アメリカ進出・展開を目指す日本企業をサポートするTandemSprint, Inc.

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マーケティング
2020.12.07

カスタマーサービスとしての機能が進むアメリカ企業のソーシャルメディア事情

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1.はじめに

ソーシャル・ネットワーキング・サービス(social networking service、SNS)は上手く使えば企業にとって大きな武器になる存在です。カスタマーサービス、マーケティング、販売など活用場面は様々で、SNSを通してブランド力を高めている事例は多くあります。特に、近年ではSNS上でカスタマーサービスも行うことが一般的になってきており、企業のSNS運用のあり方は大きく変わっているのです。

SNSカスタマーサービスの重要性は多くのリサーチによっても裏付けされています。例えば、企業アカウント宛にメッセージを送った中の76%は、カスタマーサービスを目的としたものです(https://www.facebook.com/iq/insights-to-go/among-people-surveyed-across-4-markets-who-message-businesses-over-76-message-businesses-to-get-customer-service-support-for-a-product-or-service/?q=support)。また2018年のホリデーシーズンに企業のSNSアカウント宛にメッセージを送った顧客は全体の3分の2(67%)にも上りました(https://www.facebook.com/business/news/insights/conversational-commerce)。

顧客の64%は、企業に問い合わせを行う際に、電話するよりもメッセージを好むこともわかっています(https://www.facebook.com/business/news/insights/5-reasons-messaging-is-taking-flight-with-travelers)。
特に、25歳未満の世代ではSNSを通したカスタマーサービスを好む傾向にあり、同世代の32.3%はSNSがカスタマーサービスの最善の方法だと考えているのです(https://www.consumerreports.org/customer-service/got-bad-customer-service-how-to-complain-well-and-get-results/)。顧客側はSNSを介した問い合わせに迅速さを求めており、83%は1日以内の回答を、半数近くは1時間以内の回答を期待してます(https://www.statista.com/statistics/808477/expected-response-time-for-social-media-questions-or-complaints/)。

しかし、SNSの運用が上手く行っているブランドばかりではありません。企業のフェイスブックページの45%は、メッセージに応答するのに5日以上かかっており(https://spectrm.io/insights/whitepapers/facebook-messenger-performance-report/)、顧客の49%はソーシャルメディアで苦情を行っても返事がなかったと応えているのです(https://research.wpcarey.asu.edu/services-leadership/research/research-initiatives/customer-rage/)。

本稿では、アメリカを中心に、SNSと連携可能なカスタマーサービスプラットフォームを紹介するとともに、SNS上でのカスタマーサービスを運用する上で企業が気をつけておきたいことについて提案します。日本においてはSNSを利用したカスタマーサービスはまだ広く普及している状況ではありませんが、米国では企業への問合せ窓口としてのSNSへの期待が高まっています。上手く運用することで顧客からのブランドイメージを向上させ、売上の貢献も期待できるのです。また、ボットによる自動対応など従来はなかったツールも生まれており、カスタマーサービスの業務軽減というメリットもあります。

海外で事業を展開することを検討しているビジネス関係者の方は、ぜひSNSを利用したカスタマーサービスについ研究し、導入を積極的に検討することをお勧めします。多言語対応のツールなどを利用すれば、海外展開の間口を広げる助けにもなります。また、日本国内でチャットボットなどのツール開発を行っている事業者の方には、海外で話題のソリューションサービスを参考にして、海外進出のヒントにしていただけますと幸いです。

2.SNSと連携可能なカスタマーサービスプラットフォームの紹介

2−1 Zendesk
https://www.zendesk.com/

Zendeskは 2007年にデンマークで創業され、現在は米国カリフォルニア州サンフランシスコに本社拠点をおくソフトウェア開発会社です。カスタマーサービス及びサービス管理を効率的に行えるシステム・ソフトウェアを開発・提供しており、全世界で20万社を超える企業での導入実績があります。日本へは2013年に上陸しており、クラウド型カスタマーサービスツールでは、草分け的存在です。

Zendeskの特徴は、各問合せに「チケット」を発行し、進捗状況を適切に管理できる機能です。このチケット化によって、メール・チャット・ソーシャルメディアなどのさまざまなチャネルからの問い合わせを一元管理可能することが可能となっています。

2−2 Freshdesk
https://freshdesk.com/

Freshdeskは2010年にインドで創業され、現在は米国カリフォルニア州サンフランシスコに本社拠点をおくソフトウェア開発会社で、問い合わせ管理システムを展開しています。世界で15万社超の導入実績を誇り、電話やメール、チャットなど様々なチャネルからの問い合わせを一元管理することが可能です。Zendesk同様、各案件をチケットという概念で管理し、自動化や合理化を実現できる仕組みが特徴的です。

2−3 Automat
https://www.helpsystems.com/product-lines/automate

Helpsystems社は1982年に米国ミネソタ州で創業されたITソフトウェア会社で、世界最大の独立系IBMiソフトウェアベンダーです。このHelpsystems社が開発するロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)「Automat」は、会話型人工知能を使用して、ソーシャルダイレクトメッセージング用のインテリジェントボットを作成します。Automatのボットは顧客からの自由形式のテキストを理解し、必要に応じて人間のオペレーターに会話を引き継ぐことができます。

2−4 ClickDesk
https://www.clickdesk.com/

ClickDeskは2011年創業の自己資金で運営されている非上場企業です。ClickDeskではFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアプラットフォームと統合できるライブチャットアプリを提供しています。プライベートインターフェイスを使用して、テキストだけでなく音声やビデオを介して顧客とやり取りできることが特徴です。
ClickDeskは120か国以上の185,000以上のWebサイトへの導入実績を持っており、カスタマーサービスの課題をリアルタイムで解決できます。

2−5 Reply.ai
https://www.reply.ai/

2015年に米国ニューヨークで創業し、 2020年5月にオムニチャネル型SaaSCRMプラットフォームを展開するKustomer社(https://www.kustomer.com/)から買収されたReply.aiは法人向けにカスタマーとやりとりするためのチャットボットの制作と運用を提供しています。会話型人工知能を使用して、複数の言語で顧客とコミュニケーションを取ることが可能です。

ボットだけでは顧客からの問い合わせに対応できない場合、同じチャットのスレッド内で人間のオペレーターに会話を引き継ぐことができます。それまでのやり取りを確認できるので、オペレーターがスムーズに対応することができるのが長所です。カスタマーの課題が解決したらオペレーターは再度スレッドから抜け、チャットボットの機能へと戻ります。

3.カスタマーサービスにSNSを使用する際のポイント

ここでは企業がSNSを介してカスタマーサービスを行う際に気をつけておきたいポイントを紹介します。

3−1 カスタマーサービス専用のアカウントを作成

ブランドの公式アカウントとは別に、カスタマーサービス用のSNSアカウントを作成することで、メインの公式アカウント内にカスタマーサービスの案件が埋もれることを防ぐことができます。ブランドのメインアカウントではPR目的の投稿をすることが一般的です。マーケティングとカスタマーサービスとのアカウントを分けることで、顧客からの問い合わせに迅速かつ詳細に対応できる可能性があります。

カスタマーサービス専用のアカウントを作成した際は、その情報を同ブランドのメインアカウントのプロフィール欄に掲載しましょう。こうすることで、顧客もサポート関連のリクエストについてどこに連絡すればよいかが把握できます。

3−2 自社ブランド関連の投稿をパトロール

SNSではブランドにタグ付けしてメッセージを送ることが多いですが、一部はで、タグ付けなしで、企業の商品やサービスに関する質問、不満を投稿している場合もあります。そこで、このような隠れたメッセージを見逃さないように、キーワードモニタリングを使用するのです。こうすれば、タグが付けられていない場合でも、自社ブランドに関連した投稿をモニターすることが可能になります。

3−3 ソーシャルメディアガイドラインを作成

SNSカスタマーサービスを運用する際には、ガイドラインを整備することを忘れてはなりません。このガイドラインでは会社の価値観とソーシャルマーケティングチームの方向性を考慮したものである必要があります。例えば、カジュアルでありながら親しみやすい声のトーンを使用するなどSNSカスタマーサービスチャネルのスタイルガイドを定めることで、ブランドにふさわしいSNSカスタマーサービスを運営できるようになります。

3−4 顧客の質問を予測して予防策を取る

顧客から似たような質問を何度も受け取った場合、同じような質問を持っている顧客が多くいることを意味します。そこで、顧客がカスタマーサービスに連絡しなくても自己解決できるような情報リソースをSNS上で提供すると良いでしょう。

具体的にはSNSに、注文のハウツービデオや類似商品比較などのコンテンツを投稿します。これらのリソースを提供することで、カスタマーサービスへの問い合わせ数を減らすことにつながり、業務の円滑化も期待できます。

3−5 カスタマーサービスのパーソナライゼーション

カスタマーサービスでは顧客の不満や苦情に対処する場所というわけではありません。カスタマーサービスには、顧客がブランドとのつながりを深め、製品の購入、使用、推奨をより快適に行えるようにするものなら何でも含めることができます。例えば、顧客の好意的なコメントに反応したり、商品の個別アドバイスを提供したりすることも有効です。

3−6 必ず返信

当然のことではありますが、SNS上の顧客からの問合せに応えることは、応答性の高いカスタマーサービスを運用していることの証明になります。

例えば商品に不良が生じて、顧客に返金対応をしたとします。その件で、再度顧客からSNS上でコメントを受けた時に、企業側としてはすでに払戻しはしたので問題は解決済みと感じるかもしれません。しかし、顧客からのコメントに何も反応しなければ、企業側が商品の不良問題を真剣に受け止めておらず、顧客を大切にしていないというマイナスのイメージを持たれてしまうことでしょう。

顧客とのSNS上の会話は不特定多数から見ることができます。問合せの大小に関わらず、一つ一つの問い合わせに漏れなく応答することが大切で、そのような真摯な態度はカスタマーサービスへの信頼向上につながります。

3−7 迅速な対応

顧客の多くは、SNSカスタマーサービスにスピード感を求めています。そのため、顧客のメッセージには可能な限りすばやく応答する必要があるのです。もちろん24時間営業のカスタマーサービスをSNS上で運営する必要はありません。しかしながら、SNSカスタマーサービスの利用可能時間を明確にし、オフラインになるときに顧客に知らせることは重要です。

そして、すぐの反応ができない場合には、セルフヘルプソリューションへのリンクを提供したり、メールやウェブフォームなど、他の連絡先を提示したりすると良いでしょう。SNSのメッセージには、即時返信できない時間帯には定型文を返信する機能もありますので、上手く活用することが大切です。

3−8 チャットボットを利用

チャットボットを利用することで、24時間年中無休でカスタマーサービスを提供することも可能です。この仕組みは顧客からのよくある問合せに特に有効で、チャットボットで問合せを解決できれば、顧客のストレスも企業側の業務量も減らすことができます。

4.海外進出・海外展開への影響

従来SNSは個人によるものというイメージでしたが、現在では企業側が積極的に活用しています。日本でも大手企業はSNSアカウントを運用していることが多くなってきましたが、中小企業ではまだ一般的とまではいえず、また、一方向性の広報アカウント化していることもよくあります。

しかし、米国を始めとした海外では、SNSは顧客と積極的に交流するための場所となっていることが多く、顧客自身もSNSを企業に直接連絡できる便利な窓口と認識しています。このような中、SNSを介したカスタマーサービスの重要性はますます大きくなってきており、企業は顧客の期待に添えるようなSNS運用を模索しているのです。

日本から海外展開を考える場合には、SNS運用、そしてSNS上でのカスタマーサービスについて導入を検討すると良いでしょう。AIボットや多言語化ツールを上手く利用すれば、時差や言葉の壁を解決する強力な武器となり得ます。

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