アメリカ進出・展開を目指す日本企業をサポートするTandemSprint, Inc.

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アメリカ進出・展開を目指す日本企業をサポートするTandemSprint, Inc.

製造・ものづくり
2020.09.22

アメリカで加速する無人化の波 〜botコミュニケーションや無人配送、接客ロボットなどの実用事例をご紹介〜

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1.はじめに

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)のパンデミックにより、アメリカやヨーロッパ各国では外出禁止令が発令されるなど、人々の生活は様変わりしました。そして、今までのように気軽に外出できないことで、botシステムや無人ロボットなどの人と人との接触を避けるサービスの導入が加速しています。医薬品や食料品の提供、飲食店の運営は人々の生活を維持するために必要不可欠ですが、人と人との接触を最小限に抑えた上で、これらのサービスを継続する際に、botシステムやロボットが大きな役割を果たしてくれるのです。

利便性と社会とのつながりをともにもたらしてくれるbotシステムやロボットの活用は、高齢者や身体障害者、孤立環境で生活している人々にとっては特に有意義です。以前より、病院や大学、空港、企業など様々な場面で利用されてきましたが、ここに来てより身近な存在として運用されるようになってきました。

海外進出を考えている日本企業にとって、勢いのあるビジネスの潮流を察知し、その波に乗ることは重要です。関連技術を持った日本企業にとってはその技術を売り込み海外進出をするチャンスとなり得ます。そうでなくとも、新しい技術を取り入れたサービスを導入することで、メディアや消費者から注目されやすくなるという効果も得られる可能性があります。

本稿ではアメリカのテック企業が提供するbotシステムやロボットの活用事例を紹介します。Amazonのような巨大企業の事例から、小規模ビジネスにおける事例まで含んでいますので、様々な形態のビジネス関係者の方に関心に持っていただき、海外進出のヒントにしていただけますと幸いです。

2.botシステムによる健康相談サービス

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) によるパンデミックが広がると、COVID-19 の症状がある人、病気に関して質問したい人など、不安を感じている人たちから病院や保健所等へ連絡が殺到するようになりました。その結果、対応機関のリソースはパンク、急増した問い合わせにいかに対応するかが急務の課題となったのです。しかし、COVID-19の感染防止の観点からは、安易にコールセンターを増設し、そこに増員したスタッフを配置させるわけにはいきませんでした。そこで注目されたのが、botシステムを用いた仮想アシスタントの導入です。

現在、世界的に利用されているのが、米国企業マイクロソフト社が提供するMicrosoft Healthcare Bot サービスです。実はこれは、COVID-19が猛威を振るう前から医療機関で使われており、本来は一般的なバーチャルヘルスアシスタントとして対応できるよう設計されたものでした。それが、COVID-19 の大流行によって世界中の医療システムが問い合わせの急増に苦慮する中で、米国、ヨーロッパ、中東の組織において、COVID-19 に感染した疑いのある患者をスクリーニングするツールとして使われるようになったのです。

COVID-19関連の問い合わせでは多く場合、パターン化された質問が行われています。そのため、botシステムによる自動応答システムとの親和性が高く、コールセンターよりも処理速度の早いbotシステムが、人によるコールセンターでの対応に取って代わることとなりました。botシステムを通じて、症状を振り分けることで、医療スタッフと同等の精度でリスクの高い患者を特定することも可能です。そして、治療が必要だと判断された患者は人間の担当者にスムーズに引き継ぐことができます。

Microsoft Healthcare Bot サービスをベースに医療機関が作成した COVID-19 症状に関するbotシステムでは2020年3月以降の約1ヶ月のうちに、 1,230件、1,800万人、 1億6000 万件以上のメッセージの対応実績という成果を出すことになりました(https://news.microsoft.com/transform/how-international-health-care-organizations-are-using-bots-to-help-fight-covid-19/)。

botシステムを使えば、人々からの問い合わせに対応し、症状別に振り分け、次にどのようなアクションを取るべきかパーソナライズされた情報を提供することができます。そのため、医療機関への問い合わせボリュームを大幅に軽減することができるのです。

3.自動操縦ロボットを利用した無人配送サービスの実用化

COVID-19のパンデミックの影響で、アメリカ各地でロックダウンが発生し、食料品や生活必需品の買い出しを配送サービスに頼む人が急増することとなりました。それに伴い、eコマース大手の米アマゾンにおいても需要が急増、一時期欠品の続出や配送の遅れる結果となったのです。さらに、米アマゾンでは複数の倉庫でCOVID-19の集団感染が発生し、感染防止対策が不十分であり、過酷な状況を従業員に強いていると批判が発生しました。

このような背景もあり、米アマゾンを始めとしたeコマース企業では、配送プロセスの無人化に取り組んでいます。それが自動運転技術を用いた配送車やロボット、ドローンです。実は、これらの無人化モデルが実現できれば、米アマゾン自身にもコスト面で大きなメリットとなります。アマゾンのeコマース事業の配送コストの過半数は最後の集荷拠点から配送先に商品を届けるまでの最終ステップに費やされており、この部分を無人化することができれば、全体のコストを大幅に削減できるのです。

アマゾンは無人配送に関する特許取得や、関連技術への資金投入、事業提携を積極的に進めています。例えば、ドーロンの安全性対策をみると、飛行中のドローンが合体する技術、正常な飛行が困難になるとドローンが自己破壊する技術、ドローンのハイジャック防止技術などの関連特許を次々に取得しています。さらに、2019年2月には自動運転技術を開発するシリコンバレーのスタートアップ企業、オーロラ・イノヴェイション(Aurora Innovation:https://aurora.tech/)に対し、シリーズBラウンドの資金調達5億3000万ドルの一部を出資しました。

こうした流れの中で、2020年、無人ドローン実証実験に向けた動きが加速しています。マゾンは、2019年5月に配送用ドローン「Prime Air」を発表し、30分以内の配送時間で、配送範囲は15マイル(約24km)、5ポンド(約2.26kg)までの荷物を配送する計画を進めています。そして、2020年8月末、同社は米連邦航空局(Federal Aviation Administration:FAA)からドローンを利用した航空運送業者としての認可を受けたことが明らかになりました。これにより、米アマゾンは、アメリカ国内で試験運用を開始することができ、ドローンによる無人配送システムの実用化が大きく前進することとなります。

米アマゾンは現在42機あるPrime Airを7〜8年後には200機にまで増設する計画です。これによりユナイテッド・パーセル・サービス(United Parcel Service Inc:UPS)やフェデックス・コーポレーション(FedEx Corporation:FEDEX)など、配送業界に大きな影響を与える可能性があります。

4.様々な分野で対人サービスを担うロボット

従来、医療の現場にはロボットの導入が進んでおり、例えば遠隔操作で手術を行ったり、人間の手では難しい細かい手術を行うことのできる医療ロボットが開発されていました。しかし、今回のCOVID-19のパンデミックにより、医療スタッフの人手不足や院内感染防止の観点から、ロボットの活用を望む声が高まってきています。

医療の現場では、器具の運搬や患者の受付など、医療や看護の専門的な知識が不要な雑務も多くあります。そのような雑務をロボットに任せることで、専門職員の作業負荷軽減につながり、患者の救命に集中することを可能にするとともに、医療従事者の安全確保にもなるのです。

米国企業Deligent Robotics(https://diligentrobots.com/)が開発した「Moxi」は看護師支援ロボットとして、看護師を専門知識不要な雑務から解放してくれます。また、患者との必要以上の接触を回避できることで、院内感染のリスク軽減にもつながると期待されています。

他にも、ロボットの導入を全面的な売りにしている面白いビジネスも出てきています。例えば、アメリカ・イリノイ州にある大都市シカゴにあるホテルEMC2(https://hotelemc2.com/)では、LeoとCleoという名前のロボットがホテルの廊下とエレベーターをシームレスに移動して、部屋までのアテンドやルームサービスの提供してくれます。

カリフォルニア州ロサンゼルス郡パサデナのダウンタウンにあるファーストフード・レストランでは、ロボットのFlippyがキッチンスタッフとして働いています。このFlippyはロボット工学と機械学習の長年の研究の成果として誕生したもので、モーター、センサー、チップ、処理能力において最新の技術を利用しています。

Flippyを開発した企業、Miso Robotics社(https://misorobotics.com/flippy/)によると、Flippyは、従業員を最低賃金で雇用するよりもコストが安く、即戦力のキッチンスタッフとして稼働できるということです。また、ロボットなので急病で休みシフトに穴が開くというようなこともありません。従来、ロボットアームの価格は非常に高額で、レストランの店舗に導入するのは非現実的な状況でしたが、現在では10,000ドル未満に価格が急落しています。

このように、技術の向上と低価格化、そしてCOVID-19の影響が重なったことで、今後は人の代替となるロボットが急速に広まることになるでしょう。ロボットによる接客サービスが日常の光景となるのも、遠い未来ではないかもしれません。

5.海外進出・海外展開への影響

COVID-19の世界的な大流行により、人と人との接触を回避する手法に人気が出ています。そのため、すでに成長傾向にあった無人化技術が、今後急激な勢いで発達していくことが予測されます。特に人が密集する労働環境や感染のリスクが高い職場では、感染症の影響を受けない無人化技術が非常に重要となってくるでしょう。今後、産業分野を問わず、大きく成長する技術だとも言えます。

これまでロボットなどは非常に高額で、大手テック企業など資金力のあるところでしか使用できない存在でした。しかし、現在では価格が手頃になり、ホテルやレストランなどで気軽に導入できる存在となりました。海外進出をする企業にとって、現地のビジネスの流行を把握し、その波に乗ることは重要です。今後無人化の波が進むにつれ、無人化システムを導入していないビジネスに対して消費者は遅れていると感じることも出てくるかもしれません。

無人化技術と人間とがどのように共存していくかは難しい問題ではありますが、効率化や安全につながる無人化技術を積極的に導入し、時代にあった労働環境、接客環境を提供することはビジネス継続の鍵だと言えます。

日本にはロボット関連分野に強い基盤があります。今回の新しい波はビジネスチャンスとして、海外進出のきっかけになる可能性もあります。また、関連分野以外の企業でも、自社事業の海外進出の際には自動化や無人化サービスの導入を検討することで、新しい事業形態が実現できるかもしれません。

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