2020.8.22
海外営業支援

新型コロナウィルスによって需要が急増、アメリカの主要な食品宅配サービスのビジネスモデルの特徴

1.はじめに
新型コロナウィルス(COVID-19)のパンデミックにより、家にいながらオンラインで食料品を注文したいと考える消費者が世界的に急速に増えています。例えば、アメリカ国内のデータを見てみると、2020年6月のオンライン食料品の売り上げは72億ドルに達しました(Brick Meets Click/Mercatus Grocery Survey:https://www.mercatus.com/press-releases/june-online-grocery-sales-for-delivery-pickup-climb-to-7-2-billion/)。これは2019年の8月に比較すると、6倍の増加です。また、顧客数に対しても、同時期の比較で約3倍に増加しています。

実は、このようにオンラインで食料品を注文し、自宅まで届けてもらうサービスはCOVID-19のパンデミック前から既に成長過程にありました。そして、パンデミックをきっかけとした需要の高まりにより、成長が加速したのです。なお、オンラインでの食品宅配サービスの市場規模は食料品全体の売り上げが年間7,000億ドル以上であることを考慮すると、まだ僅かなものであり、将来的に大きな成長性を秘めています。

本記事では、アメリカの主要な食品宅配サービスのビジネスモデルを紹介しています。サービスの特徴を比較し、成功の鍵を考察することで、今後日本企業が海外で食品宅配サービスに参入、展開する際の参考になれば幸いです。

2.主な食品宅配サービス
2−1.Amazon Fresh(アマゾンフレッシュ)

・アマゾンプライムメンバー向け
・利用料:プライムメンバーは無料
(ただし、プライムメンバーの一般会費は$ 12.99 /月または$ 119 /年)
・送料:35ドル以上の購入で無料(地域によっては$50以上の購入で無料)

アマゾンフレッシュのサービスは、2,000以上の都市で利用でき、食料品チェーンWhole Foods(ホールフーズ)が注文を処理する地域では2時間で配達されます。消費者は、肉や乳製品から果実、野菜、調理された食品、紙製品まで、あらゆる種類の日用品・食料品を、食料品チェーンと同等の価格で購入できます。食品は温度調節された状態で配送されるため、注文品が届いたときに必ずしも在宅しておく必要はありません。注文品は指定の場所に消費者自身が受け取りに行くことも可能で、その場合最低購入金額の制限はありません。

2−2.Amazon Pantry(アマゾンパントリー)

・アマゾンの全顧客向け(アマゾンプライムメンバーでなくとも利用可能)
・利用料:無料
無料
・送料:5.99ドル。 アマゾンプライムメンバーは35ドル以上の購入で無料

非生鮮品、特に洗濯洗剤など重いものを必要とする消費者から人気のサービスです。アマゾンパントリーでは、5.99ドルの送料で、ダンボール1箱分の日用品・食料品を配達してもらうことができます。5個以上の商品注文で、全額から5%割引、10個以上の商品注文で10%の割引となります。アマゾンパントリーの強みは品揃えが豊富なことで、肉や乳製品から果実、野菜などの生鮮食品以外であれば、ほとんどすべてのものを購入することができます。消費者は注文の過程で、カートに商品を追加すると、箱がどれだけいっぱいになったかを確認できます。

2−3.Instacart(インスタカート)

・インスタカートに登録で利用可能
・利用料:購入総額の5%の手数料。Expressメンバーの場合は手数料が引き下げられる(Expressメンバーの一会費は月額$ 9.99または年額$99)
・送料:3.99ドル〜7.99ドル。Expressメンバーは35ドル以上の購入で無料

ニューヨーク、ボストン、サンフランシスコ、シカゴなどの大都市圏から始まったサービスですが、現在ではより広範囲で利用できるようになりました。インスタカートは、買い物代行プラットホームのような形をとっており、地元スーパーと提携して顧客に代わって店頭で買い物、配達をしてくれます。Safeway、Kroger、Acme、Albertsonsなどのスーパーマーケットチェーン、地元の高級食料品店、Petco(ペット用品店)やCVS(ドラッグストア)などの小売業者に加えて、CostcoやSam’s Club(会員制倉庫型店舗)とも提携しており、消費者のさまざまな日用品・食料品のニーズを満たしてくれると人気が高まっています。消費者がオンラインで注文を入れると、数時間以内に、代行者が買い物を行い、代替品が必要な場合は消費者とやり取りをし、消費者の自宅まで届けてくれるのです。

なお、インスタカートでの販売価格は必ずしも店頭価格と同じとは限りません。それぞれの小売業者はインスタカートの顧客に請求する金額を決定できるので、店頭販売価格にいくらか上乗されることもあるのです。ただし、メーカーのクーポンやプロモーションによる割引も積極的に展開されています。

2−4.Walmart Grocery(ウォルマートグロッサリー)

・ウォルマートグロッサリーに登録で利用可能
・利用料:30ドル以上の購入で無料
・送料:7.95ドル〜9.95ドル。Delivery Unlimitedメンバーは無料(Delivery Unlimitedメンバーの一会費は月額$ 12.95または年額$ 98)

ウォルマートグロッサリーでは消費者がオンラインまたはアプリを介して食料品を注文すれば、手数料無料で店頭に受け取りに行く、あるいは送料を負担して自宅に配送することができます。ウォルマートでは日用品から、食料品、玩具類など幅広い商品を取り揃えており、それを店頭と同じ低価格で買い物ができることが特徴です。

店舗では、注文された商品を買い物袋に詰め、準備が整ったら消費者に連絡を行い、消費者は受け取り場所で購入商品を受け取る仕組みです。受け取りは指定場所で待機するとそこに荷物を持ってくれる仕組みが一般的で、車から降りて店内に入る必要がないので便利です。ウォルマートグロッサリーのサービスは、店舗での受け取りオプションは約3,100店舗、自宅への配送オプションは約1,600店舗で利用できます。

2−5.FreshDirect(フレッシュダイレクト)

・フレッシュダイレクトに登録で利用可能
・利用料:30ドル以上の購入で無料
・送料:$5.99〜、DeliveryPassメンバーは無料($79/6か月またはAnytime DeliveryPassの場合は$129/年、週半ばのDeliveryPassは$39/6か月)

ニューヨークの都市部でのみ展開しているフレッシュダイレクトは、地元の農場や職人の生産者を中心に商品を調達・販売しています。また、ミールキットやジビエ肉やチーズを注文できるオプションもあります。価格は決して安くありませんが、頻繁な販売とクーポンがあります。食品にこだわりをもつ消費者層からの人気が高いサービスです。

3.新規参入の新しいビジネス形態
3−1.仮想コンビニエンスストアチェーン「DashMart(ダッシュマート)」

フードデリバリーサービスの大手、DoorDash(ドアダッシュ)は、最近「ダッシュマート」と呼んでいる仮想コンビニエンスストアチェーンの立ち上げを発表しました(https://blog.doordash.com/introducing-dashmart-1891ecc0257d?gi=dd7655eecbdc)。この仮想コンビニエンスストアチェーンは実店舗を持たず、ドアダッシュアプリ内にのみ存在するものです。同社は米国の8つの都市(オハイオ州コロンバス、オハイオ州シンシナティ、テキサス州ダラス、ミネソタ州ミネアポリス、アリゾナ州フェニックス、ユタ州ソルトレイクシティ、カリフォルニア州レッドウッドシティ)で同サービスを展開し、その後全米に拡大していくと計画しています。

ドアダッシュではこれまでレストランからのフードデリバリーサービスに特化していましたが、近年の日用品・食料品デリバリー市場拡大を受け、新しい分野に挑戦しようとしています。

3−2.Uber(ウーバー)も食料品の配達事業に参入

ウーバーは2020年7月、ラテンアメリカとカナダの一部の都市で食料品の配達事業を開始することを発表しました(https://www.uber.com/newsroom/introducing-grocery-delivery/)。この背景には、2019年後半に行われたCornershopの買収があります。Cornershopはチリのサンティアゴに拠点を置くスタートアップで、ラテンアメリカ市場に食料品のデリバリーサービスを広めた実績がありました。ウーバーではまず、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、ペルーの19都市でサービスを開始し、その後米国市場にもサービスを拡大する予定です。

4.競争力を上げる鍵
前述の既存サービスの中では、インスタカートがオンライン食料品市場の過半数のシェア(57%)に到達する順調な成長を見せています(https://www.foodnavigator-usa.com/Article/2020/08/07/Online-grocery-usership-settles-into-new-normal-finds-Chicory-survey)。これまでは、実店舗の巨大なネットワークを武器にウォルマートが大きなシェアを占めていましたが、インスタカートがここに来て急成長を遂げたのです。例えば、既存第2四半期から第3四半期にかけてでは、インスタカートは+14.22%の成長を見せています。この市場調査を行ったレポートでは、インスタカートの成功は、1つのブランドに限定することなく、さまざまな小売業者を利用できるというビジネスモデルに起因していると考察しています。

現在、多くの企業が食品や日用品のオンライン宅配市場に参入していますが、その中で競合企業に打ち勝てるかどうかは、以下に消費者のニーズに寄り添えるかというところが大きいでしょう。中には急激に発生したニーズに応えきれず、顧客満足度の低下、消費者離れにつながることもあり得ます。注文が急増するなかでも安定的に商品を届けられる事業者は消費者の信頼を得て、パンデミック収束後も事業を継続・成長させられると言えるのです。

5.今後の展望と日本企業の参入について
COVID-19の猛威により、従来の店頭での買い物を避け、オンラインでの注文、自宅への配送サービスを利用する人が増えています。これまでは、便利な新しいサービスという位置づけにあったものが、生活に欠かせないサービスへと立ち位置を変えてきたとも言えます。いまもなお世界はCOVID-19と戦っており、今後もこのようなサービスへの需要の高さは続くことでしょう。

そして、一旦オンライン宅配サービスに馴染み、利便性を実感した消費者は、COVID-19のパンデミックが終焉した後も利用を続けることが予想されます。つまり、本サービスは長期的なビジネス市場として捉えることができます。一方で、成長が見込める市場として、参入企業が続々と登場していることも事実です。今後は、他の競合企業との差別化を図るためのオリジナルの商品展開や、きめ細かいカスタマーサービスなどを提供することが成功の鍵と言えるでしょう。

日本企業が本サービス関連で海外進出を考える場合、アメリカではWalmartやAmazonなどの大手企業が既に参入していることを考慮する必要があります。日本の企業が海外展開として全く新しいサービスをゼロから構築するのはなかなか難しいものでしょう。そこで、既存の大手企業と提携し、プラットフォームの構築や、カスタマーサービスなどのソフト面で海外進出を始めることも一つのアイデアです。まずは、提携という形で海外進出の基盤を作り、その後独自のサービスとして差別化、独立化していくという基本的な手法は、この分野にも当てはまるように思います。

本稿がアメリカでのオンライン宅配市場に参入しようとする企業様のお役に立てますと幸いです。タンデムスプリントグループでは、日本企業によるオンラインサービスへの参入・経営についてご相談を受け付けています。ビジネスと法律の両面からご支援させて頂きますので、下記の窓口まで、いつでもご連絡ください。

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