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マーケティング
2021.10.23

企業のブランドイメージに重要なDE&I、米国大手企業の実例とともに紹介

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1.はじめに

現在の消費者行動の特徴として「意志ある購入者」が増えたことが挙げられます。消費者は自らが共感するメッセージを発信しているブランドを積極的に選択する傾向があります。そのため、企業としても消費者が重視する企業メッセージの創出に、これまで以上に熱心に取り組む必要があります。

その中でも、消費者に注目されているのがDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)に対する企業の取り組みです。これは、以前は、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)と表現されることが多かったものですが、近年ではDE&Iと呼ばれるようになってきています。これらが注目されることとなった背景には、米国で2020年5月に起きたジョージ・フロイドさんの殺人事件があります。この事件をきっかけに起こったBLM運動などにより、マイノリティが抱える社会構造的不平等に対する、問題意識とその改善意識が高まっているのです。

この傾向は、Z世代やミレニアル世代という今後の消費者行動を牽引する若い世代で特に顕著だといえます。実際、The CMO Survey(https://cmosurvey.org/results/)の調査によると、消費者の41%は、企業にDE&Iのメッセージが全くない場合、他のブランドへとシフトする傾向にあることが明らかにされています。また、消費者の81%は、企業にはDE&Iを意識した環境を支援・整備する責任があると感じています。このような消費者行動の変化は、企業にとってブランディング戦略を決定する際に考慮すべき事項です。企業としては、DE&Iに対するブランドの取り組みを消費者に向けて発信するとともに、ブランドコンテンツの中にさまざまな人種、性別、宗教などの人々が含まれていることに配慮する必要があるでしょう。

本稿では、DE&Iを推進する際の注意点について説明するとともに、米国企業のDE&Iの行動宣言を紹介します。日本企業が海外展開する際には、現地企業の良い事例を分析することはとても役立ちます。海外展開の際のブランディングの参考にしていただけますと幸いです。

※ダイバーシティとは、多様性の意味であり、年齢、性別、民族、宗教、疾病、性自認、性的指向、教育、国籍等の違いを尊重することです。エクイティとは、公平性の意味であり、情報、機会、リソースへのアクセスを、すべての人に公平な扱いを保証しようとするものです。インクルージョンとは、包括性の意味であり、どのような個人や集団であっても、歓迎され、尊重され、支援され、評価され、参加できるような環境を作ることです。

2.統計情報

CMOによる調査では、DE&Iに対する企業のマーケティング支出が昨年度よりも8.9%増えており、大企業においては特に多くの支出となっていることが明らかになりました。マーケティング全体の支出は3.9%減少していることを考えると、DE&Iの推進がマーケティングにおける優先事項であることがわかります。

一方で、DE&Iの推進を進めていくの中でも、企業の内的側面と外的側面の間には大きな違いが見られました。すなわち外的側面であるコミュニケーションとブランディングの改善に向けて投資を拡大した企業は60%以上に上ったものの、内的側面である研修(53.4%)や採用(50.3%)など、人的資本に関連する社内での推進は、変化の度合いが低かったのです。

3.企業がDE&Iを推進する際のハードル

DE&Iの推進は企業にとって容易なものではありません。

その理由として、DE&Iの推進は、企業の業績との関連性が弱いと思われることが多く、予算を確保するのが困難である点が挙げられます。しかし一方で、多様性が高いチームでは、イノベーションが進み収益が高くなるというデータもあります。さらに、雇用主のDE&Iへの取り組みに関心を持つ従業員は多く、DE&Iを推進する企業では、優秀な人材を確保し、従業員の定着率を高めるメリットがもたらされることもあるのです。

また、DE&Iを企業組織に導入するためには長期的な工程を要し、一時的な投資では達成できません。一時的なアピールとして、多額の資金を投入した企業では中身のない売名行為だと批判された事例もあります。時間をかけて企業文化の中でDE&Iに取り組んでいくことが成功へつながるともいえるでしょう。

また、企業にとってDE&Iステートメントを発表することには大きな意味があります。DE&Iステートメントは、企業のDE&Iへの取り組み姿勢や改善意欲を示す、公的な方法です。さらに、企業に取り組むべき目標を与え、より良い変化をもたらすのにも役立つでしょう。

DE&Iステートメントに具体性を持たせるために、企業は自社ウェブサイト上で「DE&Iのアクションプラン」 ページを公開することをおすすめします。実行予定の活動や改革について詳しく説明することで、表面的な取組みではなく、実際の行動を伴うものだと広く伝える効果も期待できるのです。

4.DE&Iへの取り組み実例

企業はDE&Iへの取り組みとして、様々な動きを見せています。

世界的な複合企業WPPは、2020年6月、奴隷となっていた黒人が解放されたことを祝う祝日「Juneteenth」にちなんで、社内でのインクルージョンの取り組みや社外の活動を支援するために3,000万ドルを拠出すると発表しました。更に同年7月、WPPは、社内差別に対抗するためのインクルージョン協議会の設立発表とともに、従業員の多様性を表す人口統計情報を社内従業員向けに報告しています。

米国大手通信会社Verizonは2020年7月、2030年までにマイノリティ層を中心とした50万人の労働者のスキルアップを目指す「Citizen Verizon」プロジェクトを発表しました。また、米国アパレル大手のGAPが展開するブランド、Old Navyでは、5人の若い活動家を起用した「We Are We」キャンペーンを開始し、その包括性をアピールしています。

米国最大手放送局であるCBSでは、同社の主要番組における人種問題の取り扱いについて長年にわたり批判を受けてきましたが、2020年11月、今後、同社のリアリティ番組のキャストの少なくとも50%を黒人にすることを発表しました。

DE&Iへの取り組みはエンタメ業界にも広がっています。マッキンゼーの調査では、同業界では、黒人コミュニティへの包括性問題を理由に、年間100億ドルの損失を被っている可能性があると指摘されています(https://www.mckinsey.com/featured-insights/diversity-and-inclusion/black-representation-in-film-and-tv-the-challenges-and-impact-of-increasing-diversity)。そして、2020年9月、映画芸術科学アカデミーは、アカデミー作品賞の選考基準として、新たに「多様性」の項目を含めることを発表したのです。

これらは、企業のDE&Iへの取り組みとして、多くの消費者から好意的に受け止められています。一方で、企業内でのDE&Iの継続的な活動への取り組みを疑問視する声もあります。

コーヒーチェーン世界大手の米スターバックスの事例は、消費者に向けた企業DE&Iの取り組みと実際の内部慣行との間のギャップをよく表している事例と言えます。

2018年、スターバックスは、多くの店舗を半日閉鎖して人種偏見に対する従業員への研修を行うと発表しました。また、2020年6月には、同社は人種的正義を重視した活動を支援するために100万ドルを寄付すると発表しました。しかし、その直後に同社では、BLMを支持する商品を従業員が身につけることを禁止する内部メモが流出し、世間から非難を浴びました。批判にさらされた同社はその後方針を転換し、BLMのTシャツをバリスタに配布する運びとなったのです。さらに、2021年1月には、同社がサービスを提供する地域社会における公平性と包括性を支援するために、1億ドルの基金を設けて「スターバックス・コミュニティ・レジリエンシー基金」を設立することを発表しました。

本件で露呈したのは、企業が公に見せる姿と、社内での発言との間のギャップです。いくら公の場でDE&Iを推進していたとしても、社内でその価値観を共有または実践できていなければ、パフォーマンスだと批判される恐れがあることに注意する必要があるでしょう。

5.海外進出・海外展開への影響

日本企業に対しては、集団意識の強さなどを理由に、自分と違う属性がある人に対して不寛容な文化だと指摘されることもあります。しかしながら、海外進出を考えている日本企業においては、DE&I重視の国際的な流れに乗り遅れないよう特に注意しなければなりません。この際、表面的な取組みではなく、企業の内部から時間をかけて取り組んでいくことが大切だといえます。

また、日本企業が海外進出する際には、いかに人材を確保するかが課題となりがちです。DE&Iへの取り組み方によっては、企業価値を向上させ、優秀な人材を確保することにもつながるでしょう。また、人種や性的指向、年齢などにとらわれれない企業風土があれば、従業員のモチベーションもあがり、離職率を下げることも可能となります。多様なバックグラウンドを持つ人々が集まれば、新しいアイディアの創出も期待でき、海外進出・海外展開の成功に向けて、大きな武器となり得るのです。

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