１．はじめに

米国のケータリング市場は歴史が古く、多様なサービスが展開されていますが、近年、新しい波が押し寄せています。健康志向やサステナビリティ、テクノロジーの活用などのトレンドが市場を変化させ、新しいニーズに対応したケータリングサービスが増えています。そのため、これから参入する企業にも新しいチャンスが存在しているといえます。

米国ケータリングビジネスのトレンドを把握することで、日本企業は市場ニーズに合わせた戦略を立て、競争力を高めることができ、成功確率を向上させることが可能となります。

本稿では、海外進出を検討する日本企業向けに、米国のケータリングビジネのストレンドと市場概況について詳しく解説します。市場規模や競合状況、最新のトレンドや人気のサービス、さらには成功事例を通して、日本企業が米国ケータリング市場で成功するためのポイントを探りましょう。

２．米国ケータリング市場の概況

米国のケータリング市場は、その規模と成長率が世界の中でも顕著なものとなっています。2020年には、新型コロナウイルスの影響で市場が縮小しましたが、2021年以降は急速な回復が見られています。2021年の米国ケータリング市場規模は約600億ドルであり、2020年と比較して8.7%の成長が見られました（ Statista：https://www.statista.com/statistics/1246924/catering-services-market-revenue-united-states/ ）。さらに、2021年から2026年の間の年平均成長率（CAGR）は4.4%と予測されており、これは世界のケータリング市場の中でも高い成長率です（ Technavio：https://www.technavio.com/report/catering-services-market-industry-analysis ）。

この成長の背後には、米国経済の回復、企業や個人によるイベント需要の増加、新しいケータリングトレンドへの対応が挙げられます。また、健康志向やサステナビリティ、テクノロジーの活用といったトレンドも市場拡大の要因となっています。このような状況から、今後も米国ケータリング市場は拡大が続くことが見込まれます。

３．米国ケータリングビジネスのトレンド

３−１．ヘルシーフードとスペシャルダイエットの需要増加

近年、健康志向が高まる中で、ヘルシーフードやスペシャルダイエットへの需要が増加しています。米国のケータリング市場でも、ビーガン、ベジタリアン、グルテンフリー、低フォドマップなどの特別な食事制限を持つ顧客のためのメニューが求められています。企業は、栄養価の高い食材を使用し、バラエティ豊かなオプションを提供することで、より多くの顧客にアピールすることができます。

３−２．サステナビリティと地産地消の取り組み

サステナビリティと地産地消は、ケータリング業界で重要なトレンドとなっています。顧客は、環境に配慮したサービスや地元の農産物を使用したメニューに価値を見いだしています。ケータリング企業は、環境負荷の低い包装材やリサイクル可能な食器を使用し、地元農家と連携して新鮮で高品質な食材を提供することで、顧客の信頼を獲得できます。

３−３．テクノロジーの活用（オンライン注文、配送追跡など）

デジタル技術の進化に伴い、オンライン注文や配送追跡などのシステムが一般化しています。顧客は、スマートフォンやウェブサイトを使って簡単に注文できるようになり、ケータリング企業は効率的な運営が可能となっています。また、顧客の注文データを分析することで、需要予測やメニュー最適化に役立てることができます。

３−４．個別化とカスタマイズの重視

米国ケータリング市場では、顧客の個別の要望に応えるカスタマイズが求められています。例えば、アレルギーや好みに合わせたメニュー変更、特定のテーマやイベントに合わせた料理提案などです。顧客ニーズに対応することで、リピーターや口コミによる新規顧客獲得が期待できます。

３−５．コラボレーションとパートナーシップの強化（飲食店や地元企業との連携）

ケータリング企業は、飲食店や地元企業との連携を通じて、新たなビジネスチャンスを見つけたり、顧客にユニークで魅力的なサービスを提供することができます。例えば、地元の人気レストランと提携して独自のメニューを開発したり、地域の醸造所やワイナリーと協力して特別なドリンクメニューを提案することができます。

また、地元の農家や生産者と連携することで、新鮮で高品質な食材を提供し、顧客に安心感を与えることができます。さらに、他業種の企業との協力も有益です。例えば、イベント会場の提供や装飾、音響、照明などのサービスを一緒に提供することで、顧客に対してワンストップソリューションを提案することもできるでしょう。これらのコラボレーションとパートナーシップは、ケータリング企業にとって競争力向上の鍵となります。

４．米国で人気のケータリングサービス

４−１．フードトラックケータリング

フードトラックケータリングは、移動式のキッチンカーで現場で料理を提供するサービスです。例えば、Kogi BBQ（ https://kogibbq.com/ ）は、ロサンゼルスを中心に活動しており、韓国料理とメキシコ料理を融合させたフードトラックで、イベントやパーティーで大変人気があります。

４−２．バーテンダーサービス

バーテンダーサービスは、プロのバーテンダーがイベント会場でカクテルやドリンクを提供するサービスです。Hire A Mixologist（ https://www.mixologyclassesus.com/ ）は、カスタマイズされたカクテルメニューを作成し、ゲストに印象的な体験を提供します。

４−３．コーポレートケータリング

コーポレートケータリングは、企業向けのケータリングサービスで、会議や研修、社内イベントなどで利用されます。Cater2.me（ https://cater2.me/ ）では、その地域の最高のレストランやフードトラックから選りすぐりの料理を提供し、企業に最適なケータリングを提案します。

４−４．ウェディングケータリング

ウェディングケータリングは、結婚式や披露宴で提供される料理やドリンクのサービスです。Great Performances（ https://www.greatperformances.com/ ）は、ニューヨークを拠点とし、オーガニックや地産地消にこだわった美味しい料理を提供して好評を得ています。

４−５．テーマ別イベントケータリング

テーマ別イベントケータリングは、特定のテーマに沿った料理やデコレーションを提供するサービスです。Creative Edge Parties（ https://www.creativeedgeparties.com/ ）は、クライアントの要望に応じた独自のテーマを提案し、料理やデザインでその雰囲気を演出します。

５．米国市場で成功するためのポイント

５−１．市場調査とターゲット設定

競争が激しい米国市場で成功するためには、まず市場調査を行い、ターゲット市場を明確に設定することが重要です。地域のケータリングニーズや競合企業の強み・弱みを把握し、自社のサービスがどのような顧客層に受け入れられるかを見極めます。ターゲット市場を明確にすることで、効果的なビジネス戦略の立案やリソースの最適化が可能になります。

５−２．顧客のニーズに応えるメニュー開発

顧客ニーズを把握し、それに応じたメニュー開発を行うことが差別化ポイントとなります。例えば、健康志向の高まりや食の個別化に対応したメニューの提案や、地元産の食材を活用した地域性を強調したメニューなどが考えられます。顧客の要望に柔軟に応えることでリピート率や口コミによる新規顧客獲得が期待できます。

５−３．効果的なプロモーション戦略

適切なプロモーション戦略を立てることで、顧客獲得やブランドの認知度向上が図れます。SNSやウェブサイトを活用し、ターゲット層にアピールするコンテンツやキャンペーンを展開します。また、口コミやインフルエンサーとの協力も効果的なプロモーション手段となります。

５−４．適切な設備・人材・サプライチェーン管理

適切な設備・人材・サプライチェーン管理が、企業の運営効率やサービス品質に大きく影響します。最新のキッチン設備や技術を導入し、スキルアップやチームビルディングに力を入れた人材育成を行います。また、サプライチェーン管理を最適化し、安定した食材調達やコスト削減を図ります。

６．海外進出・海外展開への影響

日本企業が米国ケータリング市場で成功するためのポイントは、まず独自性と日本の文化や料理の魅力を活かしたサービスを展開することです。日本料理は世界的に人気があり、ヘルシーで美味しいというイメージが強いため、健康志向や食の個別化に対応したメニュー開発が可能です。また、和食の技法や盛り付け、サービス精神などの日本の伝統文化も顧客に新鮮な体験を提供できる要素となります。

次に、地元の市場や文化を理解し、地域に根ざした事業展開を行うことが重要です。地元産の食材や地域の食文化を取り入れたメニューやコラボレーションを通じて、地元の顧客や企業とのつながりを築くことができます。さらに、現地の人材を採用し、多様な視点を持つチームを作ることで、市場ニーズに柔軟に対応し、競争力を高めることにつながるでしょう。

今後の展望として、テクノロジーの活用も忘れてはなりません。オンライン注文や配送追跡、食材の透明性を向上させるプラットフォームなどを利用し、顧客に快適な利用体験を提供することを心がけましょう。また、新たな市場や顧客層への展開が求められるため、フードトラックやポップアップイベントなど、柔軟なビジネスモデルを検討することも重要です。これらの取り組みを通じて、日本企業は米国ケータリング市場で独自の地位を築くことが可能となるでしょう。