドルの送料で、ダンボール1箱分の日用品・食料品を配達してもらうことができます。5個以上の商品注文で、全額から5%割引、10個以上の商品注文で10%の割引となります。アマゾンパントリーの強みは品揃えが豊富なことで、肉や乳製品から果実、野菜などの生鮮食品以外であれば、ほとんどすべてのものを購入することができます。消費者は注文の過程で、カートに商品を追加すると、箱がどれだけいっぱいになったかを確認できます。

2−3.Instacart(インスタカート)

・インスタカートに登録で利用可能
・利用料:購入総額の5%の手数料。Expressメンバーの場合は手数料が引き下げられる(Expressメンバーの一会費は月額$ 9.99または年額$99)
・送料:3.99ドル〜7.99ドル。Expressメンバーは35ドル以上の購入で無料

ニューヨーク、ボストン、サンフランシスコ、シカゴなどの大都市圏から始まったサービスですが、現在ではより広範囲で利用できるようになりました。インスタカートは、買い物代行プラットホームのような形をとっており、地元スーパーと提携して顧客に代わって店頭で買い物、配達をしてくれます。Safeway、Kroger、Acme、Albertsonsなどのスーパーマーケットチェーン、地元の高級食料品店、Petco(ペット用品店)やCVS(ドラッグストア)などの小売業者に加えて、CostcoやSam’s Club(会員制倉庫型店舗)とも提携しており、消費者のさまざまな日用品・食料品のニーズを満たしてくれると人気が高まっています。消費者がオンラインで注文を入れると、数時間以内に、代行者が買い物を行い、代替品が必要な場合は消費者とやり取りをし、消費者の自宅まで届けてくれるのです。

なお、インスタカートでの販売価格は必ずしも店頭価格と同じとは限りません。それぞれの小売業者はインスタカートの顧客に請求する金額を決定できるので、店頭販売価格にいくらか上乗されることもあるのです。ただし、メーカーのクーポンやプロモーションによる割引も積極的に展開されています。

2−4.Walmart Grocery(ウォルマートグロッサリー)

・ウォルマートグロッサリーに登録で利用可能
・利用料:30ドル以上の購入で無料
・送料:7.95ドル〜9.95ドル。Delivery Unlimitedメンバーは無料(Delivery Unlimitedメンバーの一会費は月額$ 12.95または年額$ 98)

ウォルマートグロッサリーでは消費者がオンラインまたはアプリを介して食料品を注文すれば、手数料無料で店頭に受け取りに行く、あるいは送料を負担して自宅に配送することができます。ウォルマートでは日用品から、食料品、玩具類など幅広い商品を取り揃えており、それを店頭と同じ低価格で買い物ができることが特徴です。

店舗では、注文された商品を買い物袋に詰め、準備が整ったら消費者に連絡を行い、消費者は受け取り場所で購入商品を受け取る仕組みです。受け取りは指定場所で待機するとそこに荷物を持ってくれる仕組みが一般的で、車から降りて店内に入る必要がないので便利です。ウォルマートグロッサリーのサービスは、店舗での受け取りオプションは約3,100店舗、自宅への配送オプションは約1,600店舗で利用できます。

2−5.FreshDirect(フレッシュダイレクト)

・フレッシュダイレクトに登録で利用可能
・利用料:30ドル以上の購入で無料
・送料:$5.99〜、DeliveryPassメンバーは無料($79/6か月またはAnytime DeliveryPassの場合は$129/年、週半ばのDeliveryPassは$39/6か月)

ニューヨークの都市部でのみ展開しているフレッシュダイレクトは、地元の農場や職人の生産者を中心に商品を調達・販売しています。また、ミールキットやジビエ肉やチーズを注文できるオプションもあります。価格は決して安くありませんが、頻繁な販売とクーポンがあります。食品にこだわりをもつ消費者層からの人気が高いサービスです。

3.新規参入の新しいビジネス形態
3−1.仮想コンビニエンスストアチェーン「DashMart(ダッシュマート)」

フードデリバリーサービスの大手、DoorDash(ドアダッシュ)は、最近「ダッシュマート」と呼んでいる仮想コンビニエンスストアチェーンの立ち上げを発表しました(https://blog.doordash.com/introducing-dashmart-1891ecc0257d?gi=dd7655eecbdc)。この仮想コンビニエンスストアチェーンは実店舗を持たず、ドアダッシュアプリ内にのみ存在するものです。同社は米国の8つの都市(オハイオ州コロンバス、オハイオ州シンシナティ、テキサス州ダラス、ミネソタ州ミネアポリス、アリゾナ州フェニックス、ユタ州ソルトレイクシティ、カリフォルニア州レッドウッドシティ)で同サービスを展開し、その後全米に拡大していくと計画しています。

ドアダッシュではこれまでレストランからのフードデリバリーサービスに特化していましたが、近年の日用品・食料品デリバリー市場拡大を受け、新しい分野に挑戦しようとしています。

3−2.Uber(ウーバー)も食料品の配達事業に参入

ウーバーは2020年7月、ラテンアメリカとカナダの一部の都市で食料品の配達事業を開始することを発表しました(https://www.uber.com/newsroom/introducing-grocery-delivery/)。この背景には、2019年後半に行われたCornershopの買収があります。Cornershopはチリのサンティアゴに拠点を置くスタートアップで、ラテンアメリカ市場に食料品のデリバリーサービスを広めた実績がありました。ウーバーではまず、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、ペルーの19都市でサービスを開始し、その後米国市場にもサービスを拡大する予定です。

4.競争力を上げる鍵
前述の既存サービスの中では、インスタカートがオンライン食料品市場の過半数のシェア(57%)に到達する順調な成長を見せています(https://www.foodnavigator-usa.com/Article/2020/08/07/Online-grocery-usership-settles-into-new-normal-finds-Chicory-survey)。これまでは、実店舗の巨大なネットワークを武器にウォルマートが大きなシェアを占めていましたが、インスタカートがここに来て急成長を遂げたのです。例えば、既存第2四半期から第3四半期にかけてでは、インスタカートは+14.22%の成長を見せています。この市場調査を行ったレポートでは、インスタカートの成功は、1つのブランドに限定することなく、さまざまな小売業者を利用できるというビジネスモデルに起因していると考察しています。

現在、多くの企業が食品や日用品のオンライン宅配市場に参入していますが、その中で競合企業に打ち勝てるかどうかは、以下に消費者のニーズに寄り添えるかというところが大きいでしょう。中には急激に発生したニーズに応えきれず、顧客満足度の低下、消費者離れにつながることもあり得ます。注文が急増するなかでも安定的に商品を届けられる事業者は消費者の信頼を得て、パンデミック収束後も事業を継続・成長させられると言えるのです。

5.今後の展望と日本企業の参入について
COVID-19の猛威により、従来の店頭での買い物を避け、オンラインでの注文、自宅への配送サービスを利用する人が増えています。これまでは、便利な新しいサービスという位置づけにあったものが、生活に欠かせないサービスへと立ち位置を変えてきたとも言えます。いまもなお世界はCOVID-19と戦っており、今後もこのようなサービスへの需要の高さは続くことでしょう。

そして、一旦オンライン宅配サービスに馴染み、利便性を実感した消費者は、COVID-19のパンデミックが終焉した後も利用を続けることが予想されます。つまり、本サービスは長期的なビジネス市場として捉えることができます。一方で、成長が見込める市場として、参入企業が続々と登場していることも事実です。今後は、他の競合企業との差別化を図るためのオリジナルの商品展開や、きめ細かいカスタマーサービスなどを提供することが成功の鍵と言えるでしょう。

日本企業が本サービス関連で海外進出を考える場合、アメリカではWalmartやAmazonなどの大手企業が既に参入していることを考慮する必要があります。日本の企業が海外展開として全く新しいサービスをゼロから構築するのはなかなか難しいものでしょう。そこで、既存の大手企業と提携し、プラットフォームの構築や、カスタマーサービスなどのソフト面で海外進出を始めることも一つのアイデアです。まずは、提携という形で海外進出の基盤を作り、その後独自のサービスとして差別化、独立化していくという基本的な手法は、この分野にも当てはまるように思います。

本稿がアメリカでのオンライン宅配市場に参入しようとする企業様のお役に立てますと幸いです。タンデムスプリントグループでは、日本企業によるオンラインサービスへの参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

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