2021.3.11
海外営業支援

アメリカで注目される持続可能性をコンセプトにした安価な住宅づくりとは

1.はじめに
アメリカでは都市部を中心とした住宅価格の高騰とそれに伴うホームレスの増加が問題となっています。例えば、カリフォルニア州サンフランシスコでは近年、テック産業の好況と連動するように住宅費が高騰し、社会問題となりました。2014年の時点で、サンフランシスコの1ベッドルーム賃料中央値は月3,000ドルを超えており、ニューヨークを抜いて全米一家賃の高い都市となっていました。2019年6月には同賃料中央値は過去最高の3,700ドルまで上昇し、2020年4月には3,500ドル前後となっています。このような賃料高騰を受けて、家を失う人が増加、手頃な価格の住宅の必要性が叫ばれるようになったのです。

さらに、新型コロナウイルスが発生し、アメリカの住宅危機がより顕在化するようになりました。多くのアメリカ人が職を失う中、手頃な価格で安全で快適な家へのアクセスを保証し、エネルギー料金(月々の光熱費)を下げることが重要となっているのです。

本稿では、このようなトレンドを受けて注目されている持続可能性をコンセプトにした住宅の具体的なメリットと、そのような住宅を開発しているスタートアップ企業を紹介していきます。

土地に限りのある日本には、コンパクトでありながら快適な家造りのノウハウがたくさんあります。このようなノウハウを利用すれば、ソフト面ハード面両方から海外進出する大きな追い風となることでしょう。本稿の内容を参考に、日本企業の方が海外進出・海外展開される際の参考にしていただけますと幸いです。

2.持続可能性をコンセプトにした住宅のメリット
2−1.廃棄物の削減

持続可能性を考慮した住宅では、廃棄物となるような資材をできる限り少なくしています。実は廃棄物の問題は、住環境の悪いエリアで特に深刻な問題です。建設廃棄物や解体廃棄物は、低所得地域においては適切な処理がないがしろにされており、不法投棄や不適切管理が頻発しているのです。この結果、その地域の人々に健康上のリスクの問題を引き起こし、また環境保存の点でも汚染や海洋ごみの発生などにつながっています。

持続可能的な住宅では、リサイクル可能な資材を使うことで、ゴミの発生を抑制することが可能です。解体後も新しいプロジェクトに再利用できる可能性が高くなるでしょう。

2−2.省エネ

国際エネルギー機関(International Energy Agency:IEA)によると、商業用および住宅用の建物が世界のエネルギーの約3分の1を消費していると報告されています(https://www.esmap.org/sites/esmap.org/files/DocumentLibrary/ESMAP_Energy_Efficient_MayoralNote_2014.pdf)。建物の中では、暖房、冷房、換気、照明、給湯、調理などに多くのエネルギーが使用されており、この累積は膨大な量となっているのです。持続可能性の高い住宅では、エネルギー効率の高さが特徴です。少ないエネルギーで高いパフォーマンスを示す住宅では、光熱費などの運用コストが低くなります。

例えば電気に関して見ると、省エネ効率の高い仕組みを取り入れたり、ソーラーパネルの導入が例として挙げられます。太陽光発電のような自宅で電気を発生させる仕組みがあれば、運用コストを節約するだけでなく、電力を販売することで収入源を生み出すこともできるのです。

更に、中水使用(中水:水洗トイレの用水など、飲用に適さないが雑用などに使用される水道)や低流量のトイレ、シャワー、シンクを組み込むことで、水の節約にもつながります。水を再利用して節約することで、水道料金を低く抑えることはもちろん、環境面でのメリットも高くなるでしょう。

2−3.建設工事そのものの効率化

新しいタイプの住宅ではモジュール式の建築工事が多く取り入れられています。従来の建築では、資材を建設現場へ搬入し、その場で技術者資材の加工や組み立てを行なうものでした。その結果、廃棄物も多く、非効率で複雑な建設スケジュールになりがちだったのです。

一方、モジュール建築では、従来の建築方式とは異なる自動組立ラインのアプローチが採用されています。資材の加工や組立は基本的に工場で行われ、それらは別々のモジュールとして建設現場に到着するのです。そして、建築現場ではブロックを組み立てるような形で住宅が完成します。このおかげで、従来の住宅を建てるのにかかる時間よりも短い時間で済みます。

全米住宅建設業者協会 (National Association of Home Builders: NAHB) の調査によると、アメリカの標準的な2000平方フィート(約186平米)の住宅1軒の建設には約 8,000ポンド(約3,600㎏)の廃棄物が生じとされています(https://greenbuildingelements.com/2009/01/08/home-constructions-dirty-secret-8000-lbs-of-waste-per-2000-square-foot-house/。モジュール建築で利用される管理の行き届いた工場環境では、こうした廃棄物を大幅に削減できるのです。これは余剰材料を他のプロセスへとリサイクルすることができるとともに、管理された保管庫では風雨などによる材料へのダメージを防ぐことができるためです。

以上のように、持続可能な住宅には様々なメリットがあります。持続可能なデザインでは、健康、コミュニティ、エネルギー効率、美学、快適さのあらゆる面を考慮した、より包括的なアプローチを採用されているためです。結果として、高品質で手頃な価格の家を作ることができ、低所得の人々にとって歓迎されています。さらに、エネルギー効率の高い物件は、光熱費も安くなります。持続可能な住宅は、資源を節約するだけでなく、住民にも生活の質の利益をもたらすのです。

3.注目のスタートアップや公共プロジェクト事例
ここでは持続可能な新しい住宅を展開している注目のスタートアップ企業やプロジェクトを紹介します。

3−1.ニューヨークの集合住宅事業(https://www.tcbinc.org/)

ニューヨーク州ニューヨーク市ブロンクス区は、「治安の悪さ」や「貧困」が問題となっている地域です。低所得者用公団アパートも多くありますが、そのほとんどはあまり良い環境とはいえません。近年、同地区のコミュニティ改善を目的とした集合住宅開発プロジェクトが進んでいます。

例えば、コミュニティビルダーではパークヘブンという新しい集合住宅プロジェクトを始めており、178ユニットの手頃な価格の住宅開発を進めています(
https://www.tcbinc.org/where-we-work/pipeline/item/5084-park-haven.html)
これは、低所得の賃貸人に高品質で持続可能な設計の住宅を提供することを目的とするものです。パークヘブンでは、高性能ビルを採用しており、エネルギー回収換気システムが継続的にろ過された新鮮な空気を提供する、従来の換気システムより優れた空気品質の提供が注目されています。ブロンクス区では喘息の発生率が全国平均よりも高くなっており、優れた換気システムの採用によって、住民の健康と福祉が大きく改善されることが期待されているのです。

3−2.OBY(http://www.tonal.com/)

サンフランシスコベイエリアのスタートアップ企業OBYは、この地域の長年にわたる住宅危機を解決する方法について新しいアイデアを提案しています。OBYは「Our Backyard:私たちの裏庭」という意味が込められており、小さな家を使って、気候変動と手頃な価格の住宅不足に同時に立ち向かうことを目指しています。

OBYでは住宅所有者の裏庭に小さな家を建て、それを市場価格を下回る価格で賃貸します。住宅建築やあらゆる手続きはOBYが代行し、住宅所有者には賃貸収入を提供するのです。具体的には、OBYはまず住宅所有者と賃貸契約を結びます。その後、裏庭の限られたスペースに収まるような小さな2ベッドルームの家を設計し、許可を取得して建設するのです。そして、そこに入居するテナントを見つけます。

OBYが提案する小さな家は、ゼロネットカーボンを目指しており、暖房、お湯、調理などのエネルギー源となるソーラーパネルなど、多くの持続可能な機能を備えています。デザインはシンプルで、住宅はモジュール式のプレハブシステムで建設されます。

3−3.ICON(https://www.iconbuild.com/)

アメリカテキサス州オースティンで2018年に設立された企業ICONは、3Dプリント住宅という全く新しいコンセプトを持つスタートアップ企業です。ICONでは3Dプリント技術を住宅に利用することで、従来の工法の数分の1のコストかつ約1日という超短期間で完成するコンパクト住宅を設計しています。実際、同社は2018年に24時間で350平方フィートの住宅を10,000ドルで印刷することに成功しました。

ICONの最新型3Dプリンター「Vulcanll」は市場購入可能な段階に達しています。オースティンに本拠を置くCieloProperty Groupでは、このプリンターを使用して、Community FirstVillageに元ホームレスのための家を建設しています(https://mlf.org/community-first/)。また、発展途上国で困窮している家族のための住宅建設を進めている非営利団体であるNewStoryは、このテクノロジーを使用してラテンアメリカに50戸の住宅を建設しました(https://newstorycharity.org/)。

4.海外進出・海外展開への影響
手頃な価格の住宅の確保は、サンフランシスコやニューヨークなどのアメリカ大都市だけでなく、世界中の多くの都市で深刻な問題となっています。大きな問題となっているからこそ、ビジネスチャンスとして注目することもできるのです。海外マーケットを視野に入れている日本企業の方は、このトレンドを逃さず、海外進出・海外展開への足がかりとしてみてはいかがでしょうか。

日本の建築技術には古からの知恵が詰まっており、最新の技術と融合することで新しいビジネスへの飛躍させることもできるでしょう。また、コンパクトな住宅は日本でよくあるものですので、そのノウハウを海外展開することも可能です。ハード面での進出だけでなく、アイディアをソフト面で活用することも考えてみると良いでしょう。

タンデムスプリントグループでは、日本企業による海外事業への参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

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