2020.7.31
海外営業支援

アメリカの不動産市場のトレンド「PropTech」オンライン化が進むアメリカの不動産ポータルとは?

1.はじめに
現在、米国の住宅市場は上昇傾向にあり、2018年には前年比1.9兆ドル増の、合計市場規模33.3兆ドルを達成しました。その年の年間売上高は1.7兆ドルに達しますが、そのうち約10%に当たる1,700億ドルは、不動産取引関連の手数料が占めています。この手数料の部分には、不動産業者や証券会社、銀行とタイトル会社などが関与しており、この部分の利益に注目してビジネスを行うことが近年のトレンドとなっています。

本稿では、次世代の住宅市場ビジネスとして注目を浴びている「Proptech」について紹介します。アメリカで成長を拡大している二大PropTech企業、ZillowとRedfinの取り組み実例とともに、アメリカのPropTech市場のトレンドを概説しますので、日本企業が不動産業界で海外進出する際のヒントになれば幸いです。

2.Proptechとは?
PropTech(プロパティテクノロジー)は、個人や企業が不動産の調査、購入、販売、管理を行う際に情報技術(IT)を使用することを意味します。例えば、FinTechが金融におけるテクノロジーの活用に焦点を当てているのと同様に、PropTechは不動産業界のニーズにデジタルイノベーションを活用することといえます。

PropTechでは、買い手、売り手、ブローカー、貸し手、家主を含む、不動産市場に関わるあらゆる参加者に対して、手続きや業務のプロセスを合理化することを目指しています。具体的なPropTechテクノロジーの事例としては、不動産の内見を仮想空間で行えるVRソフトウェア、不動産の修理やメンテナンスを報告・依頼するソフトウェアなどがあります。

PropTechについて、市場セグメント別に詳しく見ていきましょう。

①スマートホーム
スマートホーム内の特定の不動産資産を監視、管理、または操作するデジタルプラットフォーム。例えば、不動産所有者に脅威情報を警告するセキュリティ監視システム、無人の部屋の温度を調整するスマートサーモスタット、またはAmazon EchoのAlexaなどのデジタルアシスタントで電源をオン・オフできるスマート電球などがあります。

②不動産の共有
土地、オフィス、倉庫、アパートなどの不動産資産の共有またはレンタルに関連する手続きを促進するテクノロジー。例えば、不動産管理会社が所有する建物に占有されている小売スペースの自動オンライン支払いがあります。

③不動産FinTech
不動産資産の売買を伴うアプリケーション。例えば、購入の承認に関わる事務処理の量を削減するプラットフォームがあります。

現在、PropTechの新しい波が高まっています。従来のPropTech企業は、ソフトウェアのみをベースとするものが多かったのですが、現在では「取引手数料」による利益を期待できる以下のような立場から、PropTechを活用することが注目されています。
●住宅ローンプロバイダー
●証券会社
●エスクロー/タイトル会社

3.アメリカのPropTech企業の紹介
3−1.Zillowの事例
Zillowは、2006年に設立のシアトルに本社を置く企業で、大手不動産情報サイト「Zillow」を運営しています。1億1千万を超える米国の住宅のデータベースを要する売買・賃貸のプラットフォームとして、多くの消費者から利用されています。また2014年には、同業者のTruliaを買収、集約化が進むアメリカの不動産情報業界の中でも力を強めている企業です。

Zillowは、多彩な情報をワンストップ収集、提供できることが強みであり、物件の概要、過去の価格推移、ローン計算機能や価格査定、売買事例などの情報を一気に得ることができます。特に、Zestimateという不動産の想定価格を算出・公開するツールではアメリカの不動産取引の参考になれるほど強い信頼と影響力を有しています。

Zillowの主な収益源は広告掲載料で、大手不動産会社や独立系不動産会社に所属する個人エージェントが支払う広告掲載費でこれまで収益を上げてきました。しかしながら、近年では積極的な提携や事業展開により、不動産情報以外にも、仲介・ローン業者とのマッチング、契約書類サポートなど不動産総合サービスへと事業を拡大しています。

3−2.Redfinの事例
Redfinは、2004年に設立で、Zillowと同じくシアトルを本社とする企業で、大手不動産情報サイト「Redfin」を運営しています。Redfinは不動産情報サイトの運営だけではなく、2006年という初期から物件の購入・販売サービスを展開しているのが特徴です。これによって情報サイトからの広告費と不動産売買からの仲介手数料の両方を収益にできるビジネスモデルを展開しています。

Redfinでは、テクノロジーと不動産のプロのあわせ技によって、非常に高精度な不動産推定価格の算出ができることを売りにしています。Redfinでは、まずAIを活用して不動産価格を査定した後、最終的には地域のエージェントに繋ぎ、推定価格を最終調整します。

3−3.ZillowとRedfinの違い
ZillowとRedfin、どちらの会社も不動産に焦点を当てていますが、スタート地点は大きく異なる分野にありました。Redfinは証券会社から、そしてZillowはメディアと情報会社としてビジネスを始めていたのです。その際、Zillowはブローカーの広告費から収益の大部分を受け取っていました。Redfinは、他の仲介業者よりも少ない手数料を武器にした住宅販売を始め、さまざまな不動産サービスを通じて収益を得ていました。

近年、両社は住宅販売における市場シェアの拡大を目指す中で、ともにビジネスの分野を拡大しており、距離が縮まっています。ただし、Zillowの年間収益が13億ドル、時価総額86億ドルに対して、Redfinは年間収益の4億8,700万ドル、時価総額16億ドルと、Zillowの方がはるかに大きな企業です。

Redfinは不動産業界で長年習慣とされてきた不動産業者やエージェント優位なコミッション割合を、ユーザー優位に変えたゲームチェンジャーとして評価を受けています。

3−4.ZillowとRedfinの目指す未来
競合大手であるZillowとRedfinですが、両者ともにインスタントオファープログラムのサービス拡充を近年狙っていると言われています。実はアメリカでは、所有の不動産を売り、別の家を買うことを、何度も繰り返すことが一般的です。しかし、所有の不動産が売れないままに、新しい不動産を購入した場合には、一度に2つの不動産分の支払い行う、あるいは購入を保留せざるを得ないなど、不動産売買のタイミングには困難がつきものです。

そこで、注目されているのがインスタントオファープログラムです。これは、現在所有の不動産をすばやく売却し、そのお金を次の不動産を購入するために必要な資金に充てることができることを意味します。インスタントオファープログラムが普及すると、不動産市場が活性化され、売り上げを拡大できる可能性があるため、 Zillow、Redfinともにインスタントオファープログラムの普及を目指していると考えられています。

4.新型コロナウィルスによる影響

世界で猛威を振るう、新型コロナウィルスですが、新型コロナウィルスによってアメリカの不動産業界も大きな影響を受けています。具体的には以下のような変化が見られています。

●通常不動産購入前には、オープンハウスと呼ばれる内見を実施しますが、現在、売り手の方が不特定多数の人を家に入れることを避ける傾向にあります。同様に、買い手自身も、オープンハウスに出向くことを控える傾向にあるでしょう。
●エージェントは、オープンハウスの訪問者名簿の情報を元に、不動産購入に強い興味がある人への勧誘・類似不動産の案内などを送ることができません。
●不動産売買に興味がある消費者を集めた地域のイベントの開催が見送られており、そのイベントを介した新しい契約の獲得が落ち込んでいます。
●ビデオなどによるバーチャルツアーの需要が急速に高まっています。
●インターネットやモバイルに対応していない不動産取引に対して不便に感じる人が多くなり、自宅にいながら契約まで行えるサービスの需要が高まっていくでしょう。

これまで不動産業界では、主要なマーケティング媒体として紙媒体の広告が多く利用されてきました。しかし、時代の移り変わりに、新型コロナウィルスの影響が重なり、新しいモードのビジネスへと急速に変化しています。自宅にいながら、不動産情報を検索、見学でき、オンラインで契約を進められるようなインターネットマーケティングが重要になっているのです。

5.おわりに
アメリカにおいて巨大な市場規模である不動産業界ですが、この業界を今後リードしていくのはPropTechだと予想されています。そのような中で、海外のPropTech市場に新しく参入する日本企業が、大手に競合するサービスをいきなり立ち上げ、ビジネスを成功させるのは簡単ではないでしょう。ただ、そのようなサービスに使ってもらえるようなツールやプラットフォームのエリアでは、成功の可能性が高いと考えられます。

実際、日本のPropTechはアメリカに比べると市場規模はまだまだ小さいですが、不動産特化型チャットアプリ「Atlicu」や不動産売買業者向けの業務支援システム「キマール」など、不動産取引にテクノロジーを導入するサービスが増えてきています。日本のサービスは、パーソナライズされたきめ細やかなものが多く、ユーザーに寄り添ったサービスを強化したい海外市場で重宝される可能性があるのです。

今後求められる需要や、まだ発展していないニッチに注目して、海外進出をすることが日本企業にとっては成功の鍵となると考えられます。そして、海外進出で成功を収めた際には、既に日本より進んだ状態にある海外のPropTech市場のノウハウを日本に逆輸入することで、日本国内で大きな新しいビジネスを展開できる可能性も十分にあると考えられます。

本稿がPropTechで不動産業界に参入したり、不動産業においてデジタルイノベーションを活用しようとする企業様のお役に立てますと幸いです。タンデムスプリントグループでは、日本企業によるPropTechの活用や不動産IT事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

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