2021.3.30
海外営業支援

アメリカでは一般的なバックグラウンドチェック -注目のスタートアップ企業や業界のトレンドを紹介-

1.はじめに
アメリカでは採用の際に「バックグラウンドチェック(Background Check)」というプロセスを企業側が行なうことが一般的です。バックグラウンドチェックは身元調査ということもでき、基本的には個人に関する情報をまとめたものであり、仕事の適格性を判断する際に考慮されます。

National Association of Professional Background Screenersによる2019年の調査(https://pubs.thepbsa.org/pub.cfm?id=2E440D2A-E020-605B-1A29-F3FFBDDEEA21)では、米国内の雇用主の96%が、何らかのバックグラウンドチェックを実施していることが示されました。リモートでの採用やグローバル人材の採用など、ますます多様化する労働力を背景に、安心して人材を確保するために重要性が増しているプロセスとも考えられるでしょう。

本稿では、このようなバックグラウンドチェックの概要と、アメリカで注目されているバックグラウンドチェックサービス企業を紹介していきます。バックグラウンドチェックはあらゆる業種で採用されており、ビジネス全体のトレンドを反映しているともいえます。バックグラウンドチェック自体のトレンドや、注目の新サービスについて知り、日本企業の方が海外進出・海外展開される際の参考にしていただけますと幸いです。

2.バックグラウンドチェックの概要
2−1.バックグラウンドチェックとは

バックグラウンドチェックとは、職歴や学歴、犯罪歴やファイナンシャルヒストリーなどを、専門の調査会社を通して調べるもので、選考過程で用いられます。ただし、企業がバックグラウンドチェックを行なう際には、例えば下記のようなコンプライアンスを遵守していることが必要です。

まず、公正信用報告法(Fair Credit Reporting Act:FCRA)では、企業側はバックグラウンドチェックをする前、実施の旨を採用候補者に通知し、書面による同意をとる必要があります。また、雇用機会均等委員会(the Equal Employment Opportunity Commission :EEOC)では、バックグラウンドチェックについての具体的なルールを定めています。この中では、前科があれば一律に採用禁止というような選別をするのではなく、業務の内容と照らし合わせて、それに不適格だと合理的に考えられる前科に限定して採用の検討材料にすべきとされています。

このため、バックグラウンドチェックの実施は、企業の危機管理上非常に重要ではありますが、ルールに沿って実施することに留意しましょう。そして、身元調査の代行会社を利用する際には、コンプライアンスを遵守した信頼できるビジネスとなっているか確認することが大切です。

バックグラウンド調査では、サービス提供企業によって調査項目が異なります。雇用前のスクリーニング項目としては下記のものが一般的です。

・社会保障番号
・住所履歴
・犯罪歴
・市民記録
・性犯罪者登録検索
・国内ウォッチリスト検索
・グローバルウォッチリスト検索
・雇用確認
・教育履歴の検証
・プロフェッショナルライセンスの検証
・ソーシャルメディア検索
・自動車レポート
・信用報告書
・労働者災害補償履歴検索
・薬物検査
・本人確認

2−2.バックグラウンドチェックのメリット

企業にとって、採用候補者にあらかじめバックグラウンドチェックを行なうことの一番の利点は、安全性の向上といえるでしょう。他の従業員や顧客を危険から守ったり、会社の損失や名誉を傷つける行為を事前に事前や防ぐために、採用過程では欠かせないものです。
例えば、医療系など専門的な知識や資格が必要な業種で、不適切な人を採用してしまうと、後々トラブルとなったり、顧客を危険に晒してしまったりする可能性があります。また、最近では学歴詐称も問題となっています。ある調査では雇用主の23%がバックグラウンドチェックの過程で、採用候補者の教育資格に不正確な申告が見つかったというデータもあります。(https://img.en25.com/Web/HireRightInc/%7B4e41d88e-c1d8-4112-9cfb-431461d4018b%7D_2018_HireRight-Employment-Screening-Benchmark-Report_12-FINAL.pdf)。

2−3.トレンド

バックグラウンドチェックで重視される項目は、世論やビジネストレンドを反映します。具体的には、独立請負業者、デジタル統合、薬物とアルコールのテスト、継続的な従業員の監視などの傾向が予想されています。

特に、Uberなどの配達サービスなどのギグエコノミーの仕事が増えるにつれ、オンデマンド型のバックグラウンドチェックの必要性が高まっています。雇用主はフリーランスの労働者についても、正社員の採用と同じように、バックグラウンドチェックサービスを使用して候補者を選別しています。これは、フリーランスの労働者であっても、ブランドの看板を掲げている限りは、ブランドの評価を左右する重要な要素となるためです。

また、2020年には新型コロナウイルスの影響もあり、デジタル化されたサービスに注目が集まっています。2020年の春以降、従業員の多くが突然リモート作業環境への切り替えを余儀なくされ、その影響は2021年になっても継続しています。その結果、電子署名機能など、ペーパーレス機能を備えたデジタルのバックグラウンドチェックフォームが必要になりました。さらに、バックグラウンドチェックサービスを採用管理システム(ATS)と統合するなど、採用プロセスに自動的に組み込むパッケージ型のサービスが人気となっているのです。

その他、2021年には、薬物とアルコールの検査の増加、および継続的な従業員の監視需要の増加が予想されています。リモート勤務が継続する中で、雇用主は、自宅から離れた場所にいる労働者の行動を管理する必要があり、在宅勤務の従業員の薬物およびアルコール検査を実施しているところも増えているのです。継続的な従業員の監視では、雇用前の最初のスクリーニング後、就業後の最新情報を入手することにより、雇用主がリスクを軽減するのに役立ちます。

3.注目のスタートアップや公共プロジェクト事例
ここではバックグラウンドチェックサービスを展開している注目のスタートアップ企業を紹介します。

3−1.AIを利用した身元調査プラットフォーム「Checkr」
https://checkr.com/

2014年にカリフォルニア州サンフランシスコで創立されたCheckrは自動化された身元調査を企業に提供し、既存のオンボーディングワークフローに簡単に統合できるようにするサービスを提供しています。Checkrのプラットフォームを使用すると、企業はオンラインフォームを介して、またはAPIを採用システムと統合することにより、採用候補者を精査できます。 同社は、社会保障番号の検証、住所履歴、性犯罪者の検索、テロリストの監視リストや国家犯罪データベースに対するチェックなど、一連の項目に対応しています。

3−2.候補者の身元調査ソリューション「Truework」
https://www.truework.com/

2017年にカリフォルニア州サンフランシスコで創立されたTrueworkは、候補者の身元調査ソリューションを企業に提供しています。Trueworkのユーザーは検証プロセスを自動化し、雇用や収入などの情報を簡単に検証できるようになるのです。採用時のバックグラウンドチェックだけでなく、ローンの申し込みや住宅購入の際の身元調査として導入している金融機関もあります。

3−3.ソーシャルメディアとデジタルフットプリントのチェックを行なう「Fama」
(https://fama.io/)

2015年にカリフォルニア州ロサンゼルスで創立されたFamaはクラウドベースのSaaSプラットフォームです。候補者のソーシャルメディアやデジタルフットプリントに関する洞察を雇用主に提供します。 人工知能、機械学習、人間ベースの組み合わせにより、偏見、違法薬物、差別的行動、または企業に悪影響を与える「カスタマイズされたリスク」に関する示唆を自動的に表示してくれます。

4.海外進出・海外展開への影響
従業員を採用する際に重視すべき点は、時代によっても業界によっても変化します。そのため、各企業のニーズに合わせて包括的なバックグラウンドチェックのオプションを提供してくれるサービスが必要とされているのです。企業が自分たちでスクリーニングを行なうことも可能ですが、それぞれのオンラインデータベースをひとつひとつ検索する必要があり、これは非常に手間も時間もかかる作業となります。そこで、現在では、必要な項目を一括でスクリーニングしてくれる包括的なバックグラウンドチェックビジネスの導入が一般的となっているのです。

適切なバックグラウンドチェックを行なうことで、法令遵守に従い、優良な従業員を雇用し、会社の評判を高めるのに役立ちます。また、最新のソリューションでは、機械学習などを活用して採用に関する的確なアドバイスまで提供してくれるものもあります。このようなサービスを使えば、専門知識がなくても従業員の選考を効果的に行なうことができるでしょう。

海外展開・海外進出を考えている日本企業の方は、バックグラウンドチェックビジネスについて馴染みがないかもしれません。しかし、アメリカでは欠かせない採用プロセスのひとつです。海外進出をし、現地で採用する際には、手軽に優秀な人材を確保するために不可欠なプロセスとなるでしょう。

また、AIや機械学習などのソフトウェアをバックグラウンドチェックに応用して、新しいサービスとして海外展開を行うことも考えられます。今後も需要が高いと考えられるビジネス分野であり、ビジネスチャンスとしても注目されています。

タンデムスプリントグループでは、日本企業による海外事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

2021.3.30
海外営業支援

アメリカの遠隔医療分野の市場トレンドと注目ビジネス事例

1.はじめに
テクノロジーの発展とともに、新しいビジネスが次々と生まれています。遠隔医療の分野もそのひとつです。遠隔医療とは、デジタル技術を活用し、リモートでの医療相談や患者の健康状態のモニタリングをするものであり、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大とともに需要が急増しました。

遠隔医療というとごく最近登場したイメージがあるかもしれませんが、実はアメリカの遠隔医療の歴史は1990年代までさかのぼります(アメリカ遠隔医療学会(American Telemedicine Association:ATA)は1993年創設)。国土が広大であるアメリカでは、自宅の近くで医療機関にかかることが難しい人も多く、遠隔医療が受け入れられやすい土壌があったのです。

遠隔医療といってもその内容は多岐に渡ります。新規患者に対して病院訪問前のスクリーニングとして行なう場合もあれば、定期的なケアが必要な慢性患者の確認や処方箋のために行なうこともあります。本稿では、アメリカにおける遠隔医療分野の市場トレンドについて説明するとともに、新しいサービス事例を紹介していきます。

日本の遠隔診療も近年大きく進んでいます。以前は画像診断サービスなど限定的な内容だったものが、かかりつけ医機能という身近なものになってきているのです。実際に、2018年には、再診限定でオンライン診療による保険診療が認められ、2020年4月には時限的・特例的な措置として初診でのオンライン診療も保険適用ができるようになりました。技術の進歩と法的緩和により、日本でも遠隔医療への関心が急速に高まっているといえます。

COVID-19が世界中の国々で広がり続けている中で、最新のテクノロジーを用いて新しいサービスを開発するスタートアップや、遠隔医療分野に参入する大手企業も目立ってきています。遠隔医療ビジネスでは医療機関、患者、保険担当など、立場によって様々なサービスが求められます。汎用型のツールやプラットフォームを生み出すことができれば、国内展開だけではなく、海外進出も大いに期待できるでしょう。本稿の内容を参考に、現在話題の新ビジネスについて知っていただき、日本企業の方が海外進出・海外展開される際の、参考にしていただけますと幸いです。

2.市場トレンド
COVID-19のパンデミックをきっかけに、ビデオ会議の利便性に多くの人が気づき、急速に普及しました。それと同様のことが、遠隔医療についてもいえます。COVID-19のパンデミックの直後から消費者は遠隔医療を積極的に利用するようになったことが数値にも現れています。アメリカで遠隔医療を利用したことのある成人の割合は2020年2月の時点では11%でしたが、翌月2020年3月には17%へと急増しました。そして、2020年8月には36%に達するまで上昇し続けたのです(https://civicscience.com/telemedicine-adoption-stagnant-for-first-time-during-pandemic-in-august/)。

さらに、ラリーヘルス社による予防治療に関する調査(https://www.rallyhealth.com/preventive-care-in-america-survey-2020)では、アメリカ人の3人に1人が、COVID-19が収まったとしても、可能であれば遠隔医療を継続したいと答えました。つまり、急激に需要が拡大した米国の遠隔医療市場は衰退することなく、このまま成長を続けると期待できるのです。

実際、Global Market Insightsのデータによると、過去10年間で、遠隔医療は455億ドルの市場規模にまで成長しました。そして、今後2026年までにほぼ4倍の1,750億ドルを超える市場規模になるだろうと予測されています(https://www.gminsights.com/industry-analysis/telemedicine-market)。また、American Telemedicine Associationは、2030年までに米国の医療サービスの半数が遠隔で実施されると予測しています(https://info.americantelemed.org/ata-action-briefs_healthcare-consumerization)。

3.遠隔医療分野で注目のビジネス事例
ここでは遠隔医療分野で注目の米国スタートアップ企業や大手企業の市場参入事例を紹介します。

3−1.非同期遠隔医療を提供する「Synapse Healthcare Solutions」
http://synapsesolutions.com/

ストア&フォワード方式とは、中継局を介して電気通信を行う場合に、情報を中継地点で一旦蓄積して、その後最終目的地あるいは別の中継局にそれを転送する方式を指します。ストア&フォワード方式を利用すれば、医療提供者は、安全なプラットフォームを使用して、患者の医療データを別の場所にある医療提供者と共有および転送できます。また、医師と患者がリアルタイムで通信する必要がないため、非同期遠隔医療が可能になるのです。 つまり、医師は他の医療機関との連携を強化することで患者の病歴をよりよく理解し、重複する検査など不要なステップを排除するとともに、複数の薬局情報を統合し適切な投薬管理を促進することもできるのです。

2015年に米国バージニア州で創立されたSynapseHealthcare Solutionsは、病院やその他の医療施設にメンタルヘルスサービスと神経学的ケアを提供しています。同社はリアルタイムのストア&フォワード方式テクノロジーを使用しており、特に地方やサービスの行き届いていない地域に対して、専門的なコンサルティングを提供しています。同社のソリューションは、脳卒中の治療など、迅速な対応が不可欠な場合にも非常に役立ちます。

3−2.自己診断ツール「AssayMe」
https://assayme.cc/

自宅での医療検査を可能にする自己診断デバイスとツールは、いつでもどこでも、という利便性、健康状態というプライバシーへの配慮、迅速な結果受け取りなどのさまざまな利点を提供します。このような診断テストを提供するサービスの基本的な流れは、患者が自らサンプルを収集し、そのサンプル結果を読み取るテストキットを利用し、またはサンプルをラボに郵送して分析してもらうという形になります。これにより、医療スタッフは病気の治療が必要かどうかの診断にかかる時間を短縮し、今すぐ診療や治療が必要な患者に専念することができるのです。また、自己診断が普及すれば、これは患者に貴重な情報を提供し、患者が早期に医学的介入を求めることを可能にし、合併症などへの重症化を防ぐことも期待できるでしょう。

2019年米国ニューヨーク州で創立されたスタートアップAssayMeは、在宅尿検査に基づくデジタル健康診断プラットフォームを提供しています。アプリでは試験紙をスキャンし、試薬の変色を分析してテスト結果を表示します。次に、10種類のヘルス指標に基づいた平均ヘルススコアを提供します。このプラットフォームを利用することで、ユーザーは、糖尿病、女性の健康、ケトに焦点を当てた食事、その他一般的な健康状態など、さまざまな医学的問題に関する推奨事項を得ることができるのです。

3−3.処方箋薬の配達サービス「Amazon Pharmacy」
http://amazon.com/pharmacy

2020年11月、米大手小売企業Amazonは「Amazon Pharmacy」という処方箋薬の配達サービス事業を立ち上げました。Amazon Pharmacyは、顧客のモバイル端末から処方箋薬のオンライン注文を受け付けて発送するサービスで、顧客はAmazonのサービスを通じて保険情報の追加や処方箋の管理、支払い方法の選択などができます。

実は、近年Amazonは食品事業の拡大を積極的に推し進めてきました。具体的には、Amazon Fresh、Whole Foods、そして従来のAmazonマーケットプレイス上での食品展開です。そして、この度、薬局事業にも進出することでワンストップショップとして顧客の囲い込みを目論んでいるといわれています。

実生活の中で薬局での買い物と食料品の買い物は密接に関係するものです。薬局で食料品を扱っていることも、食料品スーパーの一角に薬局を設けていることが多いことからもこの関係性は裏付けられます。Amazonでは、顧客がAmazonだけを使用して買い物のニーズを満たすことができるような完全サービスを提供しようとしているといえるでしょう。

Amazon Pharmacyでは基本サービスに加え、Prime会員向けの限定サービスも提供しています。Prime会員あれば、無料の2日以内配達を無制限で利用できる他、保険を使わずに処方箋薬を購入する際には割引を受けられるのです。Amazonによる声明では、Primeでの処方薬購入では、保険なしで支払うときにジェネリック薬で最大80%、主要ブランドの医薬品では最大40%の割引を受けられると話しています。

また、Amazonでは2019年より従業員向けに対面あるいは遠隔での医療サービス「Amazon Care」を提供しています。このサービスは現段階では福利厚生の一部として自社の従業員のみを対象としていますが、今後、一般向けの遠隔医療市場へと拡大していく可能性も大いにあるでしょう。

4.海外進出・海外展開への影響
医療費が高額なアメリカでは、医療費負担を懸念して、重症化してギリギリになるまで医療機関を利用しない人も多いことが、国レベルでの問題となっています。その点からも、比較的費用が安い遠隔医療は歓迎され、今後普及が一層進むと考えられます。

新しいテクノロジーを活用したスタートアップ企業はもちろんのこと、大手企業も遠隔医療市場に参入を始めています。このトレンドは海外進出・海外展開を考えている日本企業にとっても大きなビジネスチャンスとして注目できるものです。

遠隔医療ではそのプラットフォームや、検査キットを利用した自宅での検査システム、健康状態のモニタリングシステムなど、様々な分野でのビジネスアイデアが求められます。現在開拓途上のビジネス分野ですので、ニッチな分野を開拓しその第一人者になれれば、国内市場だけではなく、海外市場に置いても成功を収めることができる可能性があります。

タンデムスプリントグループでは、日本企業による海外事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

2021.3.11
海外営業支援

アメリカで注目される持続可能性をコンセプトにした安価な住宅づくりとは

1.はじめに
アメリカでは都市部を中心とした住宅価格の高騰とそれに伴うホームレスの増加が問題となっています。例えば、カリフォルニア州サンフランシスコでは近年、テック産業の好況と連動するように住宅費が高騰し、社会問題となりました。2014年の時点で、サンフランシスコの1ベッドルーム賃料中央値は月3,000ドルを超えており、ニューヨークを抜いて全米一家賃の高い都市となっていました。2019年6月には同賃料中央値は過去最高の3,700ドルまで上昇し、2020年4月には3,500ドル前後となっています。このような賃料高騰を受けて、家を失う人が増加、手頃な価格の住宅の必要性が叫ばれるようになったのです。

さらに、新型コロナウイルスが発生し、アメリカの住宅危機がより顕在化するようになりました。多くのアメリカ人が職を失う中、手頃な価格で安全で快適な家へのアクセスを保証し、エネルギー料金(月々の光熱費)を下げることが重要となっているのです。

本稿では、このようなトレンドを受けて注目されている持続可能性をコンセプトにした住宅の具体的なメリットと、そのような住宅を開発しているスタートアップ企業を紹介していきます。

土地に限りのある日本には、コンパクトでありながら快適な家造りのノウハウがたくさんあります。このようなノウハウを利用すれば、ソフト面ハード面両方から海外進出する大きな追い風となることでしょう。本稿の内容を参考に、日本企業の方が海外進出・海外展開される際の参考にしていただけますと幸いです。

2.持続可能性をコンセプトにした住宅のメリット
2−1.廃棄物の削減

持続可能性を考慮した住宅では、廃棄物となるような資材をできる限り少なくしています。実は廃棄物の問題は、住環境の悪いエリアで特に深刻な問題です。建設廃棄物や解体廃棄物は、低所得地域においては適切な処理がないがしろにされており、不法投棄や不適切管理が頻発しているのです。この結果、その地域の人々に健康上のリスクの問題を引き起こし、また環境保存の点でも汚染や海洋ごみの発生などにつながっています。

持続可能的な住宅では、リサイクル可能な資材を使うことで、ゴミの発生を抑制することが可能です。解体後も新しいプロジェクトに再利用できる可能性が高くなるでしょう。

2−2.省エネ

国際エネルギー機関(International Energy Agency:IEA)によると、商業用および住宅用の建物が世界のエネルギーの約3分の1を消費していると報告されています(https://www.esmap.org/sites/esmap.org/files/DocumentLibrary/ESMAP_Energy_Efficient_MayoralNote_2014.pdf)。建物の中では、暖房、冷房、換気、照明、給湯、調理などに多くのエネルギーが使用されており、この累積は膨大な量となっているのです。持続可能性の高い住宅では、エネルギー効率の高さが特徴です。少ないエネルギーで高いパフォーマンスを示す住宅では、光熱費などの運用コストが低くなります。

例えば電気に関して見ると、省エネ効率の高い仕組みを取り入れたり、ソーラーパネルの導入が例として挙げられます。太陽光発電のような自宅で電気を発生させる仕組みがあれば、運用コストを節約するだけでなく、電力を販売することで収入源を生み出すこともできるのです。

更に、中水使用(中水:水洗トイレの用水など、飲用に適さないが雑用などに使用される水道)や低流量のトイレ、シャワー、シンクを組み込むことで、水の節約にもつながります。水を再利用して節約することで、水道料金を低く抑えることはもちろん、環境面でのメリットも高くなるでしょう。

2−3.建設工事そのものの効率化

新しいタイプの住宅ではモジュール式の建築工事が多く取り入れられています。従来の建築では、資材を建設現場へ搬入し、その場で技術者資材の加工や組み立てを行なうものでした。その結果、廃棄物も多く、非効率で複雑な建設スケジュールになりがちだったのです。

一方、モジュール建築では、従来の建築方式とは異なる自動組立ラインのアプローチが採用されています。資材の加工や組立は基本的に工場で行われ、それらは別々のモジュールとして建設現場に到着するのです。そして、建築現場ではブロックを組み立てるような形で住宅が完成します。このおかげで、従来の住宅を建てるのにかかる時間よりも短い時間で済みます。

全米住宅建設業者協会 (National Association of Home Builders: NAHB) の調査によると、アメリカの標準的な2000平方フィート(約186平米)の住宅1軒の建設には約 8,000ポンド(約3,600㎏)の廃棄物が生じとされています(https://greenbuildingelements.com/2009/01/08/home-constructions-dirty-secret-8000-lbs-of-waste-per-2000-square-foot-house/。モジュール建築で利用される管理の行き届いた工場環境では、こうした廃棄物を大幅に削減できるのです。これは余剰材料を他のプロセスへとリサイクルすることができるとともに、管理された保管庫では風雨などによる材料へのダメージを防ぐことができるためです。

以上のように、持続可能な住宅には様々なメリットがあります。持続可能なデザインでは、健康、コミュニティ、エネルギー効率、美学、快適さのあらゆる面を考慮した、より包括的なアプローチを採用されているためです。結果として、高品質で手頃な価格の家を作ることができ、低所得の人々にとって歓迎されています。さらに、エネルギー効率の高い物件は、光熱費も安くなります。持続可能な住宅は、資源を節約するだけでなく、住民にも生活の質の利益をもたらすのです。

3.注目のスタートアップや公共プロジェクト事例
ここでは持続可能な新しい住宅を展開している注目のスタートアップ企業やプロジェクトを紹介します。

3−1.ニューヨークの集合住宅事業(https://www.tcbinc.org/)

ニューヨーク州ニューヨーク市ブロンクス区は、「治安の悪さ」や「貧困」が問題となっている地域です。低所得者用公団アパートも多くありますが、そのほとんどはあまり良い環境とはいえません。近年、同地区のコミュニティ改善を目的とした集合住宅開発プロジェクトが進んでいます。

例えば、コミュニティビルダーではパークヘブンという新しい集合住宅プロジェクトを始めており、178ユニットの手頃な価格の住宅開発を進めています(
https://www.tcbinc.org/where-we-work/pipeline/item/5084-park-haven.html)
これは、低所得の賃貸人に高品質で持続可能な設計の住宅を提供することを目的とするものです。パークヘブンでは、高性能ビルを採用しており、エネルギー回収換気システムが継続的にろ過された新鮮な空気を提供する、従来の換気システムより優れた空気品質の提供が注目されています。ブロンクス区では喘息の発生率が全国平均よりも高くなっており、優れた換気システムの採用によって、住民の健康と福祉が大きく改善されることが期待されているのです。

3−2.OBY(http://www.tonal.com/)

サンフランシスコベイエリアのスタートアップ企業OBYは、この地域の長年にわたる住宅危機を解決する方法について新しいアイデアを提案しています。OBYは「Our Backyard:私たちの裏庭」という意味が込められており、小さな家を使って、気候変動と手頃な価格の住宅不足に同時に立ち向かうことを目指しています。

OBYでは住宅所有者の裏庭に小さな家を建て、それを市場価格を下回る価格で賃貸します。住宅建築やあらゆる手続きはOBYが代行し、住宅所有者には賃貸収入を提供するのです。具体的には、OBYはまず住宅所有者と賃貸契約を結びます。その後、裏庭の限られたスペースに収まるような小さな2ベッドルームの家を設計し、許可を取得して建設するのです。そして、そこに入居するテナントを見つけます。

OBYが提案する小さな家は、ゼロネットカーボンを目指しており、暖房、お湯、調理などのエネルギー源となるソーラーパネルなど、多くの持続可能な機能を備えています。デザインはシンプルで、住宅はモジュール式のプレハブシステムで建設されます。

3−3.ICON(https://www.iconbuild.com/)

アメリカテキサス州オースティンで2018年に設立された企業ICONは、3Dプリント住宅という全く新しいコンセプトを持つスタートアップ企業です。ICONでは3Dプリント技術を住宅に利用することで、従来の工法の数分の1のコストかつ約1日という超短期間で完成するコンパクト住宅を設計しています。実際、同社は2018年に24時間で350平方フィートの住宅を10,000ドルで印刷することに成功しました。

ICONの最新型3Dプリンター「Vulcanll」は市場購入可能な段階に達しています。オースティンに本拠を置くCieloProperty Groupでは、このプリンターを使用して、Community FirstVillageに元ホームレスのための家を建設しています(https://mlf.org/community-first/)。また、発展途上国で困窮している家族のための住宅建設を進めている非営利団体であるNewStoryは、このテクノロジーを使用してラテンアメリカに50戸の住宅を建設しました(https://newstorycharity.org/)。

4.海外進出・海外展開への影響
手頃な価格の住宅の確保は、サンフランシスコやニューヨークなどのアメリカ大都市だけでなく、世界中の多くの都市で深刻な問題となっています。大きな問題となっているからこそ、ビジネスチャンスとして注目することもできるのです。海外マーケットを視野に入れている日本企業の方は、このトレンドを逃さず、海外進出・海外展開への足がかりとしてみてはいかがでしょうか。

日本の建築技術には古からの知恵が詰まっており、最新の技術と融合することで新しいビジネスへの飛躍させることもできるでしょう。また、コンパクトな住宅は日本でよくあるものですので、そのノウハウを海外展開することも可能です。ハード面での進出だけでなく、アイディアをソフト面で活用することも考えてみると良いでしょう。

タンデムスプリントグループでは、日本企業による海外事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

2021.2.15
海外営業支援

アメリカで需要が高まるバーチャルトレーニング :フィットネスの新しいビジネストレンドとは

1.はじめに
2020年、新型コロナウィルスの影響により、多くのフィットネスビジネスが混乱に陥りました。2020年3月には、アメリカ各地でロックダウンが始まり、フィットネスクラブも閉鎖を余儀なくされたのです。

しかしながら、現在では、新しいフィットネスビジネスの形で再スタートを切ろうとしています。例えば、オンラインでフィットネスクラスを開催したり、自宅にジムと同じような設備を用意したりと、安全に運動を楽しむための工夫が考え出されているのです。2021年のフィットネスビジネスの柱は、利便性、安全性、モバイル性の3つに特徴付けられるといえるでしょう。

このようなトレンドは海外進出を考えている日本企業にとっても追い風です。オンラインベースであれば、日本から海外展開する際のハードルが一段下がります。海外ではまだメジャーになっていない日本的なスポーツなど、海外進出の可能性は様々でしょう。

本稿ではアメリカを中心にフィットネスビジネスの現況について紹介するとともに、トレンドの変化で成功した企業と、苦境に陥った企業の違いについても説明します。また、話題のスタートアップ企業についても紹介していますので、今後のビジネス展開の参考にしていただけますと幸いです。

2.アメリカにおけるフィットネスビジネスのトレンド
アメリカ各地でロックダウンが始まり、人々が自宅で過ごさなければならなくなった時、さまざまなフィットネス商品が大規模な売上高増加を示しました。アメリカの大手スポーツ用品店Dick’s Sporting Goodsによると、既存店売上高は直近の四半期に2桁急増を示したとのことです。これは、同社が約20年前に上場して以降、最高の業績となりました。

アメリカの老舗市場調査会社、NPDグループ(https://www.npd.com/)の小売データによると、健康およびフィットネス機器の収益は2020年3月から2020年10月にかけて2倍以上に増加し、23億ドルを記録しました。例えば、トレッドミルの売り上げは135%急増し、エアロバイクの売り上げはほぼ3倍になるなど、在庫切れが多発したのです。この傾向は季節が冬に変わっても継続しており、春と夏では自転車とカヤックの購入が急増したのと同様、季節が冬に近づくと、クロスカントリースキー、スノーシュー、アウターウェアなどのウィンタースポーツグッズの売上増が見られています。

次に、フィットネスクラブについても見ていきましょう。

パンデミックが発生して以来、多くのフィットネスクラブで会員数が減少し、一部企業は破産(Chapter 11)申請をすることになりました。例えば、Gold’s Gym、24 Hour Fitness、Town Sports International Holdings(New York Sports Clubsの運営母体)などが例に挙げられます。

一方で、自宅でのトレーニング需要の増加に上手く対応できたフィットネスクラブは、利益を維持しています。例えば、高級ジムの代表格EQUINOXや格安フィットネスジムの大手チェーンPlanet Fitnessにおいては、それぞれのジムの客層は異なるものの、両者ともジムの閉鎖に機敏に対応した点で共通しています。両者とも、ジムの物理的な閉鎖が決まった直後に、独自のワークアウトアプリをリリースし、会員の保持に成功したのです。

実は、フィットネスジムのデジタル化の傾向は新型コロナウィルス前から進んでいました。それがここに来て急速に広まり、流れに乗れなかったビジネスが淘汰され、デジタル化を上手く推進できたビジネスへの集中や、新しいビジネスの台頭に取って代わっているのです。

3.フィットネス業界で注目のスタートアップ事例
ここではフィットネス業界に最新の技術を導入している注目のスタートアップ企業を紹介します。

3−1.Mirror (https://www.mirror.co/)

Mirrorは2016年にニューヨークで設立されました。その後、2020年6月29日にLululemonに5億ドルで買収されています。

Mirrorは、コネクテッドデバイスを用いたフィットネスシステムを展開しています。洗練されたレスポンシブディスプレイを介して、ライブクラスとオンデマンドクラスを在宅のユーザーにストリーミング配信しています。 ミラー型のコネクテッドデバイスがユーザーの動きや体を分析し、リアルタイムにパーソナライズ化されたフィードバックをユーザーに提供します。そのフィードバックに合わせて、ユーザーはカーディオ、筋力トレーニング、ヨガなど、さまざまなジャンルのクラスの中から適したものを選択することができます。

3−2.Tonal(http://www.tonal.com/

Tonalはカリフォルニア州サンフランシスコで、2015年に設立されました。Tonalは自宅での筋力トレーニングをサポートするプラットフォームであり、人工知能と専門家主導のコーチングを使用しているところが特徴です。

Tonalでは専用のトレーニング機器の製造も自ら手掛けており、ユーザーはTonal専用の機器を壁に設置して、トレーニングを行ないます。個々の要件に基づいて、筋肉の強化や、バランス調整、などのトレーニング計画および、コーチによるライブクラスの配信を提供することで、自宅にいながらクオリティの高い本格的なトレーニングができると人気となっています。

3−3.Kanthaka (https://mykanthaka.com/)

Kanthakaは2016年にヒューストンで設立されました。これはユーザーとパーソナルトレーナーをオンデマンドにつなぐモバイルアプリです。

ユーザーがトレーニングを行いたい場所と日時を指定すると、その条件にマッチしたトレーナーの写真、経歴、認定資格、レビューが表示されます。トレーニングはインストラクターとの1対1のセッションを対面で行なうことも、オンラインで行なうこともできます。トレーニングの内容は記録されるので、次回以降インストラクターが変わったとしても、中断したところから効率的に再開することが可能です。トレーニンへの支払いはアプリを介して行われます。

3−4.EnvisionBody(https://www.envisionbody.com/

2013年に設立されたEnvisionBodyは、運動に応じて画像を変換できる技術について3つの特許を取得しています。同社では、心拍数センサー、コンピュータービジョン、人工知能からのデータを使用して、現在の体型とトレーニングへの取り組みに最適なトレーニングを提供する拡張現実ソフトウェアを開発しています。光学追跡により、ユーザーの画像をキャプチャし、ARアプリケーションを介して処理し、ユーザーの拡張画像を画面に表示します。世界最大のテクノロジー見本市CES2020でも話題となった注目のスタートアップです。

3−5.Peloton (http://www.onepeloton.com/)

Pelotonは2012年にニューヨークで設立されました。デザイン性と最新のテクノロジーを融合させた高価なフィットネスマシンと、世界的なインストラクターが率いるライブフィットネスクラスの配信で非常に勢いある企業です。2020年12月には、世界最大の業務用フィットネスマシンサプライヤーのひとつであるPrecorを買収する意向を発表しました。

Pelotonではサブスクリプション型のサービスを提供しており、基本的な仕組みとしては最初にPelotonオリジナルのバイクあるいはトレッドミルを購入し、その後は月額39ドルでオンデマンド型のフィットネスクラスを視聴しながら運動します。世界的に有名なカリスマインストラクターによりレッスン映像の配信が人気となっており、ライブレッスンでは他の参加者とリアルタイムで順位を競い合うこともできます。

4.海外進出・海外展開への影響
今後、新型コロナウィルスのワクチン接種が進み、新型コロナウィルスの影響は落ち着いてくることが期待されています。その中で、ホームフィットネスビジネスはどうなるのでしょうか。

自宅用のフィットネス機器にお金をかけ、自宅でのエクササイズに慣れた消費者の一部は、フィットネスクラブに再び戻ることを躊躇する可能性があります。そのため、顧客の戻りを期待してただ耐え忍んでいたフィットネスクラブの先行きは明るいとはいえないでしょう。一方で、コロナ疲れと呼ばれる減少にも注目です。学校や仕事、そして余暇の時間も自宅で過ごすことの多くなった消費者の中には、オンライン環境にうんざりしているという人もいます。また自宅に本格的なフィットネスマシンを揃えるには費用がかかります。そのため、消費者によっては安価なフィットネスジムの方を好む場合あるのです。

つまり、将来的なトレンドとしては消費者に様々な選択肢を与えられるビジネスモデルが強いといえます。自宅で運動するのは便利ですが、人とあって直接交流したいという気持ちになることもあります。この傾向は、フィットネスビジネスに限定されるものではありません。様々な業界にオンライン化の波がきている中で、あえて以前のような実際に対面するサービスを恋しく思う消費者もいるのです。今後のビジネスではデジタルとアナログのバランスが重要であるといえるでしょう。

日本から海外進出を考えている企業の方は、このトレンドの変化に敏感に対応する必要があります。例えば、ビジネスの軸はオンラインとしながら、顧客が実際に目にしたり、手にしたりできる要素も残しておくことで、様々な需要に柔軟に対応できるようになります。

タンデムスプリントグループでは、日本企業による海外事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

2021.1.29
海外営業支援

アメリカEC業界の新トレンド「Try Before You Buy」

1.はじめに
世界的にEC業界の成長が続いていますが、海外ではEC業界の新しいトレンドとして「Try Before You Buy型」のサービスが続々と登場しています。これは消費者が製品を購入する前に試してみることができるサービスです。実店舗販売では一般的な試着サービスをオンライン販売にも導入した形ともいえるでしょう。

オンラインショッピングの一番の懸念は、試着ができないことでした。購入前に実物を手にすることがないので、イメージと異なる商品を受け取るかもしれないという不安がつきものだったのです。Try Before You Buy型のサービスであれば、このような不安を解消できます。

本稿ではアメリカを中心に広がるTry Before You Buy型のサービスの具体例やそのメリットについて紹介しています。日本から海外展開をする際には、ECサイトを通じた販路拡大は非常に有効です。そこに、Try Before You Buy型のサービスを導入すれば、購買力をさらに刺激することも可能でしょう。本稿の内容を海外進出成功のためのヒントにしていただけますと幸いです。

2.基本的な仕組み
Try Before You Buy型サービスの基本は購入する前に試せるということです。オンラインショッピングにおいても実店舗で行うのと同じように試着ができ、購入しない場合には、商品を無料で返送することができ、購入代金を支払う必要はありません。

Try Before You Buyを導入しているECサイトで商品を注文する際の手順は通常のオンラインショッピングと基本的に同じです。顧客はウェブサイトで商品を選択し、チェックアウト時に支払方法を指定(クレジットカード番号の入力等)します。しかし、すぐに決済されることはありません。

自宅に届いた商品を確認後、商品の購入をやめる場合には、指定の方法で期限内に返送すれば、商品代金は請求されません。購入を希望する(返品手続きをしない)場合には、注文時に指定していた支払い法で支払期日に代金が引落しされることが一般的です。

3.Try Before You Buy型のサービス事例
3−1.試着型
Warby Parker(https://www.warbyparker.com/
Warby Parkerは、2010年にニューヨークで創業したアイウェアブランドです。Warby Parkerでは、5組のメガネフレームを顧客に送付し、顧客自身がその中から好きなフレームを一つ選び、残りは返送するサービス「Home try-on」を展開しています。自宅での試着サービス先駆けとなったブランドです。

顧客は自分でメガネのフレームを選ぶことも出来ますし、アンケートに答えて、それを元にカスタマイズされたメガネフレームのセットを送ってもらうことも可能です。メガネを選ぶ際には、フレームタイプ、色、フィット感、そして素材など様々な選択肢があり、実際に装着してみないとわからないものです。Warby Parkerでは、顧客が自宅で複数のフレームを試すことができるので、手間を掛けずに納得のフレームを購入できることが好評となっています。

Casper(https://casper.com/
マットレスのオンライン直販で成功しているCasperは、2014年にニューヨークで設立された企業です。Casperでは、消費者が購入する前に新しいマットレスを100泊試してみることができる長期間のお試し期間を提供しています。さらに、同社はすべてのマットレスに送料無料、返品可能、10年間の限定保証も付帯させているのです。

Amazon Prime Wardrobe(https://www.amazon.com/prime-wardrobe/
世界最大のECプラットフォーム、アマゾンも試着サービスを展開しています。Amazon Prime Wardrobeは 衣料、靴、バッグなどを取り寄せ、試着後に、購入を決定した商品のみ代金を支払うサービスです。最大8点までの商品を受け取ってから最長で7日間無料で試せるので、気になる商品のサイズ違い、色違いなど、まとめて取り寄せることもできます。プライム会員であれば無料で利用でき、保持することを決定したものに対してのみ課金されます。

3−2.後払い型

BlackCart(https://blackcart.com/
BlackCartは、ECサイト向けのサービスで、BlackCartを使用したECサイトでは消費者に後払いオプションを提供することができます。

アメリカのECサイトでは送料無料で返品できることが多いのですが、通常の手続では、一旦支払いをして、その後に返金されることになります。通常、返金には一定の時間がかかるため、所持金が少ない顧客にとっては返品ができるとしても、試着代わりの気軽なオンラインショッピングは難しかったのです。

BlackCartを通した決済にすると、顧客は商品購入時にすぐに支払う必要はなく、一定の猶予期間を与えられます。その期間内に返品すれば全く所持金を減らすことなく、商品を試すことができるのです。

Klarna(https://www.klarna.com/us/)
スウェーデンで2005年に設立されたKlarnaも、前述のBlackCart同様、後払いサービスを提供する決済プラットフォームです。Klarnaを通じたオンライン注文であれば、顧客は実際に支払うまでに14日または30日の猶予期間を与えられます。

つまり、たくさんの服を配達してもらい、試着して、気に入らないものを返品して、保管した分だけ支払うことができるのです。資金不足の顧客にとって、返品がクレジット(返金)されるのを待つことなしに、次々とオンラインショッピングを試せるというメリットがあります。

3−3.サブスクリプション型

Stitch Fix(https://www.stitchfix.com/
Stitch Fixは2011年にカリフォルニア州で設立された企業で、オンラインパーソナルスタイリングサービスを提供しています。推奨アルゴリズムとデータサイエンスを使用して、サイズ、予算、スタイルに基づいて衣料品をパーソナライズすることが特徴です。

月額定期モデルとなっており、商品の受け取りには20ドルのスタイリング料金が必要となっています。顧客は一回に付きトータルスタイリングされた5つのアイテムを受け取り、それらを保持するか返品するかを決定することができます。すべての製品を保持すると、購入が25%オフになる特典があります。スタイリングの頻度は顧客自身で設定可能で、毎月、四半期ごと、または好みのタイミングにすることが可能です。

Birchbox(https://www.birchbox.com/
Birchboxは、ニューヨークに拠点を置くサブスクリプション型サービスで、化粧品やその他の美容関連製品の4〜5個のサンプルが入った箱を購読者に送るものです。パッケージの中身は、購読者の肌や髪のタイプなど、事前アンケートの回答に合わせてカスタマイズされています。Mac、Kiehl’s、Quaiなど、さまざまなブランドと提携しており、気に入ったサンプルはオンラインショップで通常サイズを購入することができます。

Adore me(https://www.adoreme.com/
Adore meは、毎月20ドルのスタイリングフィー(サービス料金)で、キュレーションされた下着類が入った「The Elite Box」と呼ばれる箱を届けけるサービスです。「The Elite Box」には30以上の幅広いブランドの中から5〜6個の下着や寝間着類が含まれており、顧客はその中から好きなものだけを保持し、不要なものは送り返すことができます。

4.Try Before You Buy型サービスのメリット
4−1.顧客満足度の向上
Try Before You Buy型サービスの一番のメリットは顧客満足度の向上でしょう。せっかく購入したものの、好みではない、サイズが合わないなどとなれば、そのブランドでの購入体験にマイナスのイメージが持たれてしまうものです。

一方、Try Before You Buy型サービスであれば、オンラインショッピングでありながら、店頭で試着するのと同じ感覚で様々なサイズや色を比較することができます。その結果、顧客は自分好みの商品を、納得の上で購入する体験を得ることになり、満足感につながります。

4−2.カスタマーインサイトの取得

顧客の好きなブランドや、商品購入で重視すること、ライフスタイルなどのような、顧客の趣向に関する情報は企業にとって事業戦略を立てる上で非常に役に立ちます。Try Before You Buy型サービスであれば、このような今後の商品開発や広告展開に活用できるカスタマーインサイトを手にすることができるのです。

Stitch Fixのように、顧客の好みをあらかじめヒアリングした上で、各顧客にカスタマイズされた商品を提供するタイプのTry Before You Buy型サービスでは特にこのメリットが大きくなります。また、購入前の事前アンケート以外にも、返品商品からも、カスタマーインサイト読み取ることは可能でしょう。

4−3.コンバージョン率の向上

オンラインショッピングにおいては、サイト上で素敵だと思ったとしても、実物はイメージと違うかもしれない、サイズが合わないかもしれないという不安から、顧客が購入を躊躇してしまうことがよくあります。Try Before You Buy型サービスであれば、顧客に合わなければ返品すれば良いという安心感がもたらされその結果、購買率が向上することを期待できるのです。また、元々買うつもりがなかったとしても、無料試着をきっかけに購入に踏み切ることもあります。

5.海外進出・海外展開への影響
オンラインショッピングの需要が高まる中、消費者はオンラインストアでの買い物においても、実店舗と同じレベルの体験を期待するようになってきています。Try Before You Buyと呼ばれる購入前の試着サービスはその期待に応えるための解決策として生まれ、海外のECサイトを中心に新しいトレンドとして広まりつつあるのです。今後、オンラインショッピングとリアル店舗との境界線がますます曖昧になり、オンラインショッピングでも実店舗での体験に近いもの、もしくはそれ以上の付加価値を体験できるようになってくることでしょう。

日本では、オンラインショッピングでの返品には手数料や送料の負担が必要なことが多くあります。しかしながら、アメリカのECサイトでは一部条件があるものの送料や返品が無料なことが多く、購入した商品の返品を比較的気軽に行える環境がすでに構築されています。

海外でのEC事業展開を検討している日本企業は、海外での競争力を確保するために、本稿で紹介したTry Before You buyサービスのトレンドを導入することも一つの手段となるでしょう。

タンデムスプリントグループでは、日本企業による海外事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

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