3−1.Zillowの事例
Zillowは、2006年に設立のシアトルに本社を置く企業で、大手不動産情報サイト「Zillow」を運営しています。1億1千万を超える米国の住宅のデータベースを要する売買・賃貸のプラットフォームとして、多くの消費者から利用されています。また2014年には、同業者のTruliaを買収、集約化が進むアメリカの不動産情報業界の中でも力を強めている企業です。
Zillowは、多彩な情報をワンストップ収集、提供できることが強みであり、物件の概要、過去の価格推移、ローン計算機能や価格査定、売買事例などの情報を一気に得ることができます。特に、Zestimateという不動産の想定価格を算出・公開するツールではアメリカの不動産取引の参考になれるほど強い信頼と影響力を有しています。
Zillowの主な収益源は広告掲載料で、大手不動産会社や独立系不動産会社に所属する個人エージェントが支払う広告掲載費でこれまで収益を上げてきました。しかしながら、近年では積極的な提携や事業展開により、不動産情報以外にも、仲介・ローン業者とのマッチング、契約書類サポートなど不動産総合サービスへと事業を拡大しています。
3−2.Redfinの事例
Redfinは、2004年に設立で、Zillowと同じくシアトルを本社とする企業で、大手不動産情報サイト「Redfin」を運営しています。Redfinは不動産情報サイトの運営だけではなく、2006年という初期から物件の購入・販売サービスを展開しているのが特徴です。これによって情報サイトからの広告費と不動産売買からの仲介手数料の両方を収益にできるビジネスモデルを展開しています。
Redfinでは、テクノロジーと不動産のプロのあわせ技によって、非常に高精度な不動産推定価格の算出ができることを売りにしています。Redfinでは、まずAIを活用して不動産価格を査定した後、最終的には地域のエージェントに繋ぎ、推定価格を最終調整します。
3−3.ZillowとRedfinの違い
ZillowとRedfin、どちらの会社も不動産に焦点を当てていますが、スタート地点は大きく異なる分野にありました。Redfinは証券会社から、そしてZillowはメディアと情報会社としてビジネスを始めていたのです。その際、Zillowはブローカーの広告費から収益の大部分を受け取っていました。Redfinは、他の仲介業者よりも少ない手数料を武器にした住宅販売を始め、さまざまな不動産サービスを通じて収益を得ていました。
近年、両社は住宅販売における市場シェアの拡大を目指す中で、ともにビジネスの分野を拡大しており、距離が縮まっています。ただし、Zillowの年間収益が13億ドル、時価総額86億ドルに対して、Redfinは年間収益の4億8,700万ドル、時価総額16億ドルと、Zillowの方がはるかに大きな企業です。
Redfinは不動産業界で長年習慣とされてきた不動産業者やエージェント優位なコミッション割合を、ユーザー優位に変えたゲームチェンジャーとして評価を受けています。
3−4.ZillowとRedfinの目指す未来
競合大手であるZillowとRedfinですが、両者ともにインスタントオファープログラムのサービス拡充を近年狙っていると言われています。実はアメリカでは、所有の不動産を売り、別の家を買うことを、何度も繰り返すことが一般的です。しかし、所有の不動産が売れないままに、新しい不動産を購入した場合には、一度に2つの不動産分の支払い行う、あるいは購入を保留せざるを得ないなど、不動産売買のタイミングには困難がつきものです。
そこで、注目されているのがインスタントオファープログラムです。これは、現在所有の不動産をすばやく売却し、そのお金を次の不動産を購入するために必要な資金に充てることができることを意味します。インスタントオファープログラムが普及すると、不動産市場が活性化され、売り上げを拡大できる可能性があるため、 Zillow、Redfinともにインスタントオファープログラムの普及を目指していると考えられています。