アメリカ進出・展開を目指す日本企業をサポートするTandemSprint, Inc.

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医療・ヘルスケア・教育
2021.01.09

COVID-19で加速するアメリカのメンタルヘルス関連ビジネスと企業の取組み

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1.はじめに

近年、多くの雇用主が従業員のメンタルヘルスに取り組んでいます。また、2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックを受けて、メンタルヘルスに関する企業の取り組み需要は更に高まっています。COVID-19により、ウィルスへの感染や不確実な経済への不安、およびリモートワークによる社会孤立などが生じており、人々のメンタルヘルスは脅かされているのです。

このような背景もあり、メンタルヘルス関連のビジネスが好調となっています。ウェルネスビジネスに関するレポート「State Of Wellness H1’20 Report:Investment & Sector Trends To Watch」(https://www.cbinsights.com/research/report/wellness-trends-h1-2020/)によると、ウェルネスビジネス全体の資金調達額や取引額は前年に比較して2020年には減少しています。具体的な数値を見ると、全体の資金調達額は2019年上半期の61億ドルから2020年上半期には、46億ドルと前年比16%減少の推移となりました。しかし、メンタルヘルス関連の企業に限定すれば、2020年上半期の資金調達額は前年よりも好調となっているのです。

これは、COVID-19のパンデミックにより、スポーツジムやヘルスケアカウンセリングなどに直接出向くのではなく、ウェルネス製品やサービスを自宅で実施する傾向が加速したことが要因だと言えます。さらに、現在、ステイホームやソーシャルディスタンスの必要性が増しており、人と人との物理的な距離が離れていることで、精神的な人とのつながりを構築できるウェルネスソリューションや孤立感を相談できるメンタルヘルスソリューションがより大きな牽引力を発揮しているのです。

本稿では、アメリカを中心に、メンタルヘルス関連のサービスを展開するスタートアップ企業や従業員のメンタルヘルス向上に取り組む企業の取り組みについて紹介します。日本においては福利厚生としてのメンタルヘルスサービスはまだ一般的ではないかもしれませんが、米国では人材の確保や維持あるいは勤労意欲の向上など企業にとって大きな利益になるものとして、企業によるメンタルヘルス関連サポートが一般的に普及しています。また、従業員の労働環境を改善することは、ブランドイメージの向上にもつながります。短期的には費用がかかったとしても、長期的なメリットはそれを上回るといえるでしょう。

海外で事業を展開することを検討している企業の皆様には、企業としての従業員のメンタルヘルスの向上について積極的に検討することをおすすめします。海外の新しいソリューションや、海外企業の事例を参考にして、海外進出のヒントにしていただけますと幸いです。

2.メンタルヘルス関連のスタートアップ企業の紹介

2−1 ClarigentHealth
https://clarigenthealth.com/

米国、オハイオ州を拠点とする企業、ClarigentHealthでは、AIと機械学習に基づくプラットフォームを開発しており、メンタルヘルスの状態を早期に検出するツールを生み出しています。

Clarigent Healthの強みは特許取得済みのAIであり、このAIは音声を分析する独自の機械学習アルゴリズムとなっています。これは、10年以上の臨床研究に基づいて確立された潜在的な自殺リスクを示す音声バイオマーカーを識別するもので、臨床上の決定とワークフローの効率をサポートするよう設計されています。このプラットフォームは、医療関係者に患者の自殺の心配やその他の精神的健康問題に関する洞察を提供する臨床意思決定支援ツールとして機能することが期待されています。

2−2 7 Cups
https://www.7cups.com/

米国、カリフォルニア州を拠点とする企業、7 Cupsは、モバイルアプリ「7 Cups」を作成して、ライセンスを受けたメンタルヘルスカウンセラーとコーチによるオンデマンドのリアルタイムサポートサービスを提供しています。カウンセラーとコーチは、瞑想と呼吸法のテクニックなどのバーチャルセラピーなどによって相談者を支援します。相談は匿名で24時間年中無休で利用できます。

7 Cupsの特徴は、30万人を超える「訓練を受けたコーチ」と180人のライセンスを受けたメンタルヘルスカウンセラーからなるオンラインメンタルヘルスサポートネットワークです。相談者はコーチとは無料で話すことができ、プロのメンタルヘルスカウンセラーと話したい場合には150ドルを支払います。

2−3 Sentio Solutions
https://www.myfeel.co/

米国、カリフォルニア州を拠点とする企業、Sentio Solutionsは感情を感知するリストバンド型のデバイス「Feel」を開発しています。これは専用アプリと一緒に使うもので、不安障害やうつ病のある利用者にリアルタイムの監視と個別の介入を提供してくれます。Sentio Solutionsでは科学的に証明された行動療法(認知行動療法、マインドフルネス、ポジティブ心理学)と同社独自の感情認識技術の組み合わせた独自のアプローチを特色としています。

不安障害やうつ病などに苦しむ人々にとって、自分の感情を管理し、日常的に感情的な習慣やパターンの変化を追跡することは非常に重要です。Sentio Solutionsの「Feel」は、個人の感情や行動パターンの継続的な監視およびサポートツールとして機能します。

3.従業員のメンタルヘルス問題への取り組みを強化する企業の事例紹介

在宅勤務が急速に拡大し、新しい働き方へと大きな移行をしている現在、従業員がオフィスに出社する機会が少なくなることで、従業員が十分に休息を取れているのか、ストレスを溜めていないかなどを雇用主側が把握するのが難しくなっています。

企業が従業員のメンタルヘルスをいかに支援するか模索している中で、一部の企業は新しい取組みを始めたり、既存のメンタルヘルスプログラムを強化したりしています。ここでは、アメリカの大手企業のメンタルヘルスへの取組みを紹介します。

3−1 Starbucks

2020年4月、Starbucksは、従業員向けの遠隔メンタルヘルスケアサービスを提供するLyra Healthと提携し、従業員に対するメンタルヘルスの福利厚生を拡大することを発表しました。Lyraは企業の従業員と、セラピストやメンタルヘルスコーチなどをつなぐデジタルプラットフォームを提供しており、提携企業の従業員は、1対1のビデオセッションや、認知行動療法(CBT)をベースとしたチャットエクササイズ、進捗状況の定期的なモニタリング等を遠隔で受けることができます。

Starbucksの新しい福利厚生プログラムは米国のStarbucksの従業員とその家族を対象としたもので、Lyra Healthのプラットフォームを通じて、メンタルヘルスセラピストまたはコーチによるセラピーを年間20回まで無料で受けることができるようになります。また、Starbucksの従業員は、Lyra Healthが提供するセルフケアアプリへの無制限のアクセスを無料で受けることも可能です。

3−2 PwC US

PwCは世界157カ国742拠点に276,000人のスタッフを擁する世界最大級のコンサルティング企業です。同企業では「Be Well, Work Well」をスローガンに掲げ、COVID-19のパンデミック前からメンタルヘルスの維持に積極的に取り組んできました。そして、コンサルティング会社としても、多くの企業に対してメンタルヘルスへの取り組みに関する助言を行い、ALM Intelligence「Health and Wellness Benefits Consulting 2019」に採択されるなど、企業のメンタルヘルス戦略のリーダー的存在であると評価を受けています(https://www.alm.com/press_release/alm-intelligence-identifies-best-health-wellness-consultants/)。

COVID-19による従業員のメンタルヘルスへの影響への対策として、PwC US(PwC米国法人)では、従業員がストレスについてプロのコーチに相談でき、1対1あるいはグループでのウェルビーイングコーチングセッションを受けることができるプログラムを発表しました。また、PwC UK(PwC英国法人)は、COVID-19パンデミック時のストレスに従業員がどのように対処しているかを追跡するために、1,000人の従業員にGarminの活動量計を提供しています。

4.海外進出・海外展開への影響

COVID-19によって引き起こされた突然の在宅勤務などにより、不安やストレスを抱える人が増えています。このようなメンタルヘルスの問題は、従業員のパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります。実際、Total Brainが集計したメンタルヘルス指数の調査結果(米国版)によると、集中力の持続性は、パンデミック前の2020年2月のレベルと比較して2020年8月には31%低下したことが明らかになりました。また、計画性についても、同期間で15%減少しています(https://www.totalbrain.com/according-to-the-mental-health-index-u-s-workers-show-signs-of-improved-focus-yet-remain-significantly-at-risk-for-depression-and-general-anxiety/)。

アメリカの企業では、日本の企業よりもメンタルヘルス関連の取組みを積極的に行っています。海外進出を考えている日本企業は、現地の具体的な事例を参考にして、自社にもメンタルヘルスへの取組みの導入を検討すると良いでしょう。

もちろん、従業員のメンタルヘルスの問題に対処するための雇用主側の取組みには費用がかかります。しかしながら、メンタルヘルスは業績にも直結する深刻な問題であるだけでなく、従業員に働きやすい環境を提供することは雇用主の義務であるという風潮もあります。このことから、従業員のメンタルヘルスの問題に企業として取り組むことは、一定のコストを掛けてでも行うべき投資と考えることができるのです。特に、アメリカでは働く場所を選択する上での優先事項として、福利厚生や働きやすい環境を挙げる人が多く、企業内の労働環境整備は人材確保の上でも有効といえます。

また、COVID-19による経済的な打撃があった中でも、成長中のメンタルヘルスビジネスは今後も高い需要が継続するものと見込まれます。アメリカへの海外進出を目指す中で、現地のビジネストレンドとしても、この分野の成長には注目しておくと良いでしょう。

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