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注目マーケティング
2022.09.16

米国小売りビジネスでは一般的なプライス・マッチ制度、その長所・短所とは?

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1.はじめに

価格による集客効果はオンラインショップと実店舗の両方において大きいものです。消費者は価格を比較し、最安値で買えるお店を探しており、お得な商品を見つけたいと考えています。つまり、消費者にとって価格は、常に最重要事項だといえるものです。

実際の調査でも価格重視の結果が現れています。3,000人以上の新学期の買い物客を対象にしたある調査では、82%が、オンラインで買い物をする主な理由は価格を比較するためだと答えているのです(https://www.wiser.com/pricing-intelligence-wiser-solutions/?utm_source=wiser-blog&utm_medium=single-post)。

このことは、ターゲット層にアピールするための最適な価格戦略を小売業者は常に模索する必要があることを意味します。その価格戦略のひとつが、プライス・マッチです。これは、ある小売業者が競合他社より安い価格に合わせることであり、通常、消費者がより良い価格の証拠を提示した場合に行われます。

競争が激化する今日の小売市場において、プライス・マッチ・ポリシーがうまく働く場面も多く、米国では多くの小売業者が導入しています。日本企業が海外進出する際にも、検討すべき価格戦略の代表格とも言えるでしょう。そこで本稿では、プライス・マッチの長所と短所について見ていくとともに、米国企業の具体的なプライス・マッチ・ポリシーについて紹介します。

2.プライス・マッチの長所とは?

2−1.競争力のある価格を常に維持できる

小売業にとって、販売価格の競争力は重要な要素です。しかし、特に、手作業で商品の監視や再価格設定を行っている場合は、価格競争力を維持するために多くの労力が必要になることもあります。

そこで、プライス・マッチを利用することで、競合他社を監視する責任を消費者に転嫁することができ、それこそがプライス・マッチの魅力です。他の小売業者の動向に注意を払わないということではありませんが、消費者が価格差を発見し、貴社に直接持ち込むことができるという仕組みを活用することで、価格競争力を高めるための労力を大きく低減することができるのです。

また、価格以外の利点に焦点を当てることで、品揃え、配送、ロイヤルティ、サービス、その他の要素によって、集客効果を高めることも期待できます。

2−2.消費者の信頼感向上

消費者は特に情報に敏感であり、ビジネスモデルや経営者の意見に賛同するかどうかなど、倫理的な配慮に基づいて購入先を決定する人が多くなっています。消費者は評判の良い、誠実で公正な小売業者から購入することを求めているのです。

プライス・マッチは、その一助となります。なぜなら、表面的には、プライス・マッチ戦略は、消費者に利益をもたらし、小売業者に不利益をもたらすような仕組みをとっているからです。より高い価格を表示していたとしても、消費者ができるだけお得に買い物ができるように、数ドルの損をいとわないという小売業者の誠意ある取り組みだと受け取ってもらえるでしょう。

プライス・マッチによって、商品やサービスを頻繁に購入・利用するロイヤルカスタマーを生み出すことができるのです。

2−3.販売数の向上

小売業にとって最大の目標の1つは、当然ながら商品を売ることです。プライス・マッチは、その目標に直接的な影響を与えることができます。

消費者の立場で考えてみましょう。ある小売店で消費者が欲しい商品を見つけたとき、競合店がより安い価格で商品を出品しているのをスマホで確認したとします。消費者がその情報を店員に提示すると、店員はその価格に合わせると言うとどうするでしょうか?消費者はそのまま会計を済ませ、満足して家に帰ると想像できます。

逆に、プライス・マッチ・ポリシーを導入していない場合、消費者は競合店から購入するかもしれません。つまり、プライス・マッチ・ポリシーによって、商品あたりの利益が減ったとしても、全体としての販売機会を増やすこともあるのです。

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3.プライス・マッチの短所とは?

3−1.マージンの悪化

マージンはビジネス全体に関わる重要な要素となります。マージンの悪化は、プライス・マッチの活用に反対する最大の理由です。

小売業者は、利益を上げ、営業経費をカバーするのに十分なマージンを確保できる価格設定をしています。そこに、ある消費者がやってきて、その商品が競合他社より安い価格で売られているのを見た、と言ったとしましょう。その価格に合わせると、マージンが減少し、利益が減少します。

これはあまりいいシナリオではありません。小売業者によってコストは異なるため、ある業者にとって有益なことが、他の業者にとって有益でない場合もあります。小売業者は、競合の販売価格に合わせることなく価格をコントロールすることで、マージンを守ることができるのです。

3−2.価格競争の可能性

プライス・マッチ・ポリシーは、価格競争につながることもあります。価格競争は、小売業者が常に最安値を目指すために一進一退の攻防を繰り広げることで発生します。ある小売業者がライバルとなる競合他社の価格を合わせると、ライバルはさらに価格を下げてくる。この繰り返しが価格競争です。価格競争には、利幅の悪化や、サービスの低下、商品の品質低下などの懸念があります。

3−3.競合他社によるショッピングの助長

最後に、プライス・マッチの最大の短所は、消費者が競合他社を訪れることを本質的に助長することです。どの小売業者も、競合他社ではなく、自社の店舗に消費者を誘導することを目的としています。

しかし、プライス・マッチを行うと、消費者は全く逆の行動を取るようになります。つまり、消費者が他の店の価格を確認するために他の店に足を運ぶことを助長してしまうのです。もし、消費者が他の店の商品を気に入ったらどうでしょう?自分たちの店舗の販売機会を失う危険性があります。

4.米国大手小売業者の事例

米国では、プライス・マッチ・ポリシーを採用している大手小売業者が複数あります。

ウォルマートのプライス・マッチは、ウォルマート店頭で、同一の商品についてオンライン小売業者より安い価格を見つけた場合に、その価格と一致させるというものです。

条件としては、①消費者がレシートと、全く同じ商品の競合他社の広告価格を証明するものを持参すること、②その商品の在庫があること、③指定の競合他社(オンライン販売を行っている25社)であることのすべてを満たした場合に限り、プライス・マッチを行います。

ベスト・バイでもプライス・マッチ・ポリシーを採用していますが、同一商品の複数購入やクリアランス商品、ブラックフライデーに購入された商品は除外されます。

JCペニーは、広告に掲載されている価格が実店舗での価格である場合を除き、プライス・マッチを行わないとしており、オンラインショップとのマッチングも行いません。

このようにプライス・マッチを採用している小売業者は複数ありますが、遡及的なプライス・マッチの可否や価格調整する条件などは各社に違いがあります。

また、EC最大手のアマゾンではプライス・マッチを全く行っていません。その代わりに、市場での競争力を維持するために積極的な再価格設定に投資しています。

5.海外進出・海外展開への影響

プライス・マッチはケースバイケースの戦略です。必要なマージン、利益と損失、競合他社、そして市場の規模全体を総合的に見ることで、それが自社に適しているかどうかを判断する必要があります。さらに、競合他社の価格をモニタリングし、ダイナミック・リプライシングなどの補完的な価格戦略も検討する必要があるでしょう。多くの場合、複数の戦略を含む全体的なアプローチで価格設定を行うことが、最も効果的な方法です。

また、日本企業が海外進出する場合には、競合他社の市場規模についても考慮する必要があります。特にプライス・マッチ・ポリシーを採用している大手競合他社がすでにいる場合には、長所となるメリットを享受できないまま、マージンが減る恐れがあるため注意が必要です。

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