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生活・不動産・ファッション
2021.05.25

アメリカのHVAC(空調システム)市場の新たなトレンドとは?注目のHVAC関連スタートアップ企業をご紹介

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1.はじめに

HVACとは、Heating、 Ventilation、Air Conditioningの頭文字を取ったもので、暖房、換気、および空調の総称として、日本語では空調システムと呼ばれています。HVACは歴史のある技術、業界であり、新しいビジネストレンドとしてのイメージは少ないかもしれません。しかしながら、オフィスやその他の商業施設の建物において使用される総エネルギー使用量の3分の1以上を占めており、これは照明やインターネットなどの情報技術に使用されるエネルギー量の合計を上回るものです。つまり、HVACシステムは省エネルギー施策にとって、無視できない存在であり、近年ではグリーンビルディング業界においても、HVACをターゲットにした多くのスタートアップ企業が出現しています。

なお、HVACの分野では、画期的な新しいテクノロジーの誕生という側面は少ないことが特徴的です。なぜなら、冷暖房技術はすでに成熟した研究分野であり、全く新しい技術は簡単に生まれるものではないからです。そのため、HVACの分野では既存のシステムの効率を改善する観点から開発を進めている企業が多くなっています。その中で、近年のトレンドの中心となっているのが、ITを使用して、建物内の主要なシステムを統合するシステムといえるでしょう。例えば、HVACシステムを照明システムと通信させることで、それぞれが互いにエネルギー使用量を調整し、全体としてエネルギーを節約することができます。

ここでは、アメリカのHVAC市場について概説するとともに、注目のHVAC関連スタートアップ企業について紹介します。日本企業の方が海外進出・海外展開される際の、参考にしていただけますと幸いです。

2.HVAC市場の将来予測

専門性の高い産業調査レポートを発行しているグローバル市場調査会社である、Grand View Research社のレポートによると、世界のHVACシステムの市場規模は2020年に1,274億米ドルと評価されており、2021年から2028年にかけては5.9%の複合年間成長率(CAGR)で拡大すると予想されています(https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/hvac-equipment-industry)。このようなHVACシステム需要の高まりは、エネルギー効率が高く、リモートアクセスできる新しい技術的に高度な製品の出現によって主に牽引されているものです。CO2などの自然冷媒の使用と、エネルギー効率の高い製品を促進するための世界中のさまざまな政府による取り組みの増加が相まって、HVAC市場はますます盛り上がりを見せることでしょう。 さらに、コストと電力の浪費を削減するエネルギー効率の高いエアコンの採用に向けたパラダイムシフトにより、予測期間中のHVAC需要は現状レベルに維持されると予想されています。

消費者は空間に一層の快適さを求める傾向にあり、高性能なHVACシステムの需要はますます高まっています。 それを受けて、企業は顧客の快適さの要求に対応することはもちろん、競合他社との差別化をすすめるために追加機能を備えた製品を開発しています。 たとえば、IoT対応の冷暖房システムは、システムの機能と状態をリアルタイムで監視します。 このようなHVACシステムは、システム障害、異常な動作、およびメンテナンスサイクルについて顧客または管理者に警告し、早い段階で対処することで、修理コストを削減してくれるメリットもあるでしょう。

気候変動は、冷暖房設備の採用の増加に影響を与える主要因の1つです。 気候変動はこれまで以上に予測できないものとなっており、不安定な気候に対処できる高性能なHVACシステムを求める動きもあります。さらに、HVACユニットは、住宅および商業施設の美的価値も高めます。 企業は、見た目に美しい製品を提供することで、デザイン性にこだわりたい消費者に対応しています。

HVACユニットの需要は、快適さの必要性、地球温暖化の増加、可処分所得の増加などの要因により、商業、不動産、サービス産業など広い業界で成長していますが、その中でも特に 不動産業界は、HVACシステムの主要な消費者の1つです。 不動産業界におけるHVAC需要の成長は、オフィススペース、郊外および都市部の宿泊施設に対する需要の高まりや企業部門の成長によって後押しされています。

2020年以降の新型コロナウイルス(COVID-19)の蔓延は、HVACにも一時的な経済打撃をもたらしましたが、長期的には市場にプラスの刺激を与えると予想されてます。なぜなら、人々はこれまで以上に空気のクリーンさを意識するようになっており、衛生的な屋内環境を作り出すためのHVACシステムへの注目が高まっているのです。パンデミックはHVAC市場に新しい機会をもたらしたともいえるでしょう。

3.HVAC市場で注目の新規参入企業の紹介

ここではアメリカのHVAC分野のスタートアップ企業について紹介します。

3−1.地下熱利用のHVACシステム「Dandelion Energy」
(https://dandelionenergy.com/)

Dandelion Energyは、カリフォルニアに本社を置き、2017年に設立された企業です。Dandelion Energyでは、地中熱を利用した家庭向けHVACシステムを主力商品としています。従来の冷暖房設備を、家庭と地下の間に熱を移動させる強力なヒートポンプを用いた設備に置き換え、手頃な価格の地熱暖房および冷房設備を提供しています。

3−2.AIベースのHVACシステム「75F」
(https://www.75f.io/)

75Fは、ミネソタ州を拠点とする2012年に設立されたスタートアップ企業で、AIを活用したビル管理技術を提供しています。同社のビル管理技術では、外気を利用してフリークーリングを提供しており、天候や部屋の占有率などの要素を追跡して建物の居住者の行動を学習することにより、エネルギーコストを削減することが可能です。ワイヤレスセンサー、機器コントローラー、分析と予測的でプロアクティブなビルディングオートメーションを提供するクラウドベースのモバイルアプリとウェブアプリの形をとっています。

75Fのように、ユーティリティを最適化するAIは急成長しているビジネス分野です。類似企業として、BrainBox(https://www.brainboxai.com/) やAquicore(https://aquicore.com/)などがあり、これらの企業もAIのアルゴリズムを利用してHVACシステムをきめ細かく調整するシステムを展開しています。 他にも、空調設備からデータを記録し、クラウドで分析するセンサーを開発しているスタートアップのAugury(https://www.augury.com/)では、サービス会社と協力して、産業用HVACなどのシステムを診断および最適化しています。

3−3.最適化ソリューション「Optimum Energy」
(https://optimumenergyco.com/)

2005年にシアトルで設立されたOptimum Energyは、キャンパスや大規模施設向けのデータ駆動型の冷暖房システム最適化ソリューションを展開しています。 データサイエンスとエンジニアリングの専門知識を組み合わせることで、施設のサポート担当者の生産性を向上させながら、運用コストを最大50%削減するとのことです。

3−4.フラットパネル太陽熱集熱器「Chromasun」
(http://chromasun.com/)

2008年設立のカリフォルニア州サンノゼを拠点とするHVACスタートアップ「Chromasun」は、光学系を使用して最大25倍の太陽放射を集中させるフラットパネル太陽熱集熱器を開発しました。 同社の太陽熱集熱器からのエネルギーは、熱を使用して冷却を提供する確立された技術である吸収式冷凍機を駆動するために使用されます。同社の技術は、華氏350度を超える熱を発生させることで、2段吸収式冷凍機に電力を供給することができるのです。

4.海外進出・海外展開への影響

本稿では、アメリカのスタートアップ企業の実例とともに、HVAC市場のトレンドについて紹介しました。今後も需要増が見込まれるビジネス分野ではありますが、日本企業がHVAC事業で海外進出を考えている場合には、日本のシステムと海外のシステムとの違いに注意が必要です。

実は、欧米では、セントラルヒーティングと呼ばれる暖房・冷房・換気を一括で行う仕組みが主流となっています。日本でもビルや商業施設ではセントラルヒーティング方式が取り入れられていますが、家庭向けとしては、暖房、冷房、そして換気にはそれぞれ別個の機器を各部屋ごとに使用するのが主流でしょう。そのため、HVAC分野において、海外向けにHVACシステムを展開していた日本企業は大手企業ばかりでした。例えば、日立製作所や東芝、三菱電機、ダイキン工業などは、海外の現地大手企業と連携しながら、海外市場への販路を広げています。

大手企業との差別化を図りながら海外進出を検討している日本の中小企業においては、ビルオートメーションシステムの導入や、地球温暖化対策、スマートハウス化など、新しいトレンドを上手く捉え、新しいテクノロジーなどを用いた製品・サービスなどを現地に売り込むことで、海外市場への道を展開しやすくなるでしょう。

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