2022.1.27
海外営業支援

米国では電子廃棄物のリサイクルビジネスが活況〜米国スタートアップ事例とともに紹介〜

1.はじめに
ここ過去10年間で、IT関連事業は世界中で前例のない成長を遂げてきました。この驚異的な成長を支えたのは、日常生活向けの電子製品の開発と、それをあらゆる側面で採り入れる消費者の増加といえます。消費者需要の高まりに伴って、製品イノベーションへの投資の増加にもつながり、その結果、新しい製品が次々と発売され、製品のライフサイクルも短くなってきています。このような背景もあり、現在では大量の電子廃棄物の扱いが大きな課題となっています。

一方で、このような課題の解決は新しいビジネスチャンスということもできるでしょう。実際、電子廃棄物リサイクル関連の新しい事業が、米国では急増しており、投資家、起業家から注目のビジネス分野となっているのです。本稿では、電子廃棄物リサイクルビジネスのトレンドとともに、米国スタートアップ事例について紹介していきます。

米国の電子廃棄物リサイクルトレンドや先進的な企業の取り組みなどから、日本企業の海外進出成功へとつなげていただけますと幸いです。

2.電子廃棄物リサイクル事業を取り巻く環境
電子廃棄物(E-waste)とは、電子機器が耐用年数の終わりに達し、廃棄物となったものを指します。コンピューター、サーバー、モニター、タブレット、プリンター、携帯電話などが主要な電子廃棄物ですが、現在のテクノロジーがあふれる時代においては、家庭用電化製品やデバイス、おもちゃ、工具、音楽機器、自動車、ウェアラブル端末など、家庭や企業で使用されるありとあらゆる製品が電子廃棄物となる可能性を有しています。

2020年の国連グローバルE-wasteモニター(Global E-waste Monitor 2020:http://ewastemonitor.info/)によると、電子廃棄物は今後世界最大の廃棄物源となることが予想されています。人の健康と環境に有害な物質を含む電子廃棄物が無造作に廃棄されることには、大きな危険があります。また、電子廃棄物の中には、コバルト、リチウム、パラジウム、銅、金などの貴金属も含まれており、リサイクルチャネルで適切に回収しないとその価値が失われるという課題もあります。

2019年には、世界中で5,360万メートルトンの電子廃棄物が生み出されていますが、リサイクルされたのはそのわずか17.4%でした。リサイクルされなかった廃棄物の中には、コバルト、パラジウム、銅、その他の鉱物などが含まれており、470億ドル相当の価値があったと試算されています。

このような状況の中で、消費者と政府は、電子機器製品とそれに含まれる資源の適切な回収を企業に強く求めるようになってきました。米国においては、電子機器のリサイクルに関する連邦法はありませんが、カリフォルニアを含む25の州が電子機器のリサイクル法を施行しています。

カリフォルニア州を例に挙げると、同州では、古いテレビ、バッテリー、コンピューター、携帯電話、ファックス機、コピー機、ステレオなど、複数種類の電子廃棄物を廃棄することは違法です。 そのため、カリフォルニアの企業では、不要となった電子機器を安全に処分する方法を見つけなければなりません。そして、カリフォルニア州では全米に先駆けて、2005年に電子廃棄物リサイクル法が制定されました。この新法は、小売業者とメーカーに、消費者からリサイクル料金を徴収させ、その資金で地方政府とリサイクル業者が、不要となった機器の回収拠点を設置するという内容になっています。この法の制定以来、州内には600以上のリサイクル施設が設立され、20億ポンド以上の量の電子機器が回収またはリサイクルされてきました。

3.企業の取組み姿勢
電子廃棄物リサイクルに対する消費者や政府からの圧力が強まる中で、企業は、電子廃棄物に対して責任ある行動をとるよう求められるようになってきました。また、ビジネスの継続的成長という意味でも、企業として、全体像を捉え、長期的な視点で電子廃棄物の取り扱いを考える必要があります。

例えば、製造業の場合であれば、製品に必要な材料金属は無限に採掘できるものではありません。ビジネスを長期的に成長させるには、これまでの線形経済から循環経済に移行する方法を考える必要があるでしょう。そして、その解決策のひとつとして、現在では多くの企業が電子廃棄物回収およびリサイクル技術に投資しているのです。

自社の電子廃棄物回収・リサイクルを進めていく中では、画期的な技術やソリューションを提供する企業とパートナー契約を締結することも有効な手段となります。以下の項では、米国でリサイクル関連のビジネスを展開し、注目を集めているスタートアップを紹介しています。新しいビジネスアイディアとして、または日本企業が海外展開する際における責任ある企業行動の体制づくりとしても参考にしてみてはいかがでしょうか。

4.スタートアップ事例
4−1.Redwood Materials(https://www.redwoodmaterials.com/

ネバダを拠点とするRedwoodMaterialsは、2017年にテスラの共同創設者で元CTOのJB Straubelによって設立されました。電気自動車と循環サプライチェーン向けのバッテリーリサイクルビジネスを展開しています。今後、電気自動車の普及が進み、バッテリー関連の廃棄物とサプライチェーンの問題が増大することを見据えて設立されており、電気自動車や家電製品などに使用されるリチウムイオン電池をリサイクルすることに重点を置いています。AmazonやFordなど12社以上の企業と提携しており、今後の成長が期待されているスタートアップです。

4−2.Rubicon Technologies(https://www.rubicon.com/

2008年にケンタッキー州で設立されたRubiconは、企業や政府にスマートな廃棄およびリサイクルソリューションを提供するソフトウェア会社です。 テクノロジーを使用して環境イノベーションを推進することで、既存の廃棄プロセスを改善し、企業をより持続可能な企業に、人々の生活をより環境に配慮したよりスマートな場に変える手助けをしています。

4−3.TerraCycle(https://www.terracycle.com/en-US/

TerraCycleは、リサイクル不可能な廃棄物をさまざまな消費者製品に転用し、リサイクルしている企業です。2001年に設立され、ニュージャージー州トレントンを拠点としています。同社の特徴は、ドリンクポーチ、チップバッグ、歯ブラシなどのリサイクルしにくい廃棄物をターゲットにしている点です。これらの廃棄物から、新たなリサイクル製品として、バッグ、ガーデン製品、ギフト製品、家庭用品、オフィス製品、ペット製品、学校用品、おもちゃなどを提供しています。

4−4.Urban Mining Company(http://urbanminingco.com/

Urban Mining Companyは、 2014年にテキサス州で設立されました。独自のリサイクルプロセスを用いた高性能磁石リサイクリビジネスを展開しています。廃棄されたハードディスクドライブやモーターから希土類磁石(レア・アースマグネット)をコスト効率よくリサイクルし、様々な産業、自動車、クリーンエネルギー、軍事防衛に使用される重要なコンポーネントである高性能磁石へと再処理する画期的な技術を開発しました。

4−5.CyberCrunch(https://ccrcyber.com/

CyberCrunchは、2010年にペンシルベニア州で設立され、全米でコンピューターのリサイクルとハードドライブのシュレッダーサービスを提供しています。ハードウェアのデータ破壊および電子機器リサイクルサービスの二本立て事業とすることで、効率的に電子廃棄物を回収することもでき、収益化のタッチポイントも2箇所となるメリットがあります。

同社のリサイクル事業で対象としているのは、コンピューター、コンピューターアクセサリーおよびコンポーネント、モニター、ネットワーク機器、家庭用電化製品、電球、POS機器、サーバー、サーバーコンポーネント、プリンター・コピー機・スキャナー、フロンを使用した電化製品、商用非電子機器、およびバッテリー類など多岐にわたります。

5.海外進出・海外展開への影響
現在、企業として、カーボンニュートラルなど、環境への配慮を表明することが一般的となってきています。その流れに沿う形で、現在注目を集めているのが、電子廃棄物への取り組みです。

電子廃棄物のリサイクルを企業として推し進めていくことは、企業の責任という面だけではなく、貴金属などの重要資源を無駄にせず、自社のサイクル内での再利用を可能とし、コスト削減などの経営面でのメリットにもつながります。そのため、米国の大手企業は、革新的なリサイクル技術を開発するスタートアップ企業に多額の投資をしたり、提携したりと、積極的な行動を見せているのです。

日本から海外展開をする際に、このような注目の高いビジネス分野を意識することは有効です。大手企業との提携などを上手く進めることで、海外市場で一気に成長することも可能となるでしょう。

また、同分野と関係ないビジネスの場合にも、今後は企業一般に連邦、州、自治体レベルで、リサイクルへの取り組みを義務化する流れも予想されています。その際には、自社だけで解決するのではなく、現地のリサイクルサービスやソリューション提供企業などを上手く活用すると良いでしょう。

タンデムスプリントグループでは、日本企業による海外事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

2022.1.27
海外営業支援

米国では気候テックが盛り上がりの傾向〜クリーンエネルギーやバッテリー開発等、急成長するスタートアップも続々登場〜

1.はじめに
現在、Climate Tech(気候テック)が大きな盛り上がりを見せています。気候テックとは、二酸化炭素排出量の削減または地球温暖化の影響への対処に焦点を当てた技術のことです。気候テックの業種は幅広く、エネルギー関連ビジネスから、工業や食品産業に至るまでさまざまな分野が関与しています。

米国では、環境保全への関心は非常に高まっており、気候テックのスタートアップ企業も数多く誕生しています。実際、気候テックスタートアップ企業の資金調達額は、2021年に過去最高を記録しており、パリの気候協定が調印された直後の2016年と比較して約5倍の増加となっています。本年度の具体的な調達額を見てみると、気候テックのスタートアップ企業は、2021年10月時点で、すでに320億ドルを調達したとのレポートがあります(https://dealroom.co/uploaded/2021/10/Dealroom-London-and-Partners-Climate-Tech.pdf)。

本稿では、気候テックビジネスのトレンドとともに、米国スタートアップ事例について紹介していきます。

米国の気候テックスタートアップのトレンドや先進的な大手企業の取り組みなどから、日本企業の海外進出成功へとつなげていただけますと幸いです。

2.気候テックビジネス盛り上がりの背景
気候テックビジネス急増の主な要因としては、2つ考えられます。

1つ目は、消費者需要の高まりです。消費者は、気候変動に対して特に強い懸念を抱いており、自分たちに何ができるかを模索しています。例えば、持続可能性の推進のために、エコバッグを使用したり、リサイクルや省エネに取り組みたいと考える消費者は幅広い世代にいます。特に、Z世代では、ライフスタイルそのものを持続可能的なものに変えたいと考えており、従来型の製品やサービスよりも割高だとしても、持続可能的な選択肢を好む傾向にあることもわかってきました。

つまり、電気自動車や再生可能エネルギーなどの分野で、より持続可能な技術に対する消費者の関心と需要が高まっており、この分野で技術を開発しているスタートアップ企業や既存企業の数が大幅に増加しているのは自然なことといえます。

2つ目は、政治的な背景です。例えば、英スコットランド・グラスゴーで開催された第26回気候変動枠組条約締約国会議(2021 United Nations Climate Change Conference:COP26)は、新型コロナウイルスのパンデミックの影響で、2020年は開催が見送られたため、2年ぶりの開催となりました。首脳級会合である世界リーダーズ・サミットでは、130か国以上の首脳によるスピーチが行われ、今後の世界的な気候変動対策の推進に向けた各国の取組が表明されました。このような世界的な気候会議は、新しいビジネスを盛り上げるきっかけとなります。

また、パリ協定への復帰も気候テックを後押しするものとなっています。実は、米国ではトランプ前大統領時代の2020年11月4日に、地球温暖化対策の国際的な枠組みである「パリ協定」からの離脱が決定していました(2017年6月1日にトランプ大統領が協定から離脱する考えを示し、2019年11月4日に正式な手続きが始まっていたが、2020年11月4日に正式離脱となった)。それが、バイデン大統領へと代わり、2021年1月20日にパリ協定への復帰を決定し、国連に通知。通知から30日経過後の2021年2月19日に正式に復帰が認められたという経緯があります。米国が政府として、気候変動に真剣に取組む姿勢を見せていることから、気候テック関連のビジネスはますます盛り上げっていくことが予想されます。

5,100にも及ぶ気候テックスタートアップを調べたレポートでは、投資資金の80%以上はエネルギーと運輸関連の企業に送り込まれていました。また、新しい傾向としてアグリテックなどの農業分野や食品分野の企業も増えています。これは、肥料の使用から食品の廃棄まで、排出される世界の温室効果ガスの排出量の大部分が、食品と農業が占めていることから、農業や食品関連の技術に注目が高まっていることが考えられます。

3.スタートアップ事例
3−1.住宅用太陽光発電会社 Goodleap(https://www.goodleap.com/

カリフォルニア州サンフランシスコエリアを拠点とする住宅用太陽光発電会社であるGoodLeap社は、米国の住宅をより環境に優しいものにするというミッションを掲げ、2021年だけで10億ドル以上の資金を調達しています。

GoodLeap社は、屋上ソーラーファイナンス分野では最大企業の1つとなっており、同社は、ベンダー、消費者、金融機関をつなぐのに役立つ技術を開発しています。金融機関に提供されるソフトウェアでは、顧客満足度だけでなく財務の追跡にも役立ちます。一方、ベンダーはアプリを利用して金融機関とコミュニケーションを行い、ローンの承認を得ることができます。消費者は別のアプリを使用して、発電量、節約量、および地元の電力会社に売り戻す太陽光発電量を監視できます。

GoodLeap社では、獲得した資金を用いて、ヒートポンプ、エネルギー効率の高い窓、人工芝生の設置を支援することで、住宅改修に取り組むことを目指しています。

3−2.バッテリーリサイクル会社 Redwood Materials(https://www.redwoodmaterials.com/

Redwood Materials社はTeslaの元CTOであるJB・ストラウベル氏が2017年に創業した、バッテリーリサイクルのスタートアップです。Redwood Materials社では、サプライチェーンを循環型へと変えることをミッションにしています。

具体的には、バッテリーセルを製造する際に出るスクラップや、家電製品(携帯電話のバッテリー、ノートパソコン、電動工具、 モバイルバッテリー、スクーター、電動バイクなど)をリサイクルする事業を展開しています。同社はB2B戦略をとっており、家電メーカーや電池セルメーカーからスクラップを回収し、その廃棄物を処理する過程で、通常は自然から採掘されるコバルト、ニッケル、リチウムなどの素材を抽出し、それらを顧客に再供給しています。

希少金属を再利用することでバッテリーのコストを削減することができだけでなく、新しく採掘する必要がないため、クローズドループシステムの構築に役立ちます。同社によるとニッケル、コバルト、リチウム、銅などの元素を電池から約95〜98%回収しているということです。

Redwood Materials社は大手企業を顧客に抱えており、パナソニック、アマゾン、AESEエンビジョンとパートナーシップを結んでいることを公表しています。

4.アマゾンが立ち上げた気候変動対策に関する誓約のための基金「Climate Pledge Fund」
米国アマゾンが20億ドルを投資して2021年6月から始めた「Climate Pledge Fund」は、地球を守るための製品やサービス、技術を生み出す企業へ投資を行う基金です。気候変動や地球温暖化を食い止めるために開発されている技術に投資することを目的としています。これまでにアマゾンは、製造業やエネルギー生成事業、食品産業や農業など、幅広い分野での11社への支援を進めてきました。

Climate Pledge Fundの投資先の一つ、Resilient Power社(https://www.resilientpower.com/)は、テキサス州オースティンを拠点とするスタートアップ企業で、電気自動車の充電技術を開発しています。同社の技術は、他のEV充電システムに比べて設置面積が小さく、短時間で設置でき、約10倍の充電速度で提供できることが特徴です。アマゾンでは、2030年までに10万台の電気自動車を導入するという目標を定めており、その目標達成のために、Resilient Power社が貢献すると見込んでいるのです。また、アマゾンではその電気自動車の製造をRivian Automotive社に委託しており、そちらにも大型投資を行っています。

Climate Pledge Fundでは、CMC Machinery社(https://www.cmcmachinery.com/)にも投資しています。CMC Machinery社は、注文商品ごとに、正確な寸法に合わせて設計された箱を開発・製造しており、緩衝材として使い捨てのプラスチック製パッドを使用する必要がありません。

その他にも、アマゾンは、カリフォルニアに拠点を置くInfinium社(https://infiniumco.com/)への投資も拡大しています。Infinium社はディーゼルやジェット機に使用される化石燃料の代わりに、航空輸送、海上輸送、大型トラックに使用できる超低炭素燃料を開発している企業です。アマゾンは2021年10月に、同社への投資をさらに増額したと発表しました。

5.海外進出・海外展開への影響
現在、気候変動は世界全体で対策が必要な問題であり、若い世代を中心として持続可能性への関心が高まっています。そして、各国が地球温暖化対策として、カーボンニュートラルについての明確な数値目標を設定しています。例えば、米国や、EU、日本などの先進国では、2050年までのカーボンニュートラルの達成と、2030年までの削減目標数値を掲げています。

このような背景もあり、現在は気候テックへの注目が非常に高まっています。気候特化型のファンドも活発に立ち上がるなど、新しいビジネスを始める際には、気候テックは注目の分野です。さらに、バッテリーのリサイクルや再生エネルギーなど、気候テックに関連する技術的な進展も大きく、今後気候テック市場は大きく成長を続けることが予想されます。

日本から海外展開をする際に、このような注目の高いビジネス分野に着目することは有効です。特に、米国ではアマゾンなどの大手企業が気候テック関連のスタートアップと提携する事例が増えています。大手企業の現地のネットワークを活用できるのは海外進出をする日本企業にとっても大きな後押しとなるでしょう。上手く現地企業と提携できれば、海外市場で一気に成長することも期待できます。

タンデムスプリントグループでは、日本企業による海外事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

2021.12.17
海外営業支援

対人販売が基本だったビジネスもオンラインに移行 -アメリカではミレニアル世代を中心に車のオンライン購入が人気-

1.はじめに
土地が広大で、公共交通機関の発達も限定的な米国では、移動手段としての自動車は欠かせません。そのため自動車の市場規模も非常に大きなものです。米国の主要な産業のひとつでもある自動車産業ですが、米国の自動車販売の形態は、日本のものと少し異なります。日本では、メーカーの小売販売会社が自動車を販売するケースが一般的ですが、米国では、自動車を製造するメーカーと自動車を販売するディーラーとは別の企業ということが多いのです。

そのため、メーカーが付ける値段は希望小売価格であり、実際にはディーラーと消費者が値段交渉をして最終価格が決められます。さらに、米国では、ディーラーが既に保有している在庫から購入することが基本です。ディーラーの設定する販売価格は、需要と供給に大きく左右されるので、大幅な値引きを受けることもあれば、プレミアムが付いてメーカー希望価格よりも高値で取引される場合もあります。

ディーラーのセールスマンの多くは、歩合コミッション制の給与体系となっています。そのため、自動車の販売・購入においては、消費者と直接値段交渉して買い値を決めるという商習慣が根強く残っているのです。そして、中には詐欺的に自動車の価格をつり上げたり、不必要なアクセサリーを付けて購入価格を上げたりすることがあり、消費者側にとっては大きなストレスを伴う買い物となっていました。

しかしここ数年、消費者心理の変化もあり、ディーラーとの交渉に対して大きな不満を抱く消費者が若い世代を中心に増えてきました。そして、さらにインターネットの普及も重なり、直接交渉をしなくてもよい購入方法として、インターネット上で自動車を販売するプラットフォームが急速に成長しているのです。

本稿では、ミレニアル世代を中心として、自動車の消費行動のトレンドを解説するとともに、車のオンライン購入を可能にした新しいオンラインマーケットプレイスについても紹介します。

日本車は米国市場でも主要なプレーヤーとして展開しており、自動車関連で海外進出を考える日本企業も多くあります。歴史の長い産業で生じている新しいトレンドを参考に、海外進出の成功へとつなげていただけますと幸いです。

2.車嫌いと言われていたミレニアル世代
Uber、Lyftなどのライドシェアタクシーの普及や、ヘリコプターペアレント(子どもが自分で運転できる年齢になっても学校や職場への送迎を続ける過保護な親のこと。)の増加などを理由に、ミレニアル世代では運転免許証の取得が遅くなっていました。また、学費ローンを抱える人が多く、大不況(アメリカのサブプライム住宅ローン危機に端を発し、2000年代後半から2010年代初頭までの間に世界市場で観察された大規模な経済的衰退)による雇用の厳しさも相成り、ミレニアル世代の自動車購入のタイミングは、従来よりも遅くなっていたのです。このため、ミレニアル世代に対しては、車嫌い(車の購入に興味がない人が多い。)と評価されることもありました。

しかし、最近の調査では異なる結果が出ています。市場調査会社のJ.D.パワーの調査によると、2020年時点で、ミレニアル世代の購買は新車販売全体の32%を占め、他のどの年齢層よりも多くの新車を購入していたことがわかったのです。

また、オンライン販売のプラットフォームをディーラーに提供しているCars.comによると、新車または中古車を完全オンラインで購入した、あるいは購入見込みである消費者数が、ミレニアル世代では、団塊世代のほぼ2倍となることが分かっています。つまり、現状として、ミレニアル世代は車の購入に興味がないのではなく、従来型の対人交渉による自動車販売店を嫌い、オンラインマーケットプレイスでの購入に移行しているともいえるのです。

この移行により、Shift、Vroom、CoPilot、Gettacarなどのオンライン自動車購入サービスやソフトウェアプラットフォームが続々と登場しています。同マーケットは、ベンチャーキャピタリストからの注目も大きく、自動車販売の形態は今後大きく変わっていくことが予測されます。

3.オンライン自動車購入プラットフォームの事例
3−1.デジタルプラットフォームのCars.com

1998年にシカゴで設立されたCars.com(http://cars.com/)は、ディーラー横断型自動車広告のパイオニアであり、消費者と全国各地のディーラーをつなげる最大のデジタルプラットフォームのひとつへと成長しています。Cars.comでは、何百万台にも及ぶ新車および中古車のデータだけでなく、専門家による自動車購入関連コンテンツの提供や消費者レビューデータベースを通じて、自動車の購入、販売、サービスを包括的に支援しています。

3−2.車購入を全面的にサポートするモバイルアプリCoPilot

2018年にシカゴで設立されたCoPilot(https://www.copilotsearch.com/)は、機械学習と人間の専門家を活用して、消費者が新車あるいは新古車を最良の価格で見つけることを支援するモバイルアプリです。CoPilotのコンセプトは「ポケットの専門家」。CoPilotのアプリを使用すると、消費者に最適な車両の検索、近くの販売店での最低価格の検索、その他購入に必要な情報の提供まで、購入プロセスの各段階でユーザーの支援をしてくれます。

CoPilotが他のデジタル自動車購入ツールと異なる点は、自動車ディーラーからの手数料がかからない点が挙げられます。CoPilotは、購入者を自動車保険会社に紹介し、そこから利益を得る仕組みとなっていますので、このようなビジネスモデルが可能となっています。

3−3.わずか12分で車購入ができるGettacar

2018年にフィラデルフィアで設立されたGettacar(https://www.gettacar.com/)のプラットフォームはそのスピード感と柔軟性が魅力となっています。消費者は、オンラインで車両の購入を最短わずか12分で完了することも可能です。リアルタイムのファイナンスオプション、365日間の保証、自宅での試乗、および車両の返却オプション(購入後7日間)などのサービスを受け取ることができ、競合サービスとの差別化を図っています。

Gettacarで販売されているのは、一般に3〜4年前の車両で、走行距離計のメーターは30,000〜40,000マイルのものが主体です。オンライン車両販売の競合サイトとは異なり、ローカルに焦点を当てたビジネスモデルを通じて取引を成立させています。

3−4.エンドツーエンドの自動車購入サービスShiftとVroom

2013年にサンフランシスコで設立されたにShift(https://shift.com/)は、中古車を売買するためのオンラインマーケットプレイス企業です。現在、サンフランシスコ、 ロサンゼルス、 サクラメント、サンディエゴ、ポートランド、シアトルエリアでサービス展開をしています。

車の購入を検討している消費者は、サービスエリア内で試乗を予約して、自宅などの希望の場所に車を配送してもらいます。試乗を行って、購入を決めた場合には、デジタルプロセスを通じてその場で購入することも可能です。

Shiftのエンドツーエンドの自動車購入サービスでは、車のローンや車両保険などの関連サービスもデジタルベースで一括して利用できるようになっています。

Vroomは、Shiftの競合サービスのひとつです。2013年にニューヨークで設立されました。Vroomでは、中古車を売買するために設計された革新的なエンドツーエンドのeコマースプラットフォームを利用し、消費者にシームレスな中古車購入体験を提供しています。同社の強みはスケーラブルなデータ駆動型テクノロジーです。取り扱う車両の選択肢の広さ、透明性のある価格設定、競争力のある車のローン提供、および自宅までの車両配送サービスが人気となっています。

4.海外進出・海外展開への影響
さまざまな業界でオンラインで完結する購買経験が一般的になる中で、従来より対面での交渉事が一般的だった業界にも変化が見られています。特に、車の購入はディーラーとの駆け引きで何時間もかけることも少なくなく、消費者にとってはストレスを伴なう購買行動となっていました。

現在、車の購入の主力となっている消費者は、1981年から1995年に生まれたミレニアル世代です。そして、今後はZ世代と呼ばれる1996年から2012年に生まれた世代も参画してきます。実は、2020年の時点で、アメリカにおける総消費の40%以上はZ世代が占め、Z世代の大きな購買力を示すデータもあるのです(https://www.theshelf.com/the-blog/generation-z/)。このような大きな消費者層を惹きつけるには、新世代の求める新しい形での購買体験を提供していく必要があります。

Z世代やミレニアル世代の特徴として、消費において体験に重きを置くという点があります。また、Tech savvy (テクノロジーの精通者)と評されるミレニアル世代とTech native (テックネイティブ)と呼ばれるZ世代は、デジタル、その中でもモバイル前提の世界線にいることも注目すべきポイントです。ショッピングプラットフォームとして、デジタル(特にモバイル)を利用した購買は、今後ますます盛り上がっていくことでしょう。

日本企業が海外進出する際には、販売戦略のひとつとしてモバイルプラットフォームの強化を考えてみてはいかがでしょうか。消費者にシームレスな体験を提供するモバイルアプリなどを活用することで、若い世代の消費者獲得に有利に働くことが期待できます。

タンデムスプリントグループでは、日本企業による海外事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

2021.11.22
海外営業支援

グッド、ベター、ベストの段階的値段設定がビジネス成功の鍵 米国企業の実例とともに紹介

1.はじめに
現在、米国では様々なサービスで「グッド、ベター、ベストプライシング」と呼ばれる段階的な価格設定が設けられています。これは、顧客に対して3つ以上のサービスレベルを提示し、それぞれのサービスレベルに応じて価値と価格を増加させる価格戦略のことです。例えば、「ブロンズ→シルバー→ゴールド」あるいは「ベーシック→アドバンス→デラックス」などのパッケージを設けます。パッケージの価格は段階的に高く設定されていますが、その分、追加サービスやアップセルなどが含まれるのです。

「グッド、ベター、ベストプライシング」により、企業側はさまざまな顧客のニーズと予算に最適なパッケージまたはサービスを提供することができます。幅広いターゲットオーディエンスにアピールすることにもつながり、現在、サブスクリプションサービスやオンラインサービスを提供する業界を中心に、「グッド、ベター、ベストプライシング」モデルの活用が広がっています。

本稿では「グッド、ベター、ベストプライシング」メリットを詳しく説明するとともに、本価格戦略によって成功している米国企業の事例も紹介します。

商品やサービスの価格戦略はビジネスにおいて非常に重要な要素となります。そのため、海外展開の際には、現地の競合他社の価格設定を参考にすることも多いと思います。今回紹介する「グッド、ベター、ベストプライシング」は、海外市場で適切な価格設定とする上でも、有効となります。海外企業の実際のサクセス事例を参考にして、海外進出の成功へとつなげていただけますと幸いです。

2.「グッド、ベター、ベストプライシング」のメリット
2−1.製品をより手の届きやすいものにする
グッド、ベター、ベストの段階的な価格設定により、製品・サービスは顧客にとってより手の届きやすいものとなります。手頃感のある価格を最低モデル「グッド」として使用して、まずは新規顧客を呼び込むのです。新規顧客を獲得した後は、顧客に良い商品体験を感じてもらい、「グッド」から「ベター」や「ベスト」という高次元のプランにリピーターとして戻ってきてもらうことも期待できます。

手頃な価格プランを用意しておくことで、新規顧客が製品・サービスを試してみようと考えるまでのハードルを下げることにつながります。海外市場に新規参入を考えている日本企業にとって、このメリットは非常に有益になるのです。

2−2.利益率とブランド価値の向上
「グッド、ベター、ベストプライシング」では、段階的な価格設定のハイエンドプランで利益率を上げることもできます。「グッド」で新規顧客を獲得しつつ、「ベスト」の顧客層を増やしていくことで、利益率を高めるのです。また、ハイエンドのプランで提供するプレミアムな体験は、顧客に特別感を感じさせ、ポジティブなハロー効果によってブランドの価値を引き上げることにもなります。
2−3.さまざまなタイプの顧客にアピール
潜在顧客の中には様々な感度の顧客がいます。企業側がある程度のターゲット層を定めているとしても、それぞれの潜在顧客が求めている機能性や価格設定は異なるのです。複数の選択肢を提供することで、顧客自身で自分にとって最適なものを選択できるようになります。
2−4.消費者心理を企業にとって都合の良い方向に動かす
「グッド、ベター、ベストプライシング」では、以下3つの理由から、企業にとってプラスとなる方向へ消費者心理を動かすことが可能と考えられています。

1つ目は、製品・サービスラインを理解しやすくなる点です。つまり、段階的な価格設定を使用することで、製品の様々な機能が分解した状態で可視化されます。潜在的な顧客が製品・サービスを正確に理解し、自分にとって必要な機能を判断することが容易になります。

2つ目は、より高い価格そのものが顧客の購買意欲の高める可能性があるという点です。様々な書籍を執筆しているウィリアム・パウンドストーン氏による一冊 『プライスレス 必ず得する行動経済学の法則(原題Priceless:The Mith of Fair Value And How to Take Advantage of It)』の中で紹介された興味深い実験を紹介しましょう。

実験で「高価格のプレミアムビールA」と「低価格のバーゲンビールB」を提示したところ、約80%の人が高価なプレミアムビールAを選びました。次に「より低価格のスーパーバーゲンビールC」を加えると(A>B>C)、今度は約80%がビールBを買い、残りの人がビールAを買い、最低価格のビールCを買う人はいませんでした。追加するビールを安いものではなく、最高額のスーパープレミアムビールD(D>A>B)にすると、ほとんどの人がビールAを選び、少数の人がビールBを選び、約10%の人がビールDを選んだそうです。

この実験からは、常に最も高価な商品を選ぶ割合が一定数あること、そして選択肢が3つに増えると、真ん中の価格のオプションを選択する割合が高くなることが示されています。そのため、単一の価格設定にするよりは、「グッド、ベター、ベストプライシング」の方が利益が大きくなるといえます。そして、最も売りたい商品やサービスプランは3つの価格帯の中で中間のもの「ベター」にすると良いと考えられます。

3つ目は、複数の価格帯を提案することで、潜在顧客に「買う」と「買わない」ことを考えさせるのではなく、売っている中からどれを買うかという気持ちへと変化しやすいという点です。つまり、購入を前提として、3プランの中でどれが一番お得かという消費者心理になるので、購入に至る割合が高くなると期待できます。

3.米国企業の「グッド、ベター、ベストプライシング」事例
3−1.米アマゾンのオーディオブックサービス「Audible(オーディブル)」
https://www.audible.com

通販サイトAmazonが運営するオーディオブックサービス、Audible(オーディブル)では、米国エリアで以下3段階の価格設定を展開しています。

グッド:Audible Plus
月額7.9ドルで11,000を超える無料タイトルカタログへの無限アクセス

ベター:Audible PremiumPlus
月額14.95ドルで、無料タイトルへの無限アクセスに無料タイトル以外のコンテンツをダウンロードするためのクレジットを毎月1つ取得

ベスト:Audible Premium Plus – 2 credits
月額22.95ドルで、無料タイトルへの無限アクセスに無料タイトル以外のコンテンツをダウンロードするためのクレジットを毎月2つ取得
 

3−2.SNS用の管理プラットフォームを提供する「Sprout Social(スプラウト・ソーシャル)」
http://sproutsocial.com/

2010年に設立され、イリノイ州シカゴに本社を置くSprout Social(スプラウト・ソーシャル)は、ソーシャルメディア(SNS)管理プラットフォーム企業です。現在、企業にとってSNSはマーケティング効果の大きいプラットフォームであり、SNSマーケティングの重要性が増しています。一方で、複数のSNSを活用するのは簡単ではありません。

スプラウト・ソーシャルが提供する管理プラットフォームでは複数のSNSを統合するとともに、自動化機能を搭載してSNS運用の負担を軽減してくれます。

スプラウト・ソーシャルでは、3つの異なるプランを提供しており、高価格のプランになるほど複雑な管理が可能となっています。

グッド:Standard
月額99ドル
アカウント上限:5
基本的な管理・レポート機能

ベター:Professional
月額169ドル
アカウント上限:10
複雑な管理・レポート機能

ベスト:Advanced
月額279ドル
アカウント上限:10
複雑な管理・レポート機能および自動化ツール

3−3.経理プラットフォームを提供する「Pilot(パイロット)」
https://pilot.com/

2016年にカリフォルニア州サンフランシスコで設立されたPilot(パイロット)は、経理、税務、CFOサービスを提供するプラットフォーム企業です。従来型の外部委託サービスに比較して、時間、コスト、および労力を削減できるとして、成長段階にあるスタートアップ企業から受け入れられています。

Pilotの経理ツールでは、企業のプランに応じて以下3つの異なるプランを提供しています。

グッド:Core
月額599ドル
企業直後のスモールビジネス向け

ベター:Select
月額849ドル
成長を加速したい(ビジネス規模を拡大したい)企業向け

ベスト:Plus
月額カスタマイズ価格 
規模の大きな企業向け

4.海外進出・海外展開への影響
業界に関わらず、製品やサービスの価格戦略は、ビジネス成功にとって鍵となる重要な要素です。同じサービス、価格だとしても、見せ方によってはより魅力的に見えることもあります。消費者心理に効果的に働きかける価格戦略として米国企業では「グッド、ベター、ベストプライシング」の採用が一般的です。本稿で紹介した企業のサービスプライシングにおける取り組みに限らず、小売店の広告など様々な場面に応用されています。

日本企業が海外進出する際には、価格戦略の1つとして「グッド、ベター、ベストプライシング」の導入を考えてみてはいかがでしょうか。自社サービスをわかりやすく紹介するとともに、他社との比較ではなく、自社内でのプラン内比較という思考に消費者を導くため、顧客獲得に有効です。また、低価格帯で顧客を獲得した後に、高価格帯のプランで収益性を高める段階にも移行しやすくなります。

タンデムスプリントグループでは、日本企業による海外事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

2021.11.12
海外営業支援

リモートワークからハイブリットワークの時代へ〜米国ではニッチな需要に応えるユニークなコワーキングスペースが続々登場〜

1.はじめに
新型コロナウイルスの世界的大流行によって、人々の働き方は大きく様変わりしました。特に、米国では強制力を伴った在宅勤務が広がり、オフィスから人が消えていったのです。そして、現在注目されているのがコワーキングスペースの活用です。

実は、規制が解除されオフィスが再開した後も、米国の労働者の52%は、在宅勤務とオフィス勤務を組み合わせた勤務形態を好んでいることが分かっています(https://www.gensler.com/uploads/document/740/file/Gensler-US-Workplace-Survey-Summer-Fall-2020.pdf)。また、企業のリーダーを対象にしたアンケートにおいても、その72%がハイブリッドモデルでの働き方を今後従業員に提供することを計画しています(https://www.steelcase.com/research/articles/topics/work-better/first-wave-workplace-change/)。企業のオフィススペース削減を予定している組織も13%にのぼり(https://www.steelcase.com/research/articles/topics/work-better/real-questions-real-answers-hybrid-work/)、今後オフィスとは別の場所で働く形がさらに主流となってくることが予測されています。

このような流れの中で勢いを見せているのが、コワーキングスペースです。米国企業の50%以上が、今年のオフィス再開の一環として新しいワーキングスペースを試験的に導入することを計画しており(https://www.steelcase.com/research/articles/topics/work-better/kickstart-return-office/)、オフィスとは異なる形態のワーキングスペースの必要性が増しています。

本稿では米国を中心にしたコワーキングスペースのトレンドについて紹介するとともに、様々な工夫をこらしたコワーキングスペースの事例についても取り上げていきます。

企業の海外展開の際には、現地の働き方をしっかりと把握しておくことが現地の優秀な人材を確保することに繋がります。現地のワーキングスペースのトレンドを参考にすれば、現地従業員にとって魅力的な職場を作りができるでしょう。また、海外のビジネストレンドを参考に、海外進出のビジネスアイデアにつなげていただけますと幸いです。

2.業界トレンド
2−1.コラボレーション性
コワーキングスペースには、単なる場所ではなくコミュニティの場となることが一層期待されています。例えば、一部のコワーキングスペースでは、メンバー登録の際に、利用者自身がその環境を選択できるような運用を始めています。

つまり、コワーキングスペースを利用し、同じような興味を共有し、コラボレーションできるようなメンバーを集めたコミュニティを創造しようという試みです。。同じような興味や目的意識を持ったビジネスパーソンを一つの屋根の下に集めることで、より深い関係を築き、コラボレーションを構築し、その結果としてビジネスを効率的に成長させることに繋がるでしょう。このような魅力的なコミュニティであるコワーキングスペースでは、利用者からの満足度も高まり、新規参入者を見込めることから、収益を増やし、ビジネスを拡大することができる可能性があります。

また、特定の業界やニッチに特化したスペースも人気となっています。例えば、保育所を併設した親のためのコワーキングスペース、女性専用のコワーキングスペース、ワーケーションを叶えるコワーキングスペースなどです。同じような興味や目的を持った人々を顧客層に抑えることで、アイデアを共有し、コラボレーションし、生産性を高め、革新的なソリューションを考え出すのに最適な場所となることが期待されます。

2−2.多目的なコワーキングスペース
一方で、元々はホテル、店舗、レストランなどのスペースをコワーキングスペースとして利用できるようにする取り組みも増えています。例えば、昼間はレストランをコワーキングスペースとして使用し、夜は従来のレストラン施設として使用するような場合です。また、スポーツジムとコワーキングを組み合わせて、ウェルネス指向の複合施設をつくることもできます。

このような複合施設型のコワーキングスペースは運営者、利用者の両者にメリットがあります。運営者側は共有経済を利用してより多くの利益を生みだすことができますし、利用者も安価に複数のサービスを楽しむことができるのです。

2−3.IoTと自動化
コワーキングスペースの利用体験を向上させるための鍵となるのがIoTと自動化です。消費者はよりシームレスな体験を欲しており、単一の統合された仕組みを介して、コワーキングスペースを利用できるようにする必要性が高まっています。

具体的には、アプリ内で予約、支払い、利用が完結する仕組みを想定すると良いでしょう。利用者自身がコワーキングスペースのモバイルアプリを開き、利用する時間や施設を選択すれば、そのままアプリ内で決済できるという仕組みのものです。さらに、実際の利用時に、スマートフォンで部屋を解錠できるような仕組みにすれば、よりシームレスな体験を提供できるでしょう。

3.独自の戦略を展開するコワーキングスペース事例
3−1.メンタルヘルスの専門家のためのコワーキングスペース「ブルーハウスウェルネス」
https://bluehousewellness.com/

ジョージア州アトランタにあるブルーハウスウェルネスは、メンタルヘルス専門家のためのコワーキングスペースです。 ブルーハウスはセラピスト専用に設計されており、利用者は必要に応じて部屋を予約できます。利用者はプライバシーにも配慮された快適なオフィスでクライアントとセッションを行うことができるのです。

3−2.本格的なボルダリングジムに併設のコワーキングスペース 「Brooklyn Boulders」
https://brooklynboulders.com/

2009年にニューヨークで開業したブルックリンボールダーズは、現在ボストンとシカゴに拠点を増やしており、更に2021年中にはワシントンDCにも新しくオープンする予定です。

ここでは複数のクライミングウォールに加えて、子どもと大人向けのレッスンプログラムやイベントスペース、そしてコワーキングスペースを兼ね備えています。コワーキングスペース専用のメンバー制度ではなく、ボルダリングジムのメンバーになればコワーキングスペースも併せていつでも利用可能となります。

3−3.コワーキングスペースの大手「Wework」の生き残り戦略
(https://www.wework.com/

2010年に米国ニューヨークで創業したコワーキングスペースの大手WeWorkは、全世界38ヶ国151都市800ヶ所以上の地域でコワーキングスペースを提供・運営しています。しかし、WeWorkでは、現在会員数が減少しており、苦境に立たされている状況となっています。そのため、現在では新しいオンデマンドおよびオールアクセスオプションを通じて、より多くの人々に、ニーズに合った施設を使用してもらえるような戦略に踏み切っています。利用者がより気軽に利用できるようにすることを目標に、自宅での仕事からの気分転換として、週に1日はオフィス業務に戻れる場所としての提供を試みています。

また、企業と協力して、企業の福利厚生としてWeWorkへのオールアクセスサービスを提供する企画や、大学と協力して、学生に別の学習場所を提供する企画も打ち出しています。たとえば、Georgetown UniversityはWeWorkとパートナーシップを結び、在籍する学生にWeWorkへのオールアクセスサービスを提供し始めました。新型コロナウイルスの影響で、公共の図書館の多くが閉鎖する中、学生に安心して勉強できるスペースを確保したいという狙いがあったためです。(https://www.georgetown.edu/news/wework-all-access-benefit-for-georgetown-university-students/)。

また、Brandwatchなどの企業も最近、WeWorkのオールアクセスのパスを従業員に付与して、世界中にあるWeWorkのロケーションを利用できるようにしています(https://techcrunch.com/2021/03/15/wework-unbundles-its-products-in-an-attempt-to-make-itself-over-but-will-the-strategy-work/)。

4.海外進出・海外展開への影響
従来コワーキングスペースは、フリーランサー、スタートアップ企業、起業家など一部の人々を中心に利用されていました。しかしながら、最近ではリモートワークが主流となり、オフィスに通うことなく仕事をする人々が急激に増えたことで、コワーキングスペースのターゲット層が広がっています。

また、企業としても通勤と在宅を同時に実施するハイブリット型に変換していく中で、今までと同じ規模のオフィススペースを維持することが非効率になってきました。これを受けて、企業は自社のオフィススペースの代わりにコワーキングスペースを有効活用することを視野に入れ始めています。

このトレンドは、企業が海外展開する際にはプラスに働く可能性があります。日本から海外展開する際には、オフィス立ち上げに大きな初期費用がかかりがちです。しかしこの際、コワーキングスペースをオフィスとして利用すれば、初期投資を抑えながら海外進出をすることも可能となるのではないでしょうか。

このように新たな形でコワーキングスペースビジネスが成熟する中で、従来よりも質の高い、付加価値のあるスペースが求められる傾向があります。言い換えると、店舗数などで圧倒していた大手だけでなく、新規参入企業にも工夫次第ではビジネスの成功を収められる可能性が高まっているのです。スタートアップ企業として自由なアイディアで新しいビジネスを始めるチャンスともいえるでしょう。利用者のニッチな需要をいかに吸い上げるかが鍵になるといえます。

タンデムスプリントグループでは、日本企業による海外事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

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